「足は着くのか……」身長165cmの僕にはそこが第一の壁
僕は軽井沢に到着すると、まずはバイクに駆け寄って跨ってみた。身長165cmの僕にとってはこの大きさは鬼門であり、そもそも足が着くのか? 乗れるのか? という不安があったからだ。
ちなみにこの日に用意してあったバイクは本国仕様。日本仕様はサスペンションが20mm短くなり、オプションでさらに20mm低くできるシートも用意。シート高のハードルはもう少し下げられそうだ。
本国仕様もなんとか乗ることができそうだが、足着き性はかなりキツく、停止する際はしっかりと腰をズラして片足を着く(両足は着かない)準備をしておかないと危なそうだ。ただ、スリムでそのポジションはとても自然である。
僕はオフロード初心者だが、乗るにはそれなりのキャリアが必要だと思う
三橋さんの先導で浅間レースウェイを目指す。これまでにツーリングやサーキットで慣れ親しんだLツインエンジンを、本格オフローダーで感じるのはとても新鮮。ドゥカティが変わろうとしている大きな時代の流れを実感した。
走り出すとその車体は思ったよりも大型で、それなりに重量も感じる。このパッケージはとても新鮮だが、果たして僕のキャリアで未舗装路を走れるのだろうか? と不安がよぎる。
この日の浅間レースウェイは、火山岩と火山灰に前日の雨も残りスリップしやすい状態。エンデューロモードにしてABSをカット。ベッペさんと三橋さんのレクチャーでまずは広場を使ってスタンディングや後輪ロックを体感する。
最初は少し「ズルッ」とくるだけで怖かったが、走るほどにその感覚がカラダに染みていく。少し慣れてきたところでダートのコースを走り出す。バイクが直立状態の時は気にならないが、旋回状態に入ると前後輪が遠く、車体の重さと大きさを感じる。これは僕がリラックスできていないことが大きいが、なかなか手強い。
林道って楽しそう! という気軽な気持ちでは乗らない方が無難
ビッグアドベンチャーは最近流行っているし、強そうでカッコいいから乗ってみたい。もちろん動機はそれでもいい。しかし、気軽に林道や未舗装路には入っていかない方が良いと思う。これはデザートXに限った話ではないが、1人ではどうしようもないシチュエーションに陥ることがあるからだ。
今回、僕はダートを走り出し、しばらくして極低速でエンスト。その瞬間に立ちゴケをした。しかし、頑張っても1人では起こせないのだ。乾燥重量202kgを足場の悪い場所で起こすのは難儀で、1人で林道ツーリングをしていたら……と思うとゾッとする。実際に転んだ場所から徒歩で舗装路まで行き、車を止めてバイクを起こすのを手伝ってもらった友人も知っている……。
その後、無事に走り出したが、やはり終始コントロールしている実感を得ることはできず、なかなかの挫折感を味わった。ただし、ドゥカティLツインエンジンはダートでもトラクションが良く、気持ちがいいのも事実。もう少し、バイクに慣れていけば新しい趣味の領域を見ることができそうな手応えはあった。
スタンディングしたり、積極的に身体の中で重心を動かすと前後サスペンションの動きの良さとブレーキのタッチの良さを実感。国産アドベンチャーはこのあたりの操作感が甘いが、デザートXはライダーの操作に対する反応がとても良い。スロットルやブレーキもしっかり使うと、不安でしかなかったダートが楽しくなっていく。
「常に転びそうで怖いです。どこを通ったらわからないです」と三橋さんに聞く。
「そういう時は一度止まっていけそうなルートを探すんですよ」と三橋さん。
「ラインはインベタの方が良いんですか?」
「インベタなんて決まりはありません。ラインは行ける場所をいくんです」
なるほど〜、と三橋さんの一言がデザートXを身近な存在にしていってくれる。
舗装路でのハンドリングは抜群。21インチを感じさせない高い運動性
デザートXには、ドゥカティが得意とするライディングモードを装備。オンロードは「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「ウエット」の4種類、オフロードは「ラリー」「エンデューロ」の2種類から選べる。
「ワインディングではスポーツやツーリングも試して」とベッペさん。いくつかのモードを試してみたが僕はスポーツがいちばん良かった。スロットルワークで車体のピッチングモーションを出せるため、車体姿勢をコントロールしやすいのだ。
ただ、キャリアによってはレスポンスが良すぎるように感じるはずだから、自分の好みのモードを探してもらえればマシンとの対話はより密になるはずだ。
ワインディングではオフロードで感じた車体の動きが信じられないほど軽快。車重も大きさも感じないし、これまでに乗った前輪21インチホイールのバイクの中でいちばん素直に曲がれると思わせるほど。
軽快さに身を委ね、慣れるほどにバイクに対する信頼感が上がっていく。こういったドゥカティらしい動きを知るほどに、オフロードで感じた重さや大きさは僕のスキル不足なんだろうな、と痛感。
走る場所や、楽しみ方はこれまでのドゥカティとは大きく異なるが、ドゥカティが変わろうとしているこの瞬間に立ち会えていることがなによりとても嬉しかった。
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