暑い夏、バイクのエンジンに暖機運転は必要or不要? を徹底解説!
暑い夏にバイクエンジンの暖機運転はいる? いらない?
暖機運転の「暖機」は書いて字のごとくエンジンを温めるということ。だったら、最初から気温が高い夏なら暖機運転はいらないんじゃないか・・・という話。現代の車やバイクは高性能にできてるから、元々暖機運転はしなくていいと言われてるし、余計なガソリンを使わないからエコですものね、なるほど。それも一理あるかもしれないね!
・・・って、そうじゃないんです。そうじゃないんですよ!! 一言で「暖機」といっても、その効能はいくつもあるのです。ここからは筆者の経験談や失敗談も含めて、暖機運転の必要性を訴えさせてください。
※ご注意 暖機運転の必要性については諸説あります。真実のほどは読者諸兄の判断に任せるとして、あくまで筆者の個人的な意見であることをご承知おきください。
暖機談義その①クリアランスについて
エンジンは熱を発します。いくら酷暑、いくら夏が「暑い」といっても、ガソリンが爆発するエンジンの「熱さ」には遠く及ばないのです。
金属は熱くなると熱膨張を起こします。どれぐらい膨張するかというと、たとえば温度が100度C上昇したときに1mの金属がどれぐらい膨張するかというと、一般的な鉄でも約1.2ミリ、アルミニウムともなれば、2.3ミリも長さが伸びるのです。
それを前提にエンジン部品のクリアランスが決定されているので、エンジンの回転数をあげるのは設計上の温度に達してからが、理想的なのは間違いありません。
暖機談義その②金属表面へのオイル油膜の密着
エンジンオイルの最大の仕事「潤滑」についてですが、金属の表面にオイルが付着して「油膜」を形成することではじめて潤滑します。
ここで例として、鉄製のフライパンを思い浮かべてください。冷めた状態でいきなり油を入れ炒め物をしても食材が焦げ付いてしまいますが、ちゃんと予熱してから油を入れることで、金属表面と油が密着して油膜が形成されて焦げ付きにくくなり、食材も滑るように炒めることができます。
チャーハンを作るときに焦げ付いてベタベタになるか、パラパラの絶品チャーハンが作れるかどうかは、この油膜が重要なわけです。エンジンにも同様のことが言えます。シリンダー内壁や金属部品が「適温」に達すると、部品の表面に均一な「油膜」が形成されます。
この油膜はフライパンの油膜と同様に、滑らかで均等な層を作りエンジンオイルが部品表面に均等に広がり、その油膜のおかげで「浮く」ことで金属同士が直接接触するのを防ぎます。結果として、エンジンの効率的な動作を助けるとともに、エンジン内部の損耗を防ぐ効果が期待できるわけです。
昔と違って今のエンジンは、素材の改良やコーティングやメッキなどで摩擦を減らしているとはいえ、オイルの油膜で潤滑するという原則がある以上、やはり温度管理は重要になってくるわけです。
その証拠に、最高レベルの素材と技術を惜しみなく使われているレーサーマシンでさえも、厳密な管理のもと時間をかけて暖機運転しています。エンジン冷えた状態でいきなり決勝スタート! なんて聞いたことがありません。
暖機運転をしないということは、油膜が不十分な状態で金属部品が高速回転したり擦れあったりするということ。油膜もできあがってないのにいきなりアクセルを吹かすなんてのは、エンジンの寿命を縮める行為以外なにものでもないのです。これは寒い冬だろうが暑い夏だろうが同じことなのです。
暖機談義その③オイルの循環について
話の順番が逆になりますが、じつは一番重要なのがこれ「オイルの循環」について。オイルはポンプの力でエンジン全体を血液のようにぐるぐる回りますが、エンジンが動いてない(ポンプが動いてない)時はエンジン下部(ドライサンプ方式の場合はオイルタンク)に溜まっています。
つまり、エンジン始動してから一定の時間は、オイルがない状態でエンジンが動いているのです。
毎日乗っているバイクのエンジンなら、まだ前日の油膜が多少は残っているからまだマシなのですが、しばらく乗ってなかったエンジンなどは、油膜が限りなくゼロに近い状態で動くハメになるのです。
想像してください。金属同士が高速で擦れあう様を・・・。
