マシン・オブ・ザ・イヤー2018
快速SUVの第二章、豪華装備も自慢

2018新型トレーサー900GTの新旧比較インプレッション

スポーティなアドベンチャーモデルとして定評あるMT-09トレーサーが、’18年型で「トレーサー900」にリニューアル。外装の刷新、ロングスイングアーム採用のほか、上級版の「GT」を追加した。早速’17モデルと比較試乗だ。 ※ヤングマシン2018年8月号(6月24日発売)より

【高速道路】安定感と防風性を向上、より疲れにくい設定に

エンジンやメインフレームは同様ながら、新型のトレーサー900GTは、走りの印象が大きく異なっていた。――MT-09トレーサーは、「スポーツマルチツール」をテーマに、MT-09の派生モデルとして’15年にデビュー。登場3年目の’18で、ツーリング性能の向上を目的にマイチェンを敢行した。同時にMTシリーズとの差別化を進め、より「トレーサー」というキャラクターを際立たせるため名称も変更した。まず目立つのがライポジの変化だ。従来型は、過剰に幅広のアップハンドルで、オフ車的なワイルド感を醸し出していたが、新型はよりフラットで幅の狭いタイプに変更。その分、伸びていた腕に余裕ができ、手の位置が実に自然。フォームの自由度が高くなり、ネイキッドに近い雰囲気となった。

走り出すと、豊かな低中速トルクと鋭く吹け上がる3気筒の特性はそのままに、安定感が増している。旧型は前後のピッチングが落ち着きにくかったり、ハンドル入力に対して過敏に反応する面があった。一方、新型はコンパクトなハンドルとロング化+剛性を増したスイングアームにより、特に高速道路でツアラーらしい優れた直進安定性を発揮。サスの動きにしっとり感が加わり、上質さに磨きをかけた印象だ。横幅を広げ、上端をロールさせた新形状スクリーンは、特に腹や腰への防風効果が劇的に向上した。最も伸ばした状態だと、従来型は口元に走行風が当たるが、新型は額上に風が抜け、肩口への風も減った。片手で即調整できるのも便利だ。そして極めつけはGT専用装備のオートクルーズ。操作も簡単で、ロングランの強い味方となる。

【YAMAHA TRACER900GT ABS 2018年型国内仕様 価格:119万8800円 色:灰、黒、艶消し青】’18年型で名称を変更し、新形状のスクリーンとハンドルを採用。外装は全て新作で、デザインがより洗練された。さらに軸間距離を60mm延長している。新登場のGTは、フル調整式のFフォークのほか、オートクルーズやクイックシフターを与えた。写真のパニアケースはオプションだ。

【YAMAHA MT-09TRACER ABS 2017年型国内仕様 価格:106万9200円】MT-09をベースに、FIセッティング
の変更やアップハンドル&スクリーンなどで快適性をアップ。国内には’15年2月に登場した。

【ワインディング】FJRより気楽&機敏な快適ツアラーの誕生だ!

ワインディングでも従来型との違いは鮮明だった。元々トレーサーは、MT-09譲りのエンジンと車体を活かし、アドベンチャー系らしからぬ俊敏な運動性能が自慢。ただし挙動がクイックな上に、車体が前上がりでフロントの接地感がやや希薄な印象を受ける。だが新型は、前傾しやすくフラットなハンドルにより前輪に荷重をかけられるため、接地感が明確に伝わってくる。また、ブレーキングや旋回中の安定感が増しており、倒し込みに不安がない。コーナー出口で安心してスロットルを開けられ、リヤにトラクションをかけやすいのも新型だ。旧型では恐る恐る大柄なバイクをねじ伏せていたのに対し、新型は軸距が伸びたにも関わらず、車体が手の内にあるイメージ。従来型の軽快感はそのまま、より大胆に、スポーティな走りを楽しめるのだ。

