
決死の思いでエンジン全バラ!! オーバーホールしようとエンジン分解したときには、レストア要素うんぬんではなく、できる限り“やっておきたいこと”がある。それは、キモとなる部品の点検/洗浄。それだけでも安心できる。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:iB 井上ボーリング 榮技研
乗りっぱなしのスーパーカブ。エンジンを開けてみると…
エンジン分解時に、部品の汚れが気になったこと、ありませんか!?
レーシングエンジンなどは、定期的に分解メンテするべきものなので、汚れが気になることはまずない。
一方、オイル交換もせずに乗りっ放しだったエンジンを分解すると、その内部コンディションの酷さに驚かされてしまうことが多い。特に、実用車として乗り込まれていたスーパーカブなどの場合は、そりゃもう凄いことになっている例が多い。
ここに紹介するクランクケースも、1970年代のスーパーカブ用だ。メンテナンスフリーでも走ってしまうのがスーパーカブシリーズの真骨頂!? かもしれないが、このエンジン内部汚れは、かなり凄い。
こんなエンジンをオーバーホールする際には、単純に油汚れを洗い流すだけではなく、汚れの下でクランクケースに染みついている黒油アカも、徹底的に分解洗浄&除去したいもの。単純に油っぽさを洗い流しただけで組み立てると、後にオイル交換しても、新しいエンジンオイルが染みついた黒油アカに影響されて、汚れやすくなってしまうことが多い。
また、内部部品に関しても、点検洗浄後に単純組み立てするのではなく、たとえばクランクシャフトなどは、振れ取り芯出し確認することで、後々気持ち良く組み立て作業に没頭できるというものだ。
“せっかく全バラ”したのだから、要所要所を確実に仕上げていきたいものだ。
クランクケースこそ徹底洗浄して“アカ落とし”
ひさしぶりに個人所有車として1970年代のスーパーカブを購入した、モトメカニック編集部のたぐち。フルレストアに取り組もうと考えエンジンを降ろし、さっそく分解全バラ。想像してはいたものの、その内部汚れたるや凄まじいもので、クランクケース内側の底部分の汚れは特別に酷かった。単にパーツクリーナーで上っ面だけ洗い流しても、汚れた油アカでクランクケースの内側は真っ黒け。
そんなままで組み立て復元しても、オイル交換のたびに“新しいエンジンオイルが汚れやすい環境”になってしまう。そんな汚れは徹底洗浄して、銀色のアルミ地肌が出るようにしたいもの。クランクケースが沈む容器を準備して、まずは通常の汚れ落としを灯油で行おう。手順を追って作業進行すれば、洗浄だけでもキレイになる。
灯油で洗浄したのちに、花咲かGマルチクリーナーをお湯で割って最適濃度にし、しばらく浸し洗いした。黒く染みついた油アカは、キレイさっぱり分解洗浄できる。
将来のエンジンチューニングに備え、クランクケースを内燃機加工
ホンダ横型エンジンチューニングは楽しい!! その世界を味わってしまうと、見た目はノーマルでも「羊の皮を…」な仕様にしたくなる。今回は、クランクケース加工を依頼した。
ボアアップに備えて、クランクケースボア孔の拡大加工を依頼した。年式によってはクランクケース孔が微妙に小さく、左右ケースのズレもある。シリンダーベースは面削加工でフラット化。
ベアリングにガタはなく、再利用可能なクランクシャフト。コンロッドのスモールエンドも摩耗過多ではなかった。洗浄後、クランクシャフトの芯出しと振れ取りの確認を依頼。これで安心!!
フルレストア仕上げなのでガラスビーズショット!! その後は…
今回の作業はフルレストア( に近い仕上げ)を目指しているため、腐食染みが目立ったクランクケースの外側は、アルミナ100 番で汚れ取りのブラスト後、200番のガラスビーズで梨地光沢仕上げにした。ブラストやショット後のエンジン部品は徹底的な洗浄とエアーブローが必要不可欠だが、ここでは小型超音波洗浄機を利用してクランクケースを洗浄した。
花咲かGマルチクリーナーをお湯で割って機器に入れ、クランクケースを沈めて洗浄開始。しっかりエアーブローしたつもりだったが、その程度ではメディアを完全除去することなどできない。15 分1セットで、クランクケースを裏返しながら超音波洗浄すると、4セットの1 時間で、驚きの……。
内燃機加工でシリンダーベースを面削すると、4/100ミリ追い込んだ時に、ガスケット面全体にツールが当たった。これで気持ち良く組み立てられる。超音波洗浄効果も素晴らしい!!
