
環境問題に対する世論の高まりから世界的に減少し、今では絶版車や旧車の専売特許のようになってしまったクロームメッキ。そんな貴重な表面処理の輝きを維持するにはメンテナンスが不可欠。メッキのプロであるNAKARAI が開発したKINGシリーズは「クリームメッキ保護」「メッキのサビ取り」「メッキの汚れ取り」に特化したケミカルで、多くの旧車好きに愛用されている。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:NAKARAI
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!!
鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロムの有害性に対する規制が厳しくなり、かつては数多く存在した再生メッキ工場も撤退を余儀なくされている。
クロームメッキには主としてマフラーやフェンダーなどのパーツに施される装飾メッキと、サスペンションのインナーチューブやダンパーロッドに施行される硬質メッキがある。
どちらもメッキ被膜となるクロム自体が錆びることはないが、メッキ表面には目に見えないきわめて小さな孔やクラックがあって、ここから浸入する水分によって被膜の奥でサビが成長してしまうという弱点がある。また、一度発生したサビは、クロム被膜の孔を通り抜ける際に被膜を破壊して点サビとなって現れるため、剥がれたメッキ被膜は二度と再生することはない。
そんなクロームメッキのサビを防ぐには、メッキ表面から水分を浸入させないことが肝心で、そのために開発されたのがメッキ保護剤の「メッキング」である。製造メーカーのNAKARAIはメッキ業者でありクロームメッキの特性を熟知している。
そこで単純に表面に保護被膜を作るだけでなく、微細な孔やクラックから内部に浸透して水分の通り道自体を塞ぐことで、新たなサビの発生を防止するメカニズムを開発。製品の成分としては特殊シリコーンとしか記載されていないが、孔を埋めながら被膜を形成するのがメッキングの最大の特徴である。
理想を言えばサビが発生する前にメッキングを塗布するのがベストだが、絶版車や旧車ではそうもいかない。そこで有効なのが「サビトリキング」や「ミガキング」である。クロームメッキの輝きを維持するため、3種類のKINGを使い分けたメンテナンスを行おう。
現行モデルのスクーターは実用性を重視したモデルが多いが、かつては遊び心溢れる車種もあった。1996年に発売されたホンダ ジョーカー50は、50ccとは思えないほどのロー&ロングデザインとアメリカンカスタムスタイルが特徴で、車体各部にゴージャスなクロームメッキ(樹脂メッキも含む)パーツが装着されていた。
今回使用したKINGシリーズ
【サビトリキング】クロームメッキに傷を付けにくい研磨剤と、赤サビに反応して溶解する成分を含んだサビトリキング。専用クロスが付属し、標準タイプの140gボトルと大容量260gボトルのデカキングの2サイズがある。●価格:2980円(右)/1980円(左)
【ミガキング】超微粒子コンパウンドであるミガキングは、NAKARAIが自社でメッキしたパーツの手入れに使用していたもので、クロームメッキの汚れやくすみの除去に最適。容量180mlで専用クロスが付属する。●価格:2780円
【メッキング】硬度3H〜4Hの特殊シリコーン被膜がサビを防ぎ、耐候性に優れクロームメッキならではの光沢もアップするメッキングは、汚れやサビが発生する前に施行するのがベスト。塗膜感が出ないよう薄く塗り広げる。●価格:5980円
【クロス単品販売】メッキングとミガキングで使用する史上最鏡クロス(右)は、繊維が細かく引きずり傷が付きにくく、汚れ拭きクロス(左)はサビトリキングで落ちた赤サビをからめ取る。各商品に付属するクロスの単品販売版だ。●価格:1000円(右)/500円(左)
デリケートなクロームメッキを優しくケア
ヘッドライトケースやハンドルパイプなどにメッキを多用するホンダジョーカー。リアブレーキのロックレバーもメッキ仕上げだが、屋外保管による経年劣化で点サビが発生している。
ボトルをよく振ってから、付属の汚れ拭きクロスにデカキングをたっぷり垂らす。表面が傷ついてメッキが曇るからと防錆潤滑剤をスプレーして不織布やワイヤーブラシで擦らないこと。
デカキングも研磨剤なので強く擦ると傷の原因になる。付属の汚れ拭きクロスでパーツ表面を優しく撫でると、取れたサビがクロス自体に取り込まれるため擦り傷が付きにくい。
錆びた部分をマッサージするように擦ると、やがてサビが溶けて落ちてくる。サビが取れたら新たなサビが発生しないよう、メッキングでコーティング被膜を作るのがベストな対応だ。
1960年代のアメ車のバンパーのようなデザインが印象的なリアガーニッシュ。クロームメッキがよく似合う。
樹脂素材であってもクロームメッキは腐食する。全体的にくすみポツポツとサビの萌芽が見え始めている場合はミガキングを使用する。
史上最鏡クロスを併用することで、メッキに傷がつくことなく汚れやくすみが落ちる。
特殊シリコーン樹脂のコーティング被膜によってメッキを保護するメッキングは、密着力をアップするため塗布面のゴミや油分やワックスなどを除去してから使用する。メッキ面に直接振りかけず、史上最鏡クロスに垂らす。
厚塗りすると成分中の光沢剤が虹ムラになるため、できるだけ薄く塗り広げる。5〜10分で初期硬化が始まるのでスピード勝負だ。
完全硬化するまで3〜5日かかる。とくに24時間以内は水かかからないように注意しよう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
