
ヤマハは、クロスプレーンコンセプトの3気筒エンジンを搭載したスーパースポーツ「YZF-R9」を2025年10月30日に発売すると発表した。専用にセットアップされたKYB製前後サスペンションやブレンボ製モノブロックキャリパーを標準装備し、アッパーミドルクラス最強の座を狙う。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:ヤマハ
ヤマハの3気筒スーパースポーツがついに国内登場!
ヤマハは国内向けモデルのYZF-R9をついに正式発表。鈴鹿8耐などで展示して注目を集めてきたが、ファンが待たされた甲斐はある150万円切り(149万6000円)での登場だ。
MT-09系のクロスプレーンコンセプトの並列3気筒エンジンを搭載するYZF-R9は、開発コンセプトを“Re-DNAed Supersport”とされ、ミドルクラス最強のトラックパフォーマンスとエキサイトメント、スキルやステージを選ばない取っつきやすさを持つ、懐の深いモデルに仕上げられている。
なお、スーパースポーツ世界選手権(WorldSSP)では現在ランキング1位/2位をYZF-R9が占め、いずれかのライダーがチャンピオンを獲得するのはほぼ確実な状況だ。
主な特徴は以下の通り。
- 1)トルクフルで余力のあるパワーを発揮するCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジン
- 2)ヤマハ歴代スーパースポーツ最軽量の新型アルミダイキャストフレーム
- 3)足つき性と快適性を考慮したスポーティなライディングポジション
- 4)緻密な減衰コントロールが可能な前後KYB 製新型サスペンション
- 5)エアロダイナミクス効果の高いウイングレットを採用した外装
- 6)YRC(ヤマハライドコントロール)、クルーズコントロールシステム、YVSL(ヤマハバリアブルスピードリミッター)などの走行支援デバイスの搭載
- 7)ラップタイム計測や走行データの可視化が可能なアプリ「Y-TRAC Rev」などつながる機能
- 8)ブレンボ製ものブロックキャリパー「Stylema」、USB-C端子など多彩な機能と装備
- 9)”YZF-R”シリーズのアイコンを受け継ぎ進化させたデザイン
YZF-R9 フィーチャーマップ
新世代YZF-Rデザインの先鋒
外観デザインは最新世代のR-DNAで構成されており、先行登場した2025年型YZF-R1よりも攻めた意匠のウイングレットはフロントスポイラーと融合した新スタイル。水平基調のR-DNAデザインを新世代へと昇華している。
ツインアイのポジションライトと「M」字型エアダクトはそれぞれデザインが強調され、中央のモノアイLEDヘッドライトはR125~R7との共通性を持たされたものだ。
エンジンは最新MT-09と同じく888ccの並列3気筒で、出力スペックは発生回転数を含めて踏襲。これを搭載するフレームは軽量なアルミ製デルタボックススタイルを採用しており、製造はR9専用に開発された重力鋳造としながら、低負荷と高負荷の両方でスポーツパフォーマンスを発揮できるよう剛性が最適化された。
他のCP3搭載モデル(MT-09やXSR900 GPなど)と比べてフレーム剛性はねじり18%、縦37%、横16%アップした。フレーム単体の重量は9.7kgで、ヤマハのスーパースポーツモデルに使用されたフレームの中で最軽量。これにより、ネイキッドモデルのMT-09からわずか2kg増の車重195kgを実現している。
エアロダイナミクスは徹底的な風洞試験を通じて開発され、前面投影面積が大きいR9のほうがR6よりも空気抵抗が少ないほどだという。これはフロントフェアリングの設計とウイングレットの組み合わせで空気抵抗を低減しながらダウンフォースを発生するという相反する要素を両立させたもので、ライダーにはフロントエンドの安心感を提供する。
ウイングレットは直線で前輪の揚力を6~7%低減し、フロントエンドスポイラーとの組み合わせにより旋回中に前輪揚力を抑制する効果は約10%に達する。
スーパースポーツのハンドリング
サスペンションは、2025年モデルのYZF-R1と同時開発の新設計KYB製コンポーネントを採用。ストローク120mmのφ43mm倒立フロントフォークは左右にリバウンドダンピングアジャスターとコンプレッションダンピングアジャスターを振り分けたセパレートファンクションタイプで、コンプレッション側は高速/低速を個別に調整できる2WAYタイプ。
ベースバルブを追加した新レイアウトにより、ダンピングレスポンスを向上、接地感を高めるとともに安定性を向上した。また、カシマコーティングによってアウターチューブをダーク調のゴールド/ブロンズカラーとしているのも特徴だ。
リヤショックはフルアジャスタブルタイプで、こちらも内部の設計は極低速減衰力発生構造を持つ新レイアウトとされている。こちらもリザーバータンクにカシマコートが施される。
