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絶版車とはいえ車重が軽い250ccクラスなら、ドライブチェーンはノンシールでも十分…。そんな昭和な思考は令和の時代には通用しない。フリクションロスが少なく伸びにくいシールチェーンは、排気量を問わず有効なのだ。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:江沼チヱン製作所
現在の高性能ドライブチェーンに交換決定。サビに関係なく旧ドライブチェーンは怖い
モトメカニック編集部の友人が個人売買で購入してきたヤマハXT250。走行距離が少なく保管状態も悪くなく、未再生原型車としての魅力に溢れている。過度なお化粧は控えたいが、駆動系の要である40年モノのドライブチェーンは交換が必要だ。
XTの純正チェーンはノンシールタイプで、経年劣化が心配なゴムシールは使っていない。この個体は保管状況が良かったおかげで、汚れや細かなサビはあるものの、プレートやローラーに目立つ大きなサビはない。
とはいえノンシールゆえ、コマ同士をつなぐピンとプッシュの隙間に水分が容赦なく浸入し、見えない部分で腐食が進んでいる可能性がある。こうしたチェーンは伸びの進行が早く、さらに突然切断するリスクもある。
交換するチェーンは何を選ぶべきかといえば、これは迷うことなくシールチェーン一択だ。「距離を乗るわけではないし、ノンシールより値段も高いし…」という後ろ向きな意見もあるが、チェーンメーカーが公表している寿命目安はノンシールの約5000kmに対して、シールチェーンは約1万5000〜3万kmと圧倒的に優位(参考・江沼チヱン製作所ホームページ)。
価格面ではシールチェーンの方がたしかに高価だが、ノンシールの5割増し程度で(520SRX2と520SRの比較)、寿命が3〜6倍であることを考慮すれば、じつはコストパフォーマンスはシールチェーンの方が圧倒的に高い。シルバーチェーンは絶版車の雰囲気を損なうことがなく、シンプルな見た目もおすすめだ。
今回使用した江沼チヱン製作所のシールチェーンには、フラッグシップのThreeDを筆頭にいくつものシリーズがある。チョイスしたSRXシリーズは、街乗りからツーリングまでオールマイティに使えるバランスの良さが特長のストリート用シールチェーン。そんなEKチェーンの交換を安全確実に行うために開発されたのが、EKチェーンツール・CRT50A改である。
左クランクケースカバーは、フライホイールカバーからスプロケットカバーまで一体のワンピースタイプ。チェンジペダルを先に外してからカバーボルトを取り外す。
オフロード走行が多いと泥団子が詰まったようになるスプロケット周辺は、驚くほど汚れが少ない。チェンジシャフト周辺の堆積物はチェーンルブと土のようだ。
純正チェーンはノンシールのクリップ留めなので簡単に取り外すことができる。真っ赤というほどではないが、つぶさに観察すると全面的に腐食が進んでいる。
クランクケースから突き出したチェンジシャフトには、金属製の薄いワッシャーと樹脂製のスペーサーが挿入されている。シャフトの損傷を防ぐ目的なのだろう。
組み付けるとこのようになる。ドライブチェーンの真下にあるチェンジシャフトを泥や跳ね石から守り、根元のオイルシールのリップを保護する効果もある。
オンロードツーリングに使いたいというオーナーの意向で、ドライブスプロケットは純正より1T多い17Tがチョイスされている。XAM製なので品質も確かだ。
ドライブシャフトには泥系の汚れが付着し、根元のオイルシールにも影響があるかもしれない。エンジン外側から抜けそうなので、実際に漏れ出したら交換しよう。
リヤサスのストロークに応じてチェーンに適正な張りを与えるテンショナー。ジュラコン製ブロックの摩耗はわずかで、まだ使用できる上に現在も純正部品が購入できる。
チェーンアジャスターはトレールモデルでは一般的なスネイルカム方式。チェーンプーラータイプと違って、左右の引き具合が明確に分かり、合わせやすいのが特長だ。
別機種用に用意してあった102リンクのチェーンを使用する。XTの純正は98リンクだが、ドライブスプロケットが1T多いので、1周させてからカット位置を決めた。
付属のジョイントにQXリングをセットしてグリスを塗布する。このグリスがピンとブッシュ間の唯一の潤滑剤になるので、しっかり塗っておくことが重要。
奥側から手前にジョイントを通して、QXリングをセットする。繰り返しになるが、付属のグリスは外側ではなく、できるだけピンとブッシュの隙間に押し込み利用しよう。
いかにも剛性の高いフレームにプレートホルダーを取り付け、継手プレートを圧入する。貫通したピンがホルダーに接触すれば圧入完了なので分かりやすい。
カット&リベットピンにパーツを組み替えて、ジョイントピンの頭を潰しながらかしめて開いていく。ピン先端を割らないよう、カシメすぎ防止ガイドを採用している。
右がカシメ前で左がカシメ後。ピン先端の丸穴を押しても広がる量はわずかで、これで抜けることはない。カシメすぎて先端が割れるとプレートが抜ける恐れがある。
スネイルカムの左右の引き量を合わせて、チェーンにテンションをかけてアクスルナットを締める。絶版車にとっても、シールチェーンは装着する価値のあるパーツだ。
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