長期不動のヤマハSR400。キャブレターをオーバーホールで必ず確認したいパーツ「エアカットバルブ」

日本車を代表する4ストビッグシングルモデルであるヤマハSR400。1978年の初期型からから2021年のファイナルエディションまで43年に渡って不変のスタイルで多くのライダーに親しまれた名車は、2010年モデルでフューエルインジェクションを採用する以前に年式に応じて3タイプのキャブレターを採用してきました。キースターはピストンバルブのVM用からキャブ最終となったBSR用まで全年式に対応する3種類の燃調キットをリリースしており、さらに負圧キャブのBSTとBSR用にはエアカットバルブ付きセットもラインナップしています。
●BRAND POST提供:キースター
ノーマルで乗ってもカスタムしても楽しさを実感できるビッグシングル
スターターボタンを押せばいつでもすぐにエンジンが掛かるのが当然という中で、わざわざライダー自身がキックペダルを踏んで始動する儀式が必要なのがヤマハSR400の大きな特徴です。初代モデルが登場した1978年でさえ、若干時代がかった空冷4ストシングルモデルが、その後40年以上に渡ってほとんど変わらないスタイルで販売され続けたのは、このビッグシングルのポテンシャルの高さを物語る事実です。
バランス良く隙のない秀逸なデザインと各部の上質な仕上がりは、ノーマルのままで乗っても満足度が高く、ロッカーズ風やカフェレーサー風にカスタムしてもユーザーの好みを反映できる素材としての素質を兼ね備えたSR400は、キック始動の手間うんぬんとは別に大きな魅力に溢れています。
空冷シングルエンジンは4気筒車より手軽にマフラー交換を実践でき、いじり好きにとってはカスタムの定番メニューとなっています。ハイパーフォーマンスを求めるユーザーの中にはキャブレターをスペシャルタイプに交換する人もいるでしょうが、ノーマルキャブを活用するライダーにとって頼りになるのがキースターの燃調キットです。
バイクメーカーが市販車を開発する際、当然のことながらキャブレターやマフラーは純正部品で仕様を決定しています。キャブレターセッティングはエアークリーナーボックスの吸気口サイズからマフラーの先端まで、ノーマル状態でベストなパフォーマンスが出るようになっているわけです。
ここでエアークリーナーを撤去してパワーフィルターを装着したり、マフラーをキャブトンタイプに交換すれば、キャブレター内を通過する吸入空気の負圧や流量が変化するため、空気量に対して適切なガソリンを供給することが必要です。
ジェットとジェットニードルのサイズでセッティング変更ができる燃調キット
吸排気系パーツの交換でガソリン供給量を変更したい時、キャブレターには「パイロットジェット」「メインジェット」「ジェットニードル」という3つの調整要素があります。しかし、バイクメーカーでは吸排気系パーツはすべてノーマル仕様でセッティングを決定しているので、純正サイズ以外にジェットやニードルの選択肢はありません。
キースターの燃調キットはこの部分に注目した製品です。
燃調キットの最大の特徴は、キースターが独自に開発したパイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルにより純正キャブのセッティングを変更できる点です。
例えばエアークリーナーの吸気口のサイズを拡大したり、エアークリーナーボックス自体を取り外すカスタムを行った場合、キャブレターのベンチュリーに生じる抵抗が減って負圧が小さくなります。
すると空気が入りやすくなる一方で、フロートチャンバーから吸い上げられるガソリンに加わる負圧も小さくなるため、それを補うためにジェットのサイズを大きくするのが一般的な対処方法となります。燃調キットには純正サイズを中心に3サイズのパイロットジェットと6サイズのメインジェット、4サイズのジェットニードルが入っているので、ノーマルセッティングに対して混合比を濃くすることも薄くすることもできます。
スロットル開度が小さい領域の混合気に影響するパイロットジェット(右)、バキュームピストン開閉に連動してメイン系のガソリン吸い出し量を決めるジェットニードル(中)、メイン系統のガソリン流量を決めるメインジェット(左)がキャブセッティングの三要素。ジェットやニードルを変更すればガソリンの供給量が増減するわけではなく、エンジンが吸い込む混合気が濃いか薄いかに応じてガソリンの量を決めるのが正しい手順だ。
混合比をどのように変更するかは吸排気系パーツの組み合わせによって変化します。また吸排気系パーツの組み合わせが純正通りでも、年式が古く走行距離が多いバイクではエンジン本体のコンディションによって吸気状態が変化することもあります。
そのため、キャブセッティングを変更する際は、スパークプラグの焼け具合を参考にします。変更前のプラグのガイシや電極が白い場合は混合気が薄い=ガソリンが少ないと判断してジェットのサイズを拡大しジェットニードルは細くします。逆にプラグが黒くくすぶっている場合は混合気が濃い=ガソリンが多いと判断してジェットのサイズを小さくして太いジェットニードルに交換します。
