どんなに時間が経とうが、その輝きを失わない物がある。モーターサイクルに対する確固たる信念と溢れる情熱でつくられたハーレーダビッドソンもその一つだ。アメリカの工業製品が高性能と洗練されたデザインで世界を席捲した1930〜1960年代に生産されたモデルは、旧き佳き時代の象徴として人々を魅了してやまない。大阪のセンバモータースに保管されている貴重なコレクションの一部を紹介しよう。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:藤村ノゾミ ●外部リンク:センバモータース
強さと裕福を象徴するクロームメッキの奥深き眩さ
しばしば“鐡馬”と称されるハーレー。昔からカスタムの手法として人気を博してきたのが、クロームメッキだ。光沢のある銀白色の皮膜で覆われるため、外観が美しいだけでなく、より丈夫で傷つきにくく、サビや変色もしにくい。きらびやかでゴージャスな仕上がりは、重厚な車体によく似合い、鉄との相性にも優れる。
いったい、いつ頃からクロームで車体を華やかに仕立げてきたのだろうか。1950年代のアメリカ車のフロントマスクは、クロームメッキをふんだんに使ったものが多く、同じ時期に流行したテールフィンともども高度成長期の裕福さと強く頼もしいアメリカを象徴していた。
ハーレーのカスタムでもデラックスであることがアピールされ、クロームが至るところに採り入れられてきた。センバモータースに現存するワンオーナー車=1957年式のFLHハイドラグライドは燃料タンク/コンソール/オイルタンク/プライマリーチェーンケースなど、当時に施されたクローム加工をそのままのコンディションで今も保ったままだ。
リヤサスペンションを備えるデュオグライドへ、翌年から切り替わるリジッドフレーム最終イヤーモデルで、生産台数はわずかに164台しかない。ヴィンテージなムードを色濃く残す歴史的な節目とも言えるモデルだが、フルオリジナルなクロームメッキの外装やカバー類に手を加えず、元の姿を残していることを考えれば、ひときわ希少価値が高い。
造形の凝ったエレガントなレザーサドルバッグであったり、堂々たるフェンダーチップ、エンブレムひとつをとって見ても70年近くが経つアンティークそのもので、時代の重みを感じてならない。
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