エンジンを分解してクランクを回転させると、ピストンの高速上下運動にも驚かされますが、シリンダーヘッド内部のタペットやカムシャフト、ロッカーアームの目にも止まらない動きに驚かされます。オイルの油膜がある状態でも過酷な環境だというのに、油膜なしで動かすのは、たとえ短時間であったとしても致命的です。
油膜不足が引き起こす惨劇
余談ですが、オイル不足で走るとこうなります。
十分なオイルが供給されてない状態では潤滑不足からくる摩擦熱の発生で、削れるどころか金属表面が焼けて、溶けて、ズタズタになってしまいました・・・。
オイルがエンジン全体に行き渡ってはじめてスタート可能な状態になれるので、エンジンを始動してから30秒・・・いや、せめて15秒は待ってやってほしいのです。
長い間動かしてないエンジンを始動するときは、点火しない(エンジンが始動しない)状態でクランクを回転させて、先にオイルを巡らせておくぐらいの配慮をしてやってもバチはあたりません。たったそれだけのことですが、金属表面のダメージは天と地ほどの差が出るはずです(筆者の経験談です)。
余談ですが・・・我が家のハイエース(100系)は20万km以上走ってますが、いまだにエンジンの異音は皆無で、整備工場の整備士の方がびっくりするほど快調なのです。やはりこれは暖機運転のお陰ということで、褒めていただきました。
まとめ:夏場も暖機運転推奨!
というわけでいかがでしたでしょうか? 「暖機運転推奨派」という立場から語らせていただきましたが、闇雲にエンジンかけっぱなしすればいいというわけでもありません。
技術が進歩した現代のエンジンはメッキ技術やコーティング技術によって、以前のような暖機運転は必要なくなっているのは事実です。また、無駄なアイドリングはガソリンの無駄遣いになるだけではなく、シリンダー内部に不要なカーボンを発生させる可能性があるなど、それはそれでエンジンにマイナスになる可能性もあります。
車やオートバイのエンジンの 年式や構造、素材や型式など、それぞれ性格や違いがあるので、エンジンにあった暖機運転のやり方を探してみてはいかがでしょうか。適切に行うことで、明らかにエンジンの寿命は変わってくるはずです。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
1分でわかる記事ダイジェスト 「腐ったガソリン」とは、どんな状態のこと? 時間経過とともに燃料の品質が低下して変質したガソリン。放置すると、ドロドロを通り越してガム状の固形物へと変化。軽度の劣化であれ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ボアアップしたら改造申請が必要? ボアアップはエンジンのシリンダーを拡大し、排気量を増やす改造。この改造により、原付バイクのパワーを上げることができるが、排気量が変わると[…]
モノタロウの便利さが止まらない あ、いきなりですが「モノタロウ」に限りません。通販カタログ全般に言えることだし、雑誌でもOK。だけど、筆者的にはいまのところやっぱりモノタロウが一番ちょうどいいのですよ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 「ゴミ認定」されたブレーキ一式は復活できるのか? ゴミ認定されたブレーキ一式は復活できるのか、超音波洗浄機の可能性を追及している。ターゲットは「ブレーキ」で、キャリパーも[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ボルトやネジは「大は小を兼ね」ない! エンジンのマウントボルトが、長すぎると見た目が悪い。ナットを締め付けるのも大変だが、それ以上にチェーンに当たってしまうので使えなく、[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
長期放置車両のキャブレターは、分解後の入念なクリーニングが不可欠 ストロークの長いサスペンションと扱いやすい空冷4ストローク単気筒エンジンを組み合わせたオフロードモデル・XLR250Rが誕生したのと同[…]
減らないシリンダーづくりを現実的にした技術「ICBM」 金属表面の硬度を表すひとつの基準にビッカース硬度がある。鋳鉄の硬度が45から、硬いスリーブ素材でも140程度のデータに対して、ICBM®シリンダ[…]