燃調キットは説明書でスパークプラグの焼け具合の判断方法を図解し、セッティングを変更する際のジェットとジェットニードルの組み合わせ例も表記してあるので、カスタムユーザーの方はぜひチャレンジしていただきたいです。
【燃調キット SR400(RH01J/BSRキャブレター)用 エアカットバルブ付き 税込6,050円】
ケース入り燃調キットFY-5156NにエアカットバルブKACV018Mが付属するセット商品。
燃調キットにはセッティングや整備で必要なこまごまとした部品まで含まれるので、すべて単品で注文しなくてはならない純正部品より入手が簡単。同梱されている説明書の裏にはキャブセッティングの手順も記されている。
フロートチャンバーガスケットやフロートニードルやバルブシート、パイロットスクリューはセッティングの土台を決めるための重要パーツ。これらが不安定な状態ではセッティングはままならないので、年式が古いバイクはこれらの見直しも重要。
スロットル急閉時の混合気を適正にコントロールするエアカットバルブ
キースターのSR400用燃調キットのうち、1988~2000年式に対応するFY-5164Nと、2001~2008年式に対応するFY-5156Nには、それぞれエアカットバルブセット付きを設定しています。
スロー系統に組み込まれたエアカットバルブはセッティングパーツではなく、特定の走行条件で作動するパーツです。走行中に前方で赤になった信号に対応して、エンジンブレーキを利用するためにスロットルを全閉にするのは通常の運転方法です。エンジン回転数が高い状態でスロットルを全閉にするとメイン系統から供給される混合気がなくなり、パイロット系統に依存します。
エアカットバルブには、スロットル全閉時のベンチュリー内圧力の変化によってダイヤフラムが作動してスロー系統のエア通路を閉じることで、相対的にスロー系統のガソリンに掛かる負圧を大きくしてエンジンに濃い混合気を吸わせてアフターファイヤーを抑制する機能があります。
エア通路を切り替えるバルブは、負圧によって作動するゴムのダイヤフラムで開閉するため、経年劣化やスロー系統のガソリンの浸漬によりゴムが劣化して作動不良を起こすと、スロットル全閉時の混合気が薄くなりすぎて、マフラー内でパンパンと音が鳴るアフターファイヤーが発生する原因となります。
高回転時にスロトットルを閉じた際に発生するアフターファイヤーは、スロー系の混合気が薄い際の典型的な症状ではあるため、エアカットバルブの不具合を見落としてパイロットジェットの番数を上げてしまうと、今度は通常走行時にスロー系統の混合気が濃くなり過ぎてプラグかぶりの症状につながることもあります。
したがって、SR400を含めてエアカットバルブ付きキャブが装着されたバイクで年数が経っているものは、ジェットのセッティングと共にエアカットバルブのコンディションチェックも不可欠です。
SRの場合。キャブ最終の2008年モデルでも18年を経過しているので、オーバーホールの際は無条件でエアカットバルブを交換しても良いかもしれません。
キースターではSR400用として下記の燃調キットを設定しています。
・VMキャブレター用 1978~1987年 FY-5003N 税込4,400円
・BSTキャブレター用 1998~2000年 FY-5164N 税込4,400円
・BSTキャブレター用エアカットバルブ付き 1998~2000年 FY-5164N+KACV010M 税込6,050円
・BSRキャブレター用 2001~2008年 FY-5156N 税込4,400円
・BSRキャブレター用エアカットバルブ付き 2001~2008年 FY-5156N+KACV018M 税込6,050円
燃調キット単体での販売はあるがエアカットバルブだけでは購入できないので、エアカットバルブを交換したい場合は自動的にセット商品を選択しなくてはならない。
キースターのエアカットバルブはダイヤフラムとスプリングのセットとなる。
エアカットバルブはキャブボディの左側に2本のビスで固定されたカバーの内側に組み込まれている。配線がつながっている部品はスロットル操作で開閉するバタフライバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサー(TPS)。TPSの情報はイグナイターに送られて3次元点火マップに使用される。
エアカットバルブカバーの裏側にスプリングにより、通常走行時はエアカットバルブのピンが押し込まれてスローエア通路が開いている。開いているバタフライバルブが急激に閉じると、バルブカバー内側に負圧が生じてスプリングを縮めながらエアカットバルブが引き戻されてスローエア通路が閉じ、エアの流量が減少する分ガソリンが吸い上げられて混合気が濃くなり、アフターファイヤーを抑止できる。
エアカットバルブのピンに見立てたヘキサゴンレンチの先端を差し込み、スローエア通路を開いた状態。開いた通路から空気が流れることでスロー系統の混合気が適正になる。
エアカットバルブが作動してスローエア通路が閉じた状態。鋼球が空気の通路を塞いでスロー系統が空気不足になり、負圧でガソリンが吸い出される。バタフライバルブが開いてエアカットバルブカバー内部の負圧が小さくなれば、スプリングによりエアカットバルブのピンが再びバルブを押し開くため、スローエア通路が再び開通して正常な混合気に戻る。
