
1974年に発売されたホンダCB400FOURは、半世紀を経た今なお、中型絶版車の中でズバ抜けて人気が高い1台である。発売当初の408ccモデルとバイク免許制度の改定により登場した398cc仕様ではフレームの仕様に違いがあり、日本では398ccの人気が高い。そこで408cc→398ccフレームへの改装に目を付けたのが、代表自身がヨンフォア好きという昭盛工業製作所。金属加工のプロという利点を生かしたフレーム加工は、有名な専門店からもお墨付きを得たハイレベルな仕上がりが最大の魅力である。
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部) ●外部リンク:昭盛工業製作所
金属加工で培ったワンオフパーツ製作や溶接技術を生かし、マニアも納得の“サンキュッパフレーム”を製作
初期型/前期モノと呼ばれるモデルが尊重される多くの絶版車と異なり、後期型が好まれているのがホンダCB400FOUR。正しくは後期型というより、1976年に追加発売された398ccのCB400FOUR-I/IIとなるのだが、こちらの方が人気が高い。
初期の408ccと398ccでは、排気量だけでなくフレームも異なる。最大の違いはタンデムステップで、スイングアーム直付けの408ccに対して398ccはフレームにブラケットが付いており、“398フレーム”が優位というのが昨今のトレンド。
神奈川県綾瀬市と静岡県田方郡に工場を持つ昭盛工業製作所は、金属加工/溶接/パウダーコーティング/ガンコートなど工業系やオートモーティブ系の量産/ワンオフを手がけ、代表の大峯誠さんも40年近くヨンフォア好きを貫いてきた。
その技術とこだわりを活用して行うのが、408フレームの398化である。きっかけは社長自身の満足のための加工だったが、出来映えが評判となり全国の専門店から加工オーダーや部品注文が舞い込むように。今では定番メニューとなったという。ここではCB400FOURの実例を紹介するが、バイクに理解のある金属加工のプロを知っておくことで、カスタムやレストア時の参考になるはずだ。
タンデムブラケットがフレームに付く398ccフレーム
上が北米から逆輸入された408ccで、左が国内398cc。スイングアームピボット後方、タンデムステップブラケットの有無が明確に分かる。どちらが良いというわけではなく、今は国内仕様の398cc仕様のフレームの人気が高いのが実情。
北米帰りの408ccフレームのディティール
好きが高じて大ヒット中のヨンフォア用オリジナルパーツ
398ccフレーム化のために製造した昭盛工業製作所オリジナルパーツ。タンデムステップブラケットはもちろんだが、サイドスタンドブラケットやヘッドパイプのハンドルロックガセットなど細かなパーツも正確に再現。
408cc時代のアクスルシャフト端部はシンプルな丸エンドだが、398ccモデルは六角頭に変更されていた。当時の純正部品は当然販売終了となっているので、フランジ部分の形状も含めて六角頭シャフトを製作。素材はクロモリ製だ。
398ccの燃料コックは当時のモンキーと同形状で、チューニングエンジンでは流量が不安。だが408ccタンクはナット径が異なる。そこで398ccタンクにCB750F用コックが装着できるアダプターを製作。燃料ホースがレバーの後方に出るので見栄えもスッキリする。
金属加工/機能性塗装/パーツ製作でワンオフカスタムを応援!!
昭和40年に設立された昭盛工業製作所は、スレンレスやアルミニウムの超精密板金を得意とする老舗の加工工場。十代の頃からバイクや自動車いじりを実践してきた現社長の大峯誠さんは、5年ほど前からエンドユーザー向けに補修/塗装/ワンオフパーツ製作を開始。
CB400FOUR用フレームの加工は部品製作/溶接/パウダーコーティングまで自社の設備やスキルで完結できるのが最大の強みで、専門店からも高く評価されている。
静岡県田方郡函南町の函南ファクトリーはサンドブラスト/ウェットブラスト/ガンコート/パウダー/バレル研磨などを行う、カスタム&レストア御用達のワンオフ対応工場。バイタリティ溢れる大峯誠社長(後列中央)は全国のショップから頼りにされている。
マシニングセンター/NCフライス盤/NC旋盤/ワイヤー放電加工機などを使用したワンオフパーツ製造時は、函南ファクトリー近くの東和精機と共同で作業する。代表の千田さんは図面製作から製造までこなすエキスパート。
本社工場の大島さん(左)/馬場さん(右)は、量産/ワンオフ加工を問わず切断/溶接など金属加工の経験豊富なエキスパート。世界最小の公道用バイク「仔猿」のオーナーで、仔猿マニアの大峯社長とともにパーツ製作を担当。
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