真夏のバイクはとくにエンジンに気を配りたい じっとしていても暑い日本の夏…。そんな時期はいっそのこと、バイクで走行風を浴びながら涼しい避暑地にでもツーリングに出かけたいですよね。 しかしながら暑すぎる[…]
設計から製造まで一貫体制で行うからこそ、臨機応変なバージョンアップや仕様変更が可能 数あるバイクスタンドの中でも、スタンドをかけてタイヤを浮かせた状態で前後左右に自由に移動できる機能を持つ製品は、ガレ[…]
点火系は強力な着火と安定性が何よりも信条。ASウオタニ製パワーアップで“セミトラ”にチャレンジ 30年以上もガレージに保管され、お不動様状態となっていた筆者のモトグッチ ルマンIII。その保管状況が良[…]
最新の関連記事(Q&A)
[A] 猛暑日はライダーへの負担がハンパなく大きい。自分で絶対守る何箇条かを決める覚悟が必須 避けるべきシチュエーション 真夏にバイクに乗る経験がまだ少ない方は、照りつける直射日光と照り返すアスファル[…]
1分でわかる記事ダイジェスト レーサーレプリカとは、1980〜1990年代にかけて盛り上がっていたバイクレース用マシンの走行性能やスタイルに基づき、作られたバイクのこと。スーパースポーツとの違いは歴史[…]
[A] より剛性を高め、スムーズな動きを追求るために開発された フロントのサスペンション機構、“フロントフォーク”には正立タイプと倒立タイプがある…と聞いて、何のこと? と思われた方は、まず写真を見て[…]
[A] 軽いことにデメリットはありません。ただ…好みのバイクに出会えるか? 正直に言って、ボクも大きくて重いバイクの扱いには腰が引けています。乗って走り出してしまえば気になりませんが、停車時の押したり[…]
[A] スポーツ性を追求するなら1本ショック。2本ショックはルックス重視 昔ながらのネイキッド系のバイクの多くが今も2本ショックユニット仕様ですが、これはオートバイらしい伝統的なルックスを重視している[…]
人気記事ランキング(全体)
メグロS1と共通イメージのタンクデザインへ 目黒製作所の創立100周年となる今年、最新モデルのメグロK3が初のデザインアップデートを受けた。昨秋のジャパンモビリティショー2023で参考出品されたメグロ[…]
50マニアは見逃がせない最後の至宝アイテム 2024年6月末の大手新聞紙報道でも騒ぎになった50ccバイク消滅のニュース。これは’25年11月から適用される排ガス規制への対応が困難であるためで、やはり[…]
最短2日間で修了可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除い[…]
2021年モデルの茶グラデ以来! カワサキ「Z900RS CAFE」の2025年モデルが登場。価格据え置きのままエボニー×キャンディライムグリーンのツートーンカラーに変更された。2018年モデルとして[…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
最新の投稿記事(全体)
FLHTKウルトラリミテッド:ウルトラこそ正統派フラッグシップ ブランドのアイコンにもなっている伝統のバットウイングフェアリングを備え、最高峰モデルとして長きにわたりラインナップの頂点に君臨し続けるウ[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
「コスプレとバイク」本編 今回のバイク:Vストローム250とNIKEN Vストローム250はスズキの250㏄クラスのアドベンチャースタイルのバイクです。ガソリンが17L入るタンクやフロントのスクリーン[…]
8耐ツアー開催は2回目。今回は快適性の向上を目指してアップデート モータースポーツ、中でもロードレースにはあまり興味がないというBMWユーザーは少なくないかもしれない。だが、日本のバイク乗りなら誰もが[…]
長期放置車両のキャブレターは、分解後の入念なクリーニングが不可欠 ストロークの長いサスペンションと扱いやすい空冷4ストローク単気筒エンジンを組み合わせたオフロードモデル・XLR250Rが誕生したのと同[…]