●文:根本健(ライドハイ編集部)
2ストメーカーだったスズキが4バルブで一気に追い抜く算段の400は、ツインの急先鋒に賭けていた
スズキは、1975年まで生産車すべてが2ストロークで、4ストバイクは皆無。GT380やGT750の3気筒マルチシリンダーも2ストエンジンだった。
そして1976年、DOHC4気筒のGS750(続いてGS1000も投入)、DOHCツインのGS400で、先行していたカワサキとホンダに肩を並べることに成功。
ここで次に一気に追い抜き先頭へ躍り出るための高性能化が何よりの命題だった。
その切り札が、2バルブ→4バルブ化とともに、このバルブ配置を利用したTSCCエンジン。
燃焼室に吸気バルブと排気バルブがそれぞれ対で向き合ったふたつのドームとすることで、スワール(渦流)を生じさせて、伝搬を含め燃焼効率をアップしようという技術だ。
これには各気筒の燃焼室の大きさも鍵を握っているので、スズキは750/1000ccクラスで開発したノウハウを、一番メジャーな400ではボアが小さくなる4気筒ではなく、4バルブの2気筒とすることが必須となる。
すでに1972年にホンダはCB350フォアでミドルクラスにも4気筒化をスタートさせていたが、スズキは各気筒の排気量が小さくパワフルではない4気筒はあり得ないと、ひたすら2気筒路線にこだわっていたのだ。
180度クランクでバランサー駆動、超高回転域までまっすぐ伸びていく傑作ツインの誕生
ボア67mm×ストローク56.5mmの並列ツインは、399ccで44ps/9.500rpm、3.7kgm/8.000rpm。並んだピストンが交互に往復する180度クランクなら、高回転域でアタマ打ちにならない特性からあえて採用。不等間隔爆発で振動を打ち消すバランサーを駆動する、とにかくブン回して乗ってほしいというなんとも過激なエンジン特性を引っ提げて、GSX400Eは1980年に登場した。
180度クランクの低回転域は得意ではないが、中速域ではパルシブなトラクションでコーナリングしやすいチューニングに徹していたのと、フレームは可能なかぎりコンパクトな設計として、軽快で正確なハンドリングを目指していた。
次いで1981年には、フロントのブレーキをダブルディスクとしたり、ミニカウルを装備したS対応も追加、しかしフラッグシップのGSX750E/GSX1000Eが、鼻息荒く乗り込んだわりにいまひとつ人気とならない状況と同様に、GSX400Eもいまひとつなまま。
しかし4気筒のビッグマシンのほうは、このタイミングであのKATANAが登場することとなり、4気筒のTSCCエンジンはこの大ヒットで大量生産されることとなったのだ……
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