アドバンテージ創業以来30年にわたり、重要製品として根幹を担ってきたトラクションコントロールクラッチキット。1970〜90年代の絶版車に向けたキットは、レバーが重くないのに滑らないクラッチとして多くのユーザーから信頼を集めてきた。しかし、経年劣化などで絶版車のコンディションが徐々に悪化し、フリクションディスクとプレートの交換だけでは済まない車両が現れ、また純正部品の供給にも不安要素が増えつつある。これに対してアドバンテージでは、オリジナルパーツの開発を決断。これはまさに英断だ。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:アドバンテージ
オリジナルクラッチハブ&プレッシャープレート付きキットで、トラクションコントロールクラッチキットの魅力をさらにアップ
絶版車を維持する上で必要不可欠なクラッチ。フリクションディスクの摩擦材はかつてはコルクベースだったが、1980年代半ばから耐熱性と耐久性が向上したペーパー系へと進化した。フットワークパーツのプロフェショナルであるアドバンテージでは、世界的クラッチメーカーであるFCCの技術を活用した「アドバンテージFCCトラクションコントロールクラッチキット」を1990年代初頭に製品化。カワサキZ系やスズキカタナ系など、旧世代のクラッチに最新テクノロジーを投入することで高く評価されてきた。
その一方で、絶版車ユーザーを震撼させているのが純正部品の廃番問題だ。クラッチまわりで言えば、クラッチハブやプレッシャープレートといったパーツの廃番が深刻化している。それらが段付き摩耗すれば、フリクションディスクとプレートを新品にしても万全とは言えない。
アドバンテージでは以前から、カシマコートやアドバンテージクールコートを施工したクラッチハブとプレッシャープレートが付属したキットも製品化してきた。だがこの先、さらに加速するであろう純正部品廃番の流れに対応するため、これらパーツのオリジナル化を見据えて準備を開始。具体的な展開車種は市場のニーズを見ながら精査するとのことだが、その熱意は絶版車ユーザーにとって心強いものになるはずだ。
表面硬度と潤滑性アップで摩耗対策済み
ニンジャ系(GPZ750R/900R/GPX750R)用トラクションコントロールクラッチキットには、フリクションディスク/スチールプレート/スプリングの3点セットで構成されるType-Aと、3点+クラッチハブ/プレッシャープレートの5点セットとなるType-Gが用意されている。
初期モデルは登場から40年になるだけに、クラッチハブが段付き摩耗している車両も少なくない。これからも長く乗り続けていきたいオーナーにはType-Gがおすすめだ。
エンジンチューニングにも対応する容量アップ版
ゼファー750やGPZ750F など、Z650を発端とするザッパー系エンジン向けのクラッチキットも、3点セットのType-Aと5点セットのType-Gが用意されている。
どちらもフリクションディスク/スチールプレートは純正より1枚ずつ多く、クラッチレバーが重くならずにクラッチ容積がアップするのが特徴。これはペーパー系摩擦材でフリクションディスクが薄くなった恩恵だ。750ターボはゼファー系+1枚がスタンダード仕様となる。
スズキGSFシリーズの廃番パーツを9月からオリジナルパーツとして復刻
1980年代中盤の登場以降、20年にわたって製造されたスズキ油冷エンジン。だが1995年以降のGSF1200やバンディットシリーズ用のクラッチキット/クラッチハブ/プレッシャープレートはすべて廃番となっていた。
そこでアドバンテージは、3点セットのType-A/5点セットのType-G/GSF後期用ダイヤフラムスプリング仕様のType-E/ダイヤフラムスプリングをコイルスプリングに変更するType-Dを復刻し、2023年9月より発売開始。油冷オーナーにとって朗報であるとともに、他の絶版車オーナーにとっても明るいニュースだ。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
スパナプライヤー:刻みのないジョーが平行にスライド。スパナのように使えるプライヤー ストレートのスパナプライヤーは、細部の形状や仕上げは異なるものの、ヒンジの仕組みや特徴はクニペックスのプライヤーレン[…]
何よりも高耐摩耗性の実現 圧倒的な耐摩耗性を誇るのが、アルミめっきシリンダーの大きな特徴である。iB井上ボーリングが、アルミめっきスリーブを作ろうと考えた最大の理由は、同社の社是でもある「減らないシリ[…]
スイングアームにスプールを装着できれば、アドベンチャーやオフ車でもガレージREVOが使える スーパースポーツモデルやビッグバイクユーザーのみなさんからご好評をいただいているガレージREVOは、バイク置[…]
現在の高性能ドライブチェーンに交換決定。サビに関係なく旧ドライブチェーンは怖い モトメカニック編集部の友人が個人売買で購入してきたヤマハXT250。走行距離が少なく保管状態も悪くなく、未再生原型車とし[…]
