新たにV4エンジンとなって生まれ変わった新型パニガーレの試乗会がスペイン・バレンシアサーキットで開催された。試乗インプレッションは本誌2018年4月号に掲載しているが、ここでは気になるRC213V-Sとのライバル比較記事を抜粋してお届けしよう。
ホンダ2190万円vsドゥカティ328万円
強烈なパワーが生み出すパフォーマ ンスが印象的だったパニガーレV4。 こうなってくると気になるのは、そのタイムは本当はどれだけ速いのか。実際に数値で検証してみないと分からない。そこで手元に取り出したのは、過去に行ったひとつの走行データ。実は ’15 年の9月半ばに同じここバレンシアで私はホンダRC213V-Sの試乗を行っている。直接対決ではないうえ、季節をはじめ条件が異なっているので、これだけで結論を出すのは早計というものだが、ひとつの参考にはなるはずだ。なにせ、RC213V-SはモトGPワークスマシンのフルレプリカで2190万円の別格バイク。一方、パニガーレV4Sは328万円とけっして安いとは言えないが、それでも一般市販バイクの範疇だ。この2台を比べるというだけでも面白いぞと、パニガーレV4にも走行データをサンプリングするためにデジスパイスを装着してみたのだ。
モトGPレプリカは伊達じゃない!
はたして、パニガーレV4で走行中に感じていたのは、コーナリング中の安定感の問題。タイムを出そうとスロットルを開けると、どうしてもフロントが浮き気味になっていき、思った走りができない。このあたり、RC213V-Sはさすがというかピタッと安定していたなぁと思い出しながら旋回していた。 RC213V-Sはワークスマシンから譲り受けたシャーシだけに、これはもうどれだけお金をかけているかの差が、そのまま出てしまったという印象で「タイム差はハッキリ出てしまうだろうなぁ」と感じていたのだ。また、エンジンも同じV4でありながらパニガー レV4は超高回転までブン回すことによってパワーを絞り出しきっているという感じだったが、RC213V-Sはもしかしたらまだ余裕があるのではと思わせる面を持っていた。特に下の部分のパワー感についてもRC213V-Sの方がパニガーレV4よりも太かったんじゃなかったかなぁという気がしていた。パニガーレV4が高回転に振ったぶん、そこがRC213V-Sより薄くなったのではと感じたのだ。
何ぃ?! タイムが互角だとぉ?!
だが! ……だがしかしである。走行を終えて、 2台のデータを並べてみて私の印象は一変した。「パニガーレV4は予想以上に実はスゴイのではないか……」と。たしかにベストラップで1秒の差はある。でも、本当はもっと大きな差がついてしまったかなぁと内心では思っていたからだ。データを比べてみると決定的な違いはパワー差によるスト レートでの速度差。最終コーナーからの立ち上がり加速が段違いだ。パニガ ーレV4の最高速は277.61㎞/hと約4㎞/hほどの差がついている。だが、 コーナリングでは思ったよりもいい勝負をしている。良く見ると、やはりハンドリングの確実さからコーナーが重なるセクションではRC213V-Sの方がワンテンポ早く次の行動に移っていっている場面も見受けられる。その積み重ねが最終的なタイムに直結してはいるのだが、ひとつひとつのコーナーで見ればそこで一気に離されるような決定的な違いとはなっていない。マシンの価格差やパニガーレV4が非キット車であることを考えると、かなりいい線で走っていると言えるだろう。これでパニガーレV4の満足いくセッティングに落とし込めればいったい……。データを見るまでは、さすがに2190 万円のRC213V-Sには歯が立たなかったか……との思いが強かったが、いやいやどうして。ここまでの性能を持つマシンが店頭で328万円で買える時代になったのにはビックリだ。ちなみに、スタンダードのパニガーレV4は263万9000円なり。
計測結果
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