見るほどに走るほどに、437万8000円のクオリティに納得

ビモータ KB4 試乗インプレ【圧倒的な軽さが生み出す衝撃の連続。スポーツバイクの未来を暗示させる独創性に富むビモータワールド】

圧倒的な軽さが生み出す衝撃の連続!

様々なシチュエーションで面白いなぁと思ったのは、KB4はある意味とてもズボラに乗れてしまうところだ。軽さが生み出すメリットは色々なところに表れていて、その一つはサスペンションを柔らかくできることである。

しかも前後サスペンションは市販最高峰といえるオーリンズ製。このオーリンズを柔軟に使い、どこまでも路面追従性を向上させていることは、乗り心地の良さや乗りやすさに直結。その動きは1000ccとは思えないほどソフトだ。

しかもバイクの重心(ほぼエンジン)から離れた場所に極力軽いパーツを使うことで、実際の重量以上にハンドリングは軽快。特にバネ下やカウリングに軽いパーツを使うことで、サスペンションの減衰力も弱めることができ、それがハンドリングの軽さを倍増させているのである。

極低速でもサスペンションは本当によく動く。それが400ccのような乗りやすさと気軽さを生み出している。例えばモードを下げスロットルレスポンスを抑えると、まるで排気量の小さなバイクに乗っているような感覚になる。

そのフレンドリーな感覚はワインディングに入っても変わらず、どの1000ccのバイクよりも明らかに短い車体は、とても素直に旋回に移行していく。

直立付近からバンクさせていく際の手応えも190サイズのワイドタイヤを感じさせない異次元の軽さ。バンクさせていく過程でクセや不安がないため、簡単にバンクできる。ライダーは大きくアクションする必要もなく、KB4は小さなアクションで確実に反応し、曲がっていく。これも400cc感覚。狙ったラインをピタッとトレースしていく。

速度やバンク角を問わず、その軽いハンドリングをどこまでも楽しむ。ただ、比較的幅のある並列4気筒エンジンを搭載するKB4に鋭さはない。安定感を伴ったまま、どこまでも軽いからライダーに警戒感を抱かせない不思議なハンドリングなのである。

俄には信じがたい動きの連続に驚かされる。

決して大袈裟ではなく、その質量は1000ccのものではない。どこにも硬さと重さを感じさせないこの異次元ハンドリングを知ると、俄然ペースアップが楽しみになる。

ステップはアルミ削り出し。位置は結構高めで、身長165cmでもかなりコンパクト。実はステップの剛性感が大切だということを教えてくれるつくり。ステップワークも行いやすく、その際の車体のレスポンスも抜群に良い。シフターも装備する。

トップブリッジやアンダーブラケットもアルミ削り出し。こういったパーツの剛性と精度を高めることの積み重ねがビモータのハンドリングを生み出している。

フロントフォークはオーリンズ製NIX。減衰力の調整は、右側が伸び側、左側が圧縮側となっている。ブレーキまわりはブレンボで統一。

リヤサスはオーリンズ製のTTX。後ろに傾いて装着される珍しいレイアウト。リンクまわりもプレートでごまかさない、剛性の高いアルミ削り出しだ。リヤサスペンションはスイングアーム内で完結させ、フレーム設計の自由度を向上させている。

スロットル全開も許容してくれる超ショートホイールベース

少しアベレージを上げた際の車体の挙動も見てみたかったので、今回は袖ヶ浦フォレストレースウェイも走行してみた。ここでは軽さがさらに際立つ動きを披露。

ちなみKB4は右コーナーでフルバンクするとサイレンサーカバーを擦ってしまうとのこと。オーナーになる方は気をつけていただきたい。

サーキットでも驚かされるのはアベレージを上げても重さが出てこないことだった。エンジンから離れている部分を徹底して軽くした、どこまでもマスを集中させた車体づくりの恩恵がここにある。タイヤのエッジグリップを確認しながらコーナリングスピードを上げてみる。少しオーバースピードで進入しても安定のフルバンクを約束。

走るほどにリッタークラスであることを忘れてしまうが、コーナー立ち上がりでは力強い加速を披露。今回は2速&3速からスロットル全開で立ち上がり、190km/hくらいまで加速してみたが、KB4は狙ったラインで次のブレーキングポイントに到達。加速時の安定感もとても高い。

また120km/hほどでスロットル全開のままバンクするようなシーンでは、しっかりとしたフロントタイヤの安定感を確保。もっとも重さが出そうなこんなシーンでもハンドリングは軽い。

フレームはエンジンを剛体の一部として考慮したスチールトレリスで、アルミ削り出しパーツでそのフレームとエンジンとスイングアームを保持する独自の構造。ニンジャ1000SXのアルミツインスパーフレームと比較するとかなり華奢に見えるが、KB4の限界値は高い。ディメンションを追求したビモータのクラフトマンシップが光るハンドリングで、どこまでも操る楽しさを追求していることを体感させてくれる。

ディメンションと剛性バランスの緻密な配慮は、まさにビモータの真骨頂。それは量産車では不可能な領域だ。

走るほどにライダーを虜にしていく、ビモータマジックを久しぶりに堪能する。ただただ面白い。

超ショートホイールベースのため、タイヤが妙に大きく見える。大胆なビモータなではの感性が炸裂したデザインが新しい。

アルミ削り出しスイングアームの裏側。是非とも拡大してみていただきたい。イタリアで同じようなつくりのBB3のスイングアームのブランクを持たせてもらったことがあるが、片手では持ち上がらないほど重かったのを思い出す。

よく見ないと気がつかないが、こちらも圧巻のディテール。チェーン引きとリヤキャリパーのサポートが一体で削り出されている。そして、チェーン引きは地面に対して水平に動くように設計されている。

なんとシートは本革。クッション製はあまりなく硬質な印象。気品はあるが、雨が降ってきたらどうしよう……とドキドキする。

マフラーはニンジャ1000SXのノーマルがベース。カーボン製のエンドキャップやカバーで高級感とスポーツ性の高さをアピール。唯一、大きなカスタムの余地が残されているディテールかも。リプレイスしたらかなりの軽量化を実現できそうだ。

小さなアクションで正確に反応してくれるのは、超軽量で超ショートホイールベースだから。さらにサスペンションがソフトでどんなシーンでもピッチングモーションがわかりやすいからだ。そんなビモータのハンドリングに夢中になる。

〈次のページは…〉KB4はなぜニンジャ1000SXエンジンを採用したのだろう?