都内〜箱根を往復した結果、やはり新型はラク。優れた防風性や直進性能、オートクルーズに加え、オートシフターも疲れにくさに貢献する。そして、シートがいい。旧型は1時間程度からお尻がジワジワしてくるが、新型はお尻が痛くなりにくい。ロングラン性能は、明らかに新型に軍配が上がる。従来の持ち味を活かしつつ、ツアラーとしての適性とスポーティさを高めた新型トレーサー。FJR1300ほど重厚&豪華絢爛ではなく、気軽でサイフにもやさしいツアラーが欲しい人に最適だろう。なおSTDは、シフターなどの装備を除き、乗り味はほぼGTと不変とのこと。とはいえ、GTは充実装備ながらSTDからわずか+8万6400円。まさにバーゲンプライスだ!

新型はスポーツ性はそのままに、旅の快適性を高めることを狙った。外装は、前後ライトユニット以外は全て新作。合わせ目がキレイにつながるよう構成が見直され、よりモダンなイメージに。エンジンやフレームなどの基本構成は従来型を踏襲するが、スイングアームはトレーサー用の新作。車重は従来型からSTDが4㎏増、GTは5㎏増となる。

ライディングポジションは上体がほぼ直立し、相変わらずラク。ハンドル幅は従来型と比べ約100mm減となり、絞りが少ないので腕に余裕がある。シート高は2段階調整式。上げた状態での新型は、旧型よりかかとが浮くものの、シッカリ両足が接地するので安心。

新型は下部の幅が広がり、上端が若干湾曲した形状に。調整も実に簡単。旧型はメーター下にある左右のノブを両手で操作する必要があったが、新型はメーター上のノブを片手でつまんで上下させるだけで調整可能。走行中でも簡単に操作できる。調整幅も+5mmとなった。

GTは新たにフルカラーTFT液晶を投入。YZF-R1と同様だが、燃料計を追加するなど表示内容は異なる。さらにメニュー画面でメンテ時期、背景色(白/黒)、表示項目などを変更可能。新型STDは、従来と同じモノクロの角型2連メーターだ。

【インタビュー】「リヤアームは様々な長さをテストし、最適な走りを探りました」

新型は、スポーツマルチツールという従来からの位置づけはほぼ変わりませんが、スイングアームの延長などでMTとの差別化を図りました。発売当初よりMT、トレーサー、XSR系と徐々にブランドイメージが固まってきたので、近頃はより各々のキャラクターを打ち出したモデルチェンジを行っています。

今回は、従来型で好評だった機敏なハンドリングをキープしたまま、より安定感や高速走行時の安心感を目指しました。通常はホイールベースを伸ばすとハンドリングが鈍くなりますが、30、60、90㎜と様々なリヤアーム長をテストし、最適な特性を探っています。ちなみに、私は長年FJRを担当していたので、GTの快適装備に関しては、その経験も活きています。走りに関しては、サスセッティングを含め、GTとSTDで違いはありませんが、GTはサスの調整項目が多く、簡単だったりなどの差はあります。GTの価格は私も驚いたほどで、非常にお買い得だと思いますよ。 ※トレーサー900GT プロジェクトリーダー ヤマハ発動機 吉田貴幸氏

トレーサー900GT(新)■全長2160 全幅850 全高1375 シート高850/865 軸距1500(各mm) 車重215㎏(装備)■水冷4スト並列3気筒845㏄ 最高出力116㎰/10000rpm 最大トルク8.9㎏-m/8500rpm 燃料タンク容量18ℓ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17

MT-09トレーサー(旧)■全長2160 全幅950 全高1345 シート高845/860 軸距1440(各mm) 車重210㎏(装備)■水冷4スト並列3気筒845㏄ 最高出力116㎰/10000rpm 最大トルク8.9㎏-m/8500rpm 燃料タンク容量18L■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17

文:沼尾宏明
撮影:飛澤慎

ヌマ王

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ヤングマシン編集部出身の敏腕フリーライター。特にバイクの社会&時事ネタに詳しく、20年以上にわたって特ダネを追い続けている。趣味はユーラシア大陸横断。

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