新「フロントフレーム」で軽量化

パニガーレV4は214ps・263万円〜で4月発売!

115日、ドゥカティがミラノショーに先駆けて現地で2018年モデルの発表会を行った。来年最大の目玉はエンジンをV4に刷新した新型パニガーレ。97日に実施されたV4エンジン「デスモセディチ・ストラダーレ」の発表に続いてオールニュー「パニガーレV4」の全容が明らかにされた。

追記、価格はSTDが263万9000円で4月発売

11月6日にドゥカティジャンが配信したリリースによると、4月にパニガーレV4/Sが導入予定。価格は263万9000円/328万円と発表された。カラーリングはレッドのみ。トリコロールカラーのパニガーレV4スペチアーレは導入時期未定。価格は455万円でマグネシウムホイール仕様が509万円だ。

マフラー変更でなんと226ps

パニガーレV4には、スタンダードとSSpeciale(スペチアーレ)の3種類が存在しており、いずれも1103cc90V4気筒エンジンを搭載。9月にエンジン単体をお披露目した時は最高出力210ps以上としていたが、正式に214ps/13000rpmと発表された。また、スペチアーレに付属品として同梱されているアクラポヴィッチレーシングエキゾーストを装着することで226psを発揮することも明らかにされた。尚、レース対応の1000cc仕様は、CEOが2019年モデルでの登場を公言している。

そして、エンジンがV2→V4になったことで車重が増したかというとわずか5.5㎏増(Sの新旧比較)の195㎏(Sとスペチアーレ)に抑えられている。それを実現したのは新開発のアルミ合金製「フロントフレーム」で、デスモセディチ・ストラダーレエンジンを剛性部材として活用するダイヤモンド型式の発展版と言えるものだ。国産車に見られるツインチューブフレームの前半部分だけという構成で、重量は単体で4㎏。シートレールは別体式でアルミ鋳造製となっている。

今回発表されたバリエーションは3種類。サスがショーワとザックス製でアルミ鋳造ホイールのSTD(上)。オーリンズスマートECシステム2.0とアルミ鍛造ホイールを採用したS(中)。Sをベースにトリコロールカラーの外装と、カーボンF/Rフェンダー、削り出しアッパーブラケット(シリアルナンバー付き)、アルカンターラ製シート、専用ハンドルグリップ、アジャスタブルフットペグ、カーボンヒールガード、カーボンスイングアームカバー、レース仕様の可倒式レバー、レース仕様のタンクキャップ、ブレーキレバーガードを装備したスペチアーレ(下)。スペチアーレにはその他、レーシングスクリーン、プレートホルダー取り外しキット、ミラーホールブラインドキャップ、ドゥカティデータアナライザー+GPS(DDA+GPS)、バイクカバー、アクラポビッチ製ドゥカティパフォーマンスフルエキゾーストが同梱されている。※日本仕様にフルエキは付属せず
ドゥカティの市販V4は、2007年の限定車=デスモセディチRR以来。そして今回のエンジン「デスモセディチストラダーレ」は、最新のデスモセディチGP(写真左)から寸法とジオメトリーを踏襲。横幅を抑え、コンパクトさを追求。Vバンク内のスペースに、ウォーターポンプや大型エアボックス(12.8ℓ)を収めるという。単体重量は64.9㎏と軽い。ケースは重力鋳造アルミ製、カバー類は全てマグネシウム製。1299パニガーレの1285㏄L型2気筒と比較しても、わずか2.2㎏の重量増に留めている。
パニガーレV4では、「フロントフレーム」が新たに開発された。これは従来のモノコックを進化させたもので、MotoGPで得られた技術をフィードバック。「フロントフレーム」にはねじれ剛性と横方向の剛性を別個に設定できるというメリットがあり、結果としてフレームに伝えられるストレスに対して的確に反応し、コーナリング中の路面からくるショックも巧みに吸収して、走行安定性を高めることが可能になるという。その結果、狙ったラインを正確にトレースできるようになり、コントロールが容易になるとともに、ライダーの身体的負担も軽減されると説明されている。

「S」と「スペチアーレ」には、オーリンズの電子制御サスペンションが採用されている。これは第2世代のオーリンズ製スマートEC 2.0に基づいて作動する新型で、6軸IMUセンサーも活用。また、この2車はマルケジーニのアルミ鍛造ホイールを採用する。
従来型をベースに機能性の追求に寄った感のある新型パニガーレV4。デザインを担当したのはドゥカティデザインセンターで、スタイリングの開発はレーシングマシンを製作する上で適用してきた3つのガイドライン「ミニマリズムデザイン」、「コンポーネントの融合」、「力感を伝える表面処理」に従っている。さらにエアロダイナミクスも重視しドゥカティコルセのエンジニアが風洞実験を繰り返したという。

スタイルはマッスル版パニガーレ

パニガーレV4のデザインは、先代の1299パニガーレのスタイリング要素を検討することからスタートし、マッスルなマシンへと進化させたという。コンセプトは「インテグレーション(一体化)」で、それを象徴するように、マグネシウム製のヘッドライトステーはスタイルの一部に取り込まれ、バックミラーのベースにも活用されている。フルLEDヘッドライトは1299よりも小型化され、エアインテーク上部を縁どるデイタイムランニングライトが装着された。

