![[絶版車DIYメンテ] 1981 ヤマハXT250:ドライブチェーンを最新のシールタイプに交換](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
絶版車とはいえ車重が軽い250ccクラスなら、ドライブチェーンはノンシールでも十分…。そんな昭和な思考は令和の時代には通用しない。フリクションロスが少なく伸びにくいシールチェーンは、排気量を問わず有効なのだ。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:江沼チヱン製作所
現在の高性能ドライブチェーンに交換決定。サビに関係なく旧ドライブチェーンは怖い
モトメカニック編集部の友人が個人売買で購入してきたヤマハXT250。走行距離が少なく保管状態も悪くなく、未再生原型車としての魅力に溢れている。過度なお化粧は控えたいが、駆動系の要である40年モノのドライブチェーンは交換が必要だ。
XTの純正チェーンはノンシールタイプで、経年劣化が心配なゴムシールは使っていない。この個体は保管状況が良かったおかげで、汚れや細かなサビはあるものの、プレートやローラーに目立つ大きなサビはない。
とはいえノンシールゆえ、コマ同士をつなぐピンとプッシュの隙間に水分が容赦なく浸入し、見えない部分で腐食が進んでいる可能性がある。こうしたチェーンは伸びの進行が早く、さらに突然切断するリスクもある。
交換するチェーンは何を選ぶべきかといえば、これは迷うことなくシールチェーン一択だ。「距離を乗るわけではないし、ノンシールより値段も高いし…」という後ろ向きな意見もあるが、チェーンメーカーが公表している寿命目安はノンシールの約5000kmに対して、シールチェーンは約1万5000〜3万kmと圧倒的に優位(参考・江沼チヱン製作所ホームページ)。
価格面ではシールチェーンの方がたしかに高価だが、ノンシールの5割増し程度で(520SRX2と520SRの比較)、寿命が3〜6倍であることを考慮すれば、じつはコストパフォーマンスはシールチェーンの方が圧倒的に高い。シルバーチェーンは絶版車の雰囲気を損なうことがなく、シンプルな見た目もおすすめだ。
今回使用した江沼チヱン製作所のシールチェーンには、フラッグシップのThreeDを筆頭にいくつものシリーズがある。チョイスしたSRXシリーズは、街乗りからツーリングまでオールマイティに使えるバランスの良さが特長のストリート用シールチェーン。そんなEKチェーンの交換を安全確実に行うために開発されたのが、EKチェーンツール・CRT50A改である。
左クランクケースカバーは、フライホイールカバーからスプロケットカバーまで一体のワンピースタイプ。チェンジペダルを先に外してからカバーボルトを取り外す。
オフロード走行が多いと泥団子が詰まったようになるスプロケット周辺は、驚くほど汚れが少ない。チェンジシャフト周辺の堆積物はチェーンルブと土のようだ。
純正チェーンはノンシールのクリップ留めなので簡単に取り外すことができる。真っ赤というほどではないが、つぶさに観察すると全面的に腐食が進んでいる。
クランクケースから突き出したチェンジシャフトには、金属製の薄いワッシャーと樹脂製のスペーサーが挿入されている。シャフトの損傷を防ぐ目的なのだろう。
組み付けるとこのようになる。ドライブチェーンの真下にあるチェンジシャフトを泥や跳ね石から守り、根元のオイルシールのリップを保護する効果もある。
オンロードツーリングに使いたいというオーナーの意向で、ドライブスプロケットは純正より1T多い17Tがチョイスされている。XAM製なので品質も確かだ。
ドライブシャフトには泥系の汚れが付着し、根元のオイルシールにも影響があるかもしれない。エンジン外側から抜けそうなので、実際に漏れ出したら交換しよう。
リヤサスのストロークに応じてチェーンに適正な張りを与えるテンショナー。ジュラコン製ブロックの摩耗はわずかで、まだ使用できる上に現在も純正部品が購入できる。
チェーンアジャスターはトレールモデルでは一般的なスネイルカム方式。チェーンプーラータイプと違って、左右の引き具合が明確に分かり、合わせやすいのが特長だ。
別機種用に用意してあった102リンクのチェーンを使用する。XTの純正は98リンクだが、ドライブスプロケットが1T多いので、1周させてからカット位置を決めた。
付属のジョイントにQXリングをセットしてグリスを塗布する。このグリスがピンとブッシュ間の唯一の潤滑剤になるので、しっかり塗っておくことが重要。
奥側から手前にジョイントを通して、QXリングをセットする。繰り返しになるが、付属のグリスは外側ではなく、できるだけピンとブッシュの隙間に押し込み利用しよう。
いかにも剛性の高いフレームにプレートホルダーを取り付け、継手プレートを圧入する。貫通したピンがホルダーに接触すれば圧入完了なので分かりやすい。
カット&リベットピンにパーツを組み替えて、ジョイントピンの頭を潰しながらかしめて開いていく。ピン先端を割らないよう、カシメすぎ防止ガイドを採用している。
右がカシメ前で左がカシメ後。ピン先端の丸穴を押しても広がる量はわずかで、これで抜けることはない。カシメすぎて先端が割れるとプレートが抜ける恐れがある。