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
素材を痛めない万能クリーナーは、長期放置車&レストアの徹底洗車に最適 最近は、1970年代のカワサキZ系やホンダCB系に加えて、ホンダNSR250RやヤマハTZR250Rといったレーサーレプリカモデル[…]
まめなオイル管理が、良コンディションを維持できる秘訣 新型スーパーカブが発表されて以降、新型のシリーズモデルは、週末に限らず、毎日のように街中で見かけるようになった。軽く気ままに走ることができるモデル[…]
必要なのはキャブ本体とパーツリスト! 燃調キット開発プロセスとは 日本製自動車の性能は優秀で、日本国内で役目を終えた後も中古車として世界各地に輸出され、何十年という時を経ても現役で活躍していることが多[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
単気筒1ボディと4連キャブでは洗浄段取りに違いあり。 超音波洗浄が可能なら、完璧に近い仕上がりに!! いつかそのうち乗るつもり…という「いつか」が数ヶ月から数年になり、もうダメか…となるのが長期放置車[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
未塗装樹脂の白ボケ原因とツヤを復活させる方法 黒かったものが白っぽくなってくると古臭く見えてしまいます。…いいえ、「白髪」ではなくて「黒樹脂(未塗装樹脂)パーツ」のオハナシです。 新車の頃は真っ黒だっ[…]
点火トラブルって多いよね 昔から「良い混合気」「良い圧縮」「良い火花」の三大要素が調子の良いエンジンの条件として言われておりますが、それはそのまま調子が悪くなったバイクのチェック項目でもあります。その[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! カーシャンプーやワックスをはじめ、さまざまなカー用品を手がけてきた老舗ブランド「シュアラスター」。そのガソリン添加剤シリーズ「LOOP」のフラッグシップモデルが、[…]
高い耐久性、IP65防水性能がライダーのギアを守る ミルウォーキーツールが誇るツールボックス、PACKOUTシリーズの最大の特長は、その「高い耐久性・防水性・防塵性」を備えているという点。ガレージや作[…]
入れないとどうなる?フロントフォークのオイル はいどうも、みなさんこんにちは。本日は愛車DT50のフロントフォーク定期メンテナンスをやっております。 トップのキャップボルトを外してカラーを取り出して、[…]
人気記事ランキング(全体)
空冷エンジンのノウハウを結集【カワサキ GPz1100[ZX1100A]】 航空機技術から生まれたハーフカウルとレース譲りのユニトラックサスを装備。デジタルフューエルインジェクション効果を高めるために[…]
月内発売:SHOEI 「GT-Air 3 AGILITY」 優れた空力特性とインナーバイザーを兼ね備えたSHOEIのフルフェイスヘルメット「GT-Air3(ジーティーエア スリー)」に、新たなグラフィ[…]
背中が出にくい設計とストレッチ素材で快適性を確保 このインナーのポイントは、ハーフジップ/長めの着丈/背面ストレッチ素材」という3点だ。防風性能に特化した前面と、可動性を損なわない背面ストレッチにより[…]
「特殊ボルト」で困ったこと、ありませんか? 今回は「でかい六角穴のボルト」を特殊工具なしで外してみようというお話。 バイクを整備していると時々変なボルトに出会うことがあります。今回は古い原付オフロード[…]
点火トラブルって多いよね 昔から「良い混合気」「良い圧縮」「良い火花」の三大要素が調子の良いエンジンの条件として言われておりますが、それはそのまま調子が悪くなったバイクのチェック項目でもあります。その[…]
最新の投稿記事(全体)
関東のおすすめバイク神社一覧 ライダーのセーフティライドを支えるのは、交通ルールを遵守した適切なオートバイの乗り方と、愛車への深い理解、周囲の交通環境を確認して事故を未然に防ぐ観察眼などがあります。 […]
出力調整を極限まで最適化&他技術との連携で相乗効果 キャブやFIスロットルボディの吸気量を決めるバタフライの開閉をワイヤーで繋がったスロットルグリップで人間が直接調整していたのが旧来の方式。これに対し[…]
商品ではなく「こんなこと、できたらいいな」を描く 今回は見た瞬間にハートを鷲掴みにされてしまったモトクロス系のお気に入りバイクカタログをご覧になっていただきたい。 まずはアメリカホンダ製作によるモトク[…]
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
- 1
- 2















