KTCが中核ツールチェストのニューモデルをリリース KTCではこれまで、長きにわたってSKX0213がツールチェストの中核を担ってきたが、およそ20年ぶりにデザインと機能を一新したニューモデルを202[…]
最新の関連記事(アドバンテージ)
品質にこだわればMADE IN JAPAN一択。技術の裏付けがあるから信頼されるアドバンテージ 「エンジンの腰上を開けたらピストンリングを交換するのと同様に、フルオーバーホールする機会があれば、カムチ[…]
ダイレクトドライブレーシングディスク:過酷なレースの現場で開発 アドバンテージの製品はストリート向けだけではなく、この「ダイレクトドライブレーシングディスク」はモトGPのMoto2/3クラスや全日本モ[…]
削り出しプレッシャープレートを初採用。絶版車のクラッチ延命に積極果敢なアドバンテージ 絶版車ユーザーにとって純正部品の販売終了の多さは大きな問題だが、アドバンテージもまた同じ課題に直面している。 FC[…]
ライダーの右手とキャブレターが直結する、感動のスーパーローフリクションワイヤー スロットルワイヤーにとって重要なのは、開度が小さい領域をジワジワと開閉する際にリニアに追従するか否かである。青信号でスタ[…]
妥協することなく繰り返される設計変更で進化を続けるMADE IN JAPANホイール オリジナルホイール開発当初から、一貫して鍛造製法を採用し続けているアドバンテージ。溶かした素材を鋳型に流し込む鋳造[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
1959年から支持され続けている! 1)作業がとても手軽2)使用できる範囲が広い3)しっかりツヤが出る4)油汚れが場合によってはパーツクリーナーよりもよく落ちる 順に説明していこう。 1)作業が簡単 […]
ガソリン漏れトラブルは突然に これは先日実際に起こった出来事です。 ガソリンを携行缶からバイクのガソリンタンクに注入しようとしたら・・・ボタボタボタッ・・・。 「!!!!」 携行缶のノズルの根元からガ[…]
スパナプライヤー:刻みのないジョーが平行にスライド。スパナのように使えるプライヤー ストレートのスパナプライヤーは、細部の形状や仕上げは異なるものの、ヒンジの仕組みや特徴はクニペックスのプライヤーレン[…]
何よりも高耐摩耗性の実現 圧倒的な耐摩耗性を誇るのが、アルミめっきシリンダーの大きな特徴である。iB井上ボーリングが、アルミめっきスリーブを作ろうと考えた最大の理由は、同社の社是でもある「減らないシリ[…]
スイングアームにスプールを装着できれば、アドベンチャーやオフ車でもガレージREVOが使える スーパースポーツモデルやビッグバイクユーザーのみなさんからご好評をいただいているガレージREVOは、バイク置[…]
人気記事ランキング(全体)
振動、路面を蹴飛ばす感じ、エンジンで走らせる気持ちよさ バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。単純にライダーとエンジンの距離が近いことがエンジンの存在感を大きく感じさせるだけではなく、エンジ[…]
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
プロトは国内導入を前のめりに検討中! イタリアで1911年に誕生し、現在は中国QJグループの傘下にあるベネリは、Designed in Italyの個性的なモデルをラインナップすることで知られている。[…]
Screenshot 未塗装樹脂の白化 バイクのミラーや泥除け(フェンダー)、樹脂製リアボックスなどに使われている黒い未塗装樹脂部品。ここに使われている素材の多くは「ポリプロピレン」という軽くて丈夫な[…]
元々はブレーキ液の飛散を防ぐため フロントブレーキのマスターシリンダーのカップに巻いている、タオル地の“リストバンド”みたいなカバー。1980年代後半にレプリカモデルにフルードカップ別体式のマスターシ[…]
最新の投稿記事(全体)
デュアルLEDプロジェクターヘッドライトの鋭い眼光! ホンダは、昨秋のEICMAで発表した新型「CB750ホーネット」を、予告通り国内モデルとして正式発表した。 アシスト&スリッパークラッチを採用する[…]
「BMW R12nineT」ベースで、よりダイナミックに 新型BMW R12Sは、1970年代に数々の伝説を残した究極のレーシングマシン「R90S」を彷彿とさせるシルエットとカラーリングに加えて、BM[…]
改正道路法による道路空間の活用 神戸市は、瀬戸内海から六甲山地まで、約2~3kmほどの平地に繁華街や住宅地が密集しており、坂道も多い。そのため特に原付バイクの利用が根付いている。 そこで同市は放置駐車[…]
1959年から支持され続けている! 1)作業がとても手軽2)使用できる範囲が広い3)しっかりツヤが出る4)油汚れが場合によってはパーツクリーナーよりもよく落ちる 順に説明していこう。 1)作業が簡単 […]
ガソリン漏れトラブルは突然に これは先日実際に起こった出来事です。 ガソリンを携行缶からバイクのガソリンタンクに注入しようとしたら・・・ボタボタボタッ・・・。 「!!!!」 携行缶のノズルの根元からガ[…]
- 1
- 2