スネイルカムの左右の引き量を合わせて、チェーンにテンションをかけてアクスルナットを締める。絶版車にとっても、シールチェーンは装着する価値のあるパーツだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
クニペックス製と瓜二つ!? アストロプロダクツの新製品「プライヤーレンチ」 ボルトやナットの2面を隙間なく掴める、平行に移動するジョー、グリップを握る力が増力される独自のジョイント構造、全長に対して著[…]
ドロ汚れだけではなく油汚れにも効果てきめん。分解前には周囲の汚れ落としが基本 台風被害による河川越水時にエンジン腰下まで水没したカワサキW1‐SA。その後、放置期間がしばらく続いたが、嫁ぎ先が決まった[…]
ガソリンタンク内部は処方前に現状把握から 今回登場するカワサキエリミネーター250は、モトメカニック編集部の友人が所有する車両だ。ガソリンがオーバーフローするため、その相談で編集部ガレージに持ち込まれ[…]
ユニバーサルソケット:手が届かないボルトやナットもナットグリップ機構でホールド スチールボールによるフリクションでボルトやナットをホールドするコーケン独自のナットグリップソケットと、ユニバーサルジョイ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
「消えないブレーキランプ」は他人ごとじゃない 街中をバイクで走っていたところ、前を行くスクーターのブレーキランプがなんか明るいな~と思ったら、どうやら点灯しっぱなしになってるぽかったのですよ。 毎度乗[…]
クニペックス製と瓜二つ!? アストロプロダクツの新製品「プライヤーレンチ」 ボルトやナットの2面を隙間なく掴める、平行に移動するジョー、グリップを握る力が増力される独自のジョイント構造、全長に対して著[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
ドロ汚れだけではなく油汚れにも効果てきめん。分解前には周囲の汚れ落としが基本 台風被害による河川越水時にエンジン腰下まで水没したカワサキW1‐SA。その後、放置期間がしばらく続いたが、嫁ぎ先が決まった[…]
最新の関連記事(江沼チヱン EK CHAIN)
精密鍛造加工によるLシリーズ専用プレートと穴あきピンによる軽量化の追求 2024年4月に販売を開始した「ThreeD LUXE(リュクス)」は、バイク用シールチェーンを世界に先駆けて実用化した江沼チヱ[…]
精度向上と新たなシール開発で、今なお進化を続けるチェーン技術 芸術家であり科学者でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチが15世紀に考案し、19世紀に現在とほぼ同様の形態で実用化されたローラーチェーンは、バ[…]
EKチェーン最高峰のThreeD(スリード) 江沼チヱン製作所が開発した「ThreeD(スリード)」は、チェーン専門メーカーとしての80年以上の歴史と技術を余すところなく注いだ次世代型チェーンとして、[…]
チェーングリスを定期的に吹き付けていれば、側面でも簡単にはサビないもの… バイクを押し歩きした時の“妙な抵抗感”には要注意だ。その理由は様々だが、実は、前後ブレーキの引きずりではなく、ドライブチェーン[…]
ZETA スペシャライズドハンドルバー 原付二種ツアラーとして利用するユーザーが多いCT125だからこそ、様々な装備の可能性を追求したいと開発されたのが、オフロードスペシャリストのダートフリークが開発[…]
人気記事ランキング(全体)
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
まるで自衛隊用?! アースカラーのボディにブラックアウトしたエンジン&フレームまわり 北米などで先行発表されていたカワサキのブランニューモデル「KLX230 DF」が国内導入されると正式発表された。車[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキのレトロモデル「W230」と「メグロS1」が2026年モデルに更新される。W230はカラー&グラフィックに変更を受け、さらに前後フェンダーをメッキ仕様[…]
最新の投稿記事(全体)
4気筒の「ニンジャZX-R」、2気筒「ニンジャ」計6モデルに10色を新設定 カワサキは欧州でフルカウルスポーツ「ニンジャ」ファミリーのうち、4気筒モデル「Ninja ZX-6R」「Ninja ZX-4[…]
1980~90年代を代表するイタリアンライダー、ルカ・カダローラのレプリカを復刻! ルカ・カダローラはイタリア出身のレーシングライダーで、1984年に世界GP125にデビュー。’86年にチャンピオンを[…]
ピカイチの快適性を誇り、タンデムユースも無理ナシ ようやく全日本JーGP3の開幕戦が近づいてきて(記事制作時)、最近はバイクに乗るトレーニングもスタート。 筋力が増えたことで、これまで苦手だった車種で[…]
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
メーカーメイドのカフェレーサー ’74年末から発売が始まったCB400フォア、通称ヨンフォアは、’60~’70年代に世界中でブームとなった、カフェレーサーを抜きにして語れないモデルである。カフェレーサ[…]
- 1
- 2