2017年5月、2輪ではサスペンションメーカーとして有名なショーワが電子制御サスペンションの開発完了を宣言し、マーケット投入を予告。それから半年、ついにカワサキのZX-10Rに搭載される形で実現したのだ。電サスを搭載したニューモデルはNinjaZX-10R SEと名付けられ、11月7日にミラノショーで正式発表された。
ショーワと共同開発したKECS
ZX-10R SEに搭載された電子制御サスペンションはKECS=Kawasaki Electronic Control Suspension(カワサキ・エレクトロニック・コントロール・サスペンション)と名付けられた。ショーワと共同で開発され、技術の土台には「SHOWA EERA Balance Free Damping Force(ショーワ・イーラ・バランスフリー・ダンピングフォース」がある。元々、機械調整式のバランスフリー・フロントフォークはカワサキとショーワがSBKの実戦で培ってきたもの。それの減衰力発生部に電子制御油圧バルブを追加することで電サス化したのがイーラBFDFなので、製品化第一号がZX-10RのKECSとなるのは至極自然な流れなのだ。
KECSは既にある電サスと何が違うのか?!
カワサキの説明は「制御はソレノイドバルブを介して行われます。これにより、非常に迅速な反応時間(1ミリ秒)が得られます。これは、ステッピングモーターに依存するシステムやパイロットバルブを使用する2段階作動のスステムよりもはるかに迅速であり、スーパースポーツの機構に理想的です」とされる。さらに「フロントフォークとリヤショックの両方にストロークセンサーを内蔵しているため、リアルタイムのストロークスピードと圧縮情報が得られます。センサーは1ミリ秒ごとにKICS ECUに情報をフィードバックします。KECS ECUはソレノイドに指令を出して減衰力を調整します」とも書かれている。
要は、減衰力を調整する機械的なメカニズムが早いこと。そして、6軸姿勢角センサーなどのデータから演算して減衰力を調整する電サスと比較して、ストロークセンサーを内蔵しているKECSは早さと正確さにおいて有利だということだ。ショーワの開発陣は「他社に比べて早さは2倍なんてものではないだろう」と語っており、国産勢の追い上げが期待できる。そして、サーキットでは速いけどハードな足まわりで乗り心地は我慢なんていうのは、電子制御サスペンションがあれが解決できる課題。特に高性能を旨とするスーパースポーツでは避けられないテーマなので、今後もますます進化を期待したいところだ。