構成要素のすべてに技術的な裏付けがあるSP2シリーズ そもそも山口県のバイクショップからスタートしたASウオタニ。SP2フルパワーキット/SP2パワーコイルキット/SP2ハイパワーコイルセットといった[…]
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
車種別専用パーツのラインナップも豊富なキジマ バイクメーカーが開発するニューモデルは、ビギナーからベテランに至る幅広いニーズに応えるべく仕様を決定しているが、それでもすべてのライダーの希望を叶えられる[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
バイク エンジン かからない原因を症状別に解説 さあ、ツーリングに出かけよう! 荷物をシートにくくりつけ、ヘルメットとグローブを装着してキーをシリンダーに差し、セルスイッチをプッシュ……え、エンジンが[…]
バイクのパンク修理を自分でやるときに知っておきたい基本知識 どんなに注意して走っていても、路面の釘やネジなどを拾ってパンクすることは少なくありません。とくにバイクは路肩を走行する場合も多く、路肩には車[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回は2025年4月に発売されたばかり、ヤマハの新型「YZF-R25[…]
バイクオイル交換とは? エンジンオイルの役割 バイクのオイル交換とは、エンジン内部の潤滑や冷却、清浄などを担うエンジンオイルを新しいものに入れ替える作業です。 エンジン(内燃機)内部は精密パーツが高速[…]
あったよね~ガンスパーク! 「ガンスパーク」ってありましたね~。覚えてるだけじゃなくて、実際に使ってみたという方も多いのではないでしょうか。1980年代後半~1990年代前半は、どのバイク雑誌を開いて[…]
最新の関連記事(オイル/ケミカル)
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回は2025年4月に発売されたばかり、ヤマハの新型「YZF-R25[…]
バイクオイル交換とは? エンジンオイルの役割 バイクのオイル交換とは、エンジン内部の潤滑や冷却、清浄などを担うエンジンオイルを新しいものに入れ替える作業です。 エンジン(内燃機)内部は精密パーツが高速[…]
ガソリン添加剤の役割 ガソリン添加剤といってもその用途はさまざまですが、大まかなカテゴリーとしては 洗浄効果 性能向上 の2つに分けられます。 洗浄効果について 現在主流になっているPEA(ポリエーテ[…]
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
収納しやすく持ち運びやすいカード型くもり止めスプレー これからの時期、急に雨に降られて走行する際にシールドが曇りやすくなる。雨の中でシールドが曇ると余計に視界がなくなり、安全運転を阻害する要因となりか[…]
人気記事ランキング(全体)
フリーズテック史上最高の冷感「氷撃α」シリーズ フリーズテックから登場した「氷撃α」長袖クルーネック冷感シャツは、シリーズ史上最高の冷感性能を誇る最新モデルです。生地表面に特殊な冷感プリント加工を施す[…]
ヘルメット装着で手軽に使えるバイク専用ドラレコ 「MiVue MP30Gps」は、バイクヘルメットに直接取り付けられるドライブレコーダー。これまでの車体取り付け型と違い、視界や操作性を損なわずに取り付[…]
ホンダCB1000F SE コンセプトの姿はこれだ! 7月11日、ホンダは鈴鹿8耐会場内のホンダブースにて、CB1000F SE コンセプトを世界初披露すると突如宣言した。 同リリースでは真横からのシ[…]
空冷四発の最終形態……CB-F最後の1年を飾る1100F[1983年] 多くのライダーが憧れる究極のフラッグシップであるCB1100Rの技術をフィードバックした、CB-Fシリーズの最終形態。 エンジン[…]
4つの冷却プレート&ペルチェ素子で最強の冷却力を実現 「ペルチェベスト」は、業界最先端の半導体冷却技術を採用し、前後4か所に冷却プレートを搭載した新発想の冷却ウェアです。小型冷蔵庫にも使われるペルチェ[…]
最新の投稿記事(全体)
“モンスターマシン”と恐れられるTZ750 今でもモンスターマシンと恐れられるTZ750は、市販ロードレーサーだったTZ350の並列2気筒エンジンを横につないで4気筒化したエンジンを搭載したレーサー。[…]
【TESTER:青木タカオ】片岡義男小説で魅了されて以来、W1SAを25年間にわたって2台乗り継ぐバイク業界きってのWフリーク。 世界市場へ挑戦した当時最高の運動性能が魅力 前後に光る太鼓ウインカー、[…]
市販車とは異なる巨摩 郡の魂 CB750F 漫画『バリバリ伝説』を知る者ならば、主人公・巨摩 郡(こま ぐん)の愛機といえば、即座にあのホンダCB750Fを思い浮かべることだろう。当時のバイクブーム真[…]
街乗りで乗り比べてみると、R15とR25はどこが違って感じるのか!? 両車とも軽二輪クラスで、“車検がなく、維持しやすくて高速OK!”というキャラクターは一緒なR15とR25。気になるのは155ccと[…]
日本が誇る雄大な自然を体感する一大ツーリングイベント 「日本三霊山ラリー」は、古来より日本の山岳信仰の対象とされてきた富士山、立山、白山という3つの頂を巡る壮大なツーリングイベントだ。石川、富山、静岡[…]
- 1
- 2