ヘッドライトの内側の隙間がエアインテークとなっており、ヘッドパイプ部を通過してストレートにエアボックスに導かれるのは従来型パニガーレと同様。テールカウルにもダクトがありこれも従来型パニガーレから始まったトレンドだ。タイヤは全車ピレリ製ディアブロスーパーコルサSPを履く。
眉毛のようなデイタイムランニングライトはパニガーレV4になって導入された新フィーチャー。テールランプはカウルの形に添って光るラインLEDを採用した。

カウルサイドのカウルが重なる部分は「デュアルレイヤーフェアリング」と表現され、張り出しを抑えたメインのカウルとエアアウトレットとして機能するもうひとつの層から構成されている。アッパーカウルから取り入れた走行風を内側の層にぶつけ、カウル横の速い空気との圧力差で空気の流れを良くしようとしていると思われる。また、アッパーカウルとタンク前半部をつなげたデザインとしているのもV4の特徴だ。

パニガーレV4のカウルの大きな特徴はレイヤー(重ね着)構造となっていること。従来の面構成から迫力が増すとともにエアマネージメントも進化している。
燃料タンクがシート下まで伸びて露出しているのもV4ならでは。メインフレームとシリンダーヘッドに締結された2本のリヤフレームが両サイドからタンクを抱え込んでいる構造だ。

オーリンズ電サスはVer.2.0に進化

サスはグレードによって2種類。STDは国産車でもお馴染みのショーワ製ビッグピストンフォーク(BPF)をフロントに装着。リヤはザックスとしている。Sとスペチアーレは、オーリンズの電子制御サスペンション「スマートECシステム2.0」を採用。2.0は、ブレーキ、旋回、加速のそれぞれの状況に対してサスペンションの介入レベルを任意に調整できるのがアドバンテージとされ、ラップタイム向上に貢献する。

STDはショーワの43mm径ビッグピストンフォーク、Sとスペチアーレはオーリンズの電制タイプでフロントのサス本体はNIX30となる。

ブレーキは、ブレンボ製M50キャリパーの進化版であるStylemaキャリパーを全車に採用。従来のM50よりもコンパクトで剛性を犠牲にすることなく左右それぞれで70g軽量となっている。削り出しの高剛性なボディから精密なコントロールや高いレスポンスが得られるの同時に、330mm径のWディスクで高い制動力も発揮する。また、コーナリングABS EVOシステムで車体をバンクさせた状態でもABSが作動する。ボッシュ製9.1MP制御ユニットを採用した進化型は最新の作動ロジックを反映、設定は3段階に調整可能だ。

ブレンボ製キャリパーにはそれぞれ4つの30mm径ピストンが内蔵され、330mm径ダブルディスクとともに高い制動力発揮。リヤは245mm径シングルディスク&2ポットキャリパーを採用する。さらに軽量のボッシュ製9.1 MP制御ユニットを採用した、コーナリング ABS EVOシステムでサポートされているのだ。

 

ついに4気筒エンジンで勝負!

「デスモセディチ・ストラダーレ」と命名されたユニットは、モトGPマシン=デスモセディチGPとの共同開発により随所にGPの技術が息づいている。90V4のレイアウトや、バルブ強制開閉機構のデスモドロミックはもちろん、ボア81㎜のシリンダー、70度位相クランク、セミドライサンプ。そして鋭い倒し込みやウイリーの抑制などを実現する逆回転クランクシャフトもGPマシン譲りだ。一方、排気量はGPマシンの1000㏄より大きい1103㏄に設定。公道で走りを楽しむために重要な中速域トルクを厚くし、低回転域のトルクとパワーを向上させるのが目的と言う。最高出力は214㎰、最大トルクは12.6m。馬力は、ドゥカティとしてはもとより、市販公道バイクで文句ナシのナンバー1だ。

「70°位相クランク」が生むビッグバン・トラクション。90°V4は、クランクピンの位相角度が180°または360°が一般的。ホンダのRC213V-Sも360°だ。一方、デスモセディチGPやストラダーレは70°を選択。左サイドの2気筒前側→後ろ側と短い間隔で点火され、同様に右側の2気筒も短い間隔で点火し、あたかも2気筒のような順序で爆発する。ドゥカティは、この独特な点火順序を「ツインパルス」と呼ぶ。クランク角で言えば、0°、90°、290°、380°の不等間隔のタイミングで爆発。これによって、コーナー脱出時にリヤタイヤが路面をつかむ「ビッグバン効果」を狙っている。走りの性能としては、360°クランクと大差はないものの、鼓動感やサウンドを一段と強化する効果がある。

この馬力を支えるのは、前述の技術に加え、14:1というレーサー並みの高圧縮比。さらに、ドゥカティ初の可変長ファンネルや、φ52㎜相当の大径楕円スロットルボディもハイパワーに貢献する。一方、ストロークは53.5㎜でモトGPマシンより長く、公道モデルに必要なトルクを重視。回転数を抑えめにすることで信頼性を高めている。それでも上限12000rpm程度の1000㏄直4勢を凌ぐ、1万4500rpmという超高回転域まで回すことが可能だ。

GP直系の逆回転クランクまで投入。ホイールの回転によって発生するジャイロ効果の一部を打ち消し、ハンドリングを向上させ、特にコーナー切り返しにおける俊敏性を高められるという。また、加速中に駆動トルクが路面に伝達されるとウィリーする原因となるが、逆回転クランクシャフトは反対方向に慣性連動トルクを発生し、フロント部を下げてウィリー効果を抑制し、加速性能を高めることができる。逆に減速時はリヤホイールがリフトアップするが、クランクシャフトも減速することで、リフトアップと逆方向の慣性トルクが生じるのだ。