ゴムの薄膜であるダイヤフラム中心のピンがスローエア通路の鋼球を開閉することで、スロットル急閉時の混合気を調整するエアカットバルブ。経年劣化などでダイヤフラムが破損するとスローエア通路が閉じなくなり、混合気希薄によるアフターファイヤー発生の原因となる。
長期不動キャブのオーバーホール時は燃調キット使用前の徹底洗浄が必須
燃調キットは純正キャブレターのセッティングを変更できるのが特徴であり魅力ですが、このキットは整備やオーバーホールにも有効です。特に長期間不動状態だったバイクのキャブは劣化したガソリンや腐食で傷んでいることが多く、そのまま新鮮なガソリンを入れるだけではうまく機能しない場合も少なくありません。
フロートチャンバーガスケットが収縮や硬化していればオーバーフローの原因になりますし、フロートニードルの摩耗や硬化もオーバーフローにつながります。またパイロットスクリューのOリングが硬化するとボディとの気密性が低下したり振動で緩む場合もあります。
純正部品でこうしたパーツを入手する際は、すべての部品を単品でリストアップする必要がありますが、燃調キットには全部入っているため注文漏れや誤注文の心配がありません。さらに注目していただきたいのは、燃調キットはリーズナブルだという点です。
燃調キットの1キャブレター分の価格は税込4,400円です。4気筒車なら4倍の税込17,600円になりますが、SRは単気筒なので4,400円で済みます。
これに対して燃調キットと同じ内容を純正部品でリストアップすると、税込30,000円弱となりました。もちろんキャブ1個分の価格です。燃調キットはメインジェット6個、パイロットジェット3個、ジェットニードル4本付きですが、純正部品はどれも1つずつなので、その差は圧倒的です。
安ければ安い方が良いというつもりはありませんが、セッティングにもオーバーホールにも使える燃調キットの利便性の高さと価格の魅力は大きいのではないでしょうか。
先に紹介したエアカットバルブ付きキットは税込6,050円になりますが、それでも純正部品より断然お値打ちです。ちなみに純正部品のエアカットダイヤフラムは税込2,321円となっています。
整備やオーバーホール用パーツとしてのアピールポイントも理解いただけたと思いますが、長期間不動状態で内部が汚れたキャブに使用する場合は、純正ジェット類などをすべて取り外した後でキャブレター本体の通路をすべて入念に洗浄することが重要です。ボディ内部の通路にはエアーの通路とガソリンの通路があり、どちらにも汚れが詰まっていると考えられます。
特にフロートチャンバー内のガソリンを抜かずに放置してしまったキャブのガソリン通路には、劣化したガソリンがワニス状となって付着している可能性があります。この汚れに手を付けずキースターのパーツだけを組み込んでも、ガソリンやエアーの流量に問題が発生する懸念が残ります。そうした不安要素や心配を払拭するには、ボディ内部のすべての通路内部に詰まりや汚れを取り除くことが不可欠です。
徹底的に洗浄を行った後にキースターのジェット類を組み込む際は。吸排気系パーツがノーマルならジェットやジェットニードルもスタンダードサイズを使用します。前述の通り、混合気が濃いか薄いかはスパークプラグの焼け具合で判断するのが大原則です。
純正よりジェットサイズを大きくした方がノーマルよりパワーが出るはず? と考えても、それに見合った空気が吸えなければプラグがかぶるだけで効果はありません。長期間不動車であれば、まずはスタンダード仕様でアイドリングから高速まで淀みなく走行できることを確かめてからプラグを確認して、必要ならばセッティングを変更するようにしましょう。
惜しまれながら販売終了となったヤマハSR400は、これからも長く愛される人気モデルとなることでしょう。キースターの燃調キットは名車のコンディション維持にキット役立つはずです。
長期間不動状態で保管していたキャブレター内部はかなり汚れが付着している。キャブレター内部のガソリンを抜いておかなかったため、劣化したガソリンによる汚れも目立つ。
パイロットスクリューの先端はテーパー形状で、パイロットアウトレットの穴に対するねじ込み量によって隙間が変わり、アイドリング時の混合気の流量が決まる。エンジンから吹き返したカーボンが付着するとパイロットアウトレットとの隙間が減少してアイドリング時の混合気が薄くなることがある。
指で摘まんだフロートバルブシートの上に見える汚いメインジェットに注目。放置期間中にフロートチャンバー内のガソリンが徐々に干上がるとともに、浸っていたジェットに劣化したガソリンが付着した痕跡だ。
パイロットジェットはメインジェットより穴径が小さいため詰まりやすい。洗浄時は必ず取り外してキャブレタークリーナーに漬け込もう。
メインジェットとジェットホルダー。キャブボディ内に挿入されているジェットホルダーは点サビが発生しており、筒の横穴(エアブリード)も詰まりかけ状態だった。こうした汚れはガソリンが付着していたキャブ内部の通路にも発生していると考えるのが妥当だ。
ジェットニードルにも指で擦