各部が量産車然とリファイン

“コンセプト”から“プロト”に進化したテネレ700

2016年のEICMAでヤマハがコンセプトモデルとして発表した「YAMAHA T7 Tenere – XTZ700Z」。このコンセプトやデザインはそのままに、世界中から寄せられたファンの反響を受けて、より生産車に近い形のプロトタイプとして開発されたのが「Tenere700 World Raid」だ。それはコンセプトモデルであるT7ほぼそのままと言っていい姿であり、2018年と目される発売に向けて、世界中の冒険のステージで実際にテストが行われるという。

●文:八百山ゆーすけ

パワーユニットにはMTー07と同じ689cc2気筒クロスプレーンエンジンを採用。この独特のパワーフィールが、ターマックやオフロードで力強い走りを生み出す一方で、その軽さとコンパクトさが俊敏な走りを実現する。また、あくまでもプロトタイプとして、ラリーレイドマシンとしての雰囲気を盛り上げるアクラポビッチサイレンサーを装備している。シャシーはMTー07とは異なり、舗装路、ダート両方に対応できるように設計が見直され、足回りには倒立式フロントフォークが奢られている。

クロスプレーンコンセプトの並列2気筒エンジンは、独特の粘りのあるパワーフィールを発揮。T7 Tenereではエンジン前側のエキゾーストパイプを覆っていたシェラウドが、プレスによる金属製のアンダーガードとなっている。
T7 Tenereにも付いていたアクラポビッチ製サイレンサーはTenere700 World Raidでもしっかり継承。ただし、量産車を見据えて排気ガス規制対応などのためか、エキゾーストがやや長くサイレンサーがより後ろに低くレイアウトされている。

T7 Tenereを特徴付けるデザインはほぼそのまま踏襲されていて、個性的なT7のヘッドライトも、4個のプロジェクターランプで再現。サイドパネル、フロントフェンダー、リアパネルにはカーボンを採用している。さらにヤマハのレーシングブルーとカーボン地を組み合わせたカラーリングが、ダカールラリーを走るワークスマシン然とした佇まいだ。その一方で、シート高はより多くのライダーが乗れるように、T7 Tenereより下げられているという。

カーボンの織り目をそのまま生かしたサイドカバー。フェンダーやリヤパネルにも使われいてレーシーな佇まいだが、このあたりは“プロトタイプ”ならではの仕上げか!?
個性的なT7 Tenereの4灯ヘッドライトのイメージをほぼそのまま再現したTenere700 World Raidのフロントマスク。スクリーン兼用のライトカバーの下端には、LEDのDRL(デイタイム・ランニング・ライト)が見える。また、ライト上部にはナビなどの機器を取り付けられるステーが設けられている。

デビューに向け、さらに熟成が進む!

“コンセプトモデル”のT7 Tenereから“プロトタイプ”のTenere700 World Raidと、その佇まいの進化はごくわずかに見て取れるが、細部を見ると量産車のプロトタイプ=試作車として、着実に開発が前進していることがわかる。コンセプトモデルを発表してからの1年間に、メーカーに届いたファンの熱意が原動力となったこの進化。ぜひこのTenere700 World Raidの姿そのままで正式なリリースへと運んで欲しいものだ。