フロントブレーキにはブレンボ製Stylema(スタイルマ)モノブロックキャリパーを採用しステンレスメッシュホースとφ320mmダブルディスクを装備。マスターシリンダーもブレンボ製のラジアルタイプだ。
クリップオンハンドルを採用するライディングポジションは、シート高830mmながらライダーに過度な前傾を強いることはない。スリムに造られた燃料タンク容量は14Lとやや控えめだが、これはMT-09と同容量。R9では未発表だがMT-09のWMTCモード燃費は20.9km/Lであり、航続距離292kmを確保している。
このほか車体まわりでは、前後タイヤにブリヂストン製バトラックスハイパースポーツRS11を装着(北米向けはS22だった)し、高レベルのグリップ性能を確保した。
新しいユーザーインターフェースとクルコンなどの電制装備
R9のスイッチギアはボタン数を最小限に抑えた新設計のもの、グローブを装着した状態でも最適な操作性を確保しているという。これにより3速以上・40km/h以上で作動するクルーズコントロールや各種電子制御の走行中の設定もしやすいはずだ。
任意に設定できるスピードリミッターも装備するが、これは高速道路/市街地/郊外の道路などで使い分けることで、混乱なく(リスクなく)走行するためのもの。市街地と郊外で速度制限の差が大きい欧州などで特に役立つ装備だ。
6軸IMUを軸とした電子制御は、「スポーツ」「ストリート」「レイン」の3つの統合ライディングモードを備え、2つのカスタムモードと4つのトラックモードを任意に設定できる。これにより統合制御するのは、パワーデリバリー (PWR)、トラクションコントロール (TCS)、スライドコントロールシステム (SCS)、ブレーキコントロール (BC)、バックスリップレギュレーター (BSR)、エンジンブレーキマネジメント (EBM)、前輪リフトコントロール (LIF) など。このほかローンチコントロールシステムも備え、サーキットで後輪ABSをオフにすることもできるという。
クイックシフターは加速時と減速時のいずれでもシフトアップ/ダウンが可能な第3世代だ。
メーターはフルカラー5インチTFTで、表示テーマは4種類。トラックモードではラップライマーも表示可能だ。またスマートフォン接続機能を備えており、ヤマハライドコントロール(YRC)はアプリを使用することで最大40種類のモード設定を保存できるというから驚きだ。
ガーミンのストリートクロスアプリを用いれば、統合されたフルナビゲーションシステムも利用可能。このほかにも電話やテキストメッセージ、天気予報など様々な情報をディスプレイに表示可能だという。
さらに、Y-TRACアプリを使えばGPSデータと連動してライディングデータを記録および解析することが可能。ラップとセクターのタイプだけでなく、バンク角やエンジン回転数、ギヤ位置、速度、スロットル位置、電子制御の介入レベルなどを記録できる。
YAMAHA YZF-R9[2025 model]
| 車名 | YZF-RR9 |
| 認定型式/原動機打刻型式 | 8BL-RNA3J/N722E |
| 全長×全幅×全高 | 2070×705×1180mm |
| 軸距 | 1420mm |
| 最低地上高 | 140mm |
| シート高 | 830mm |
| キャスター/トレール | 22°35′/94mm |
| 装備重量 | 195kg |
| エンジン型式 | 水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ |
| 総排気量 | 888cc |
| 内径×行程 | 78.0×62.0mm |
| 圧縮比 | 11.5:1 |
| 最高出力 | 120ps/10000rpm |
| 最大トルク | 9.5kg-m/7000rpm |
| 変速機 | 常時噛合式6段リターン |
| 燃料タンク容量 | 14L |
| タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
| タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
| ブレーキ前 | φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
| ブレーキ後 | φ220mmディスク+1ポットキャリパー |
| 価格 | 149万6000円 |
| 車体色 | 青、黒、白 |
| 発売日 | 2025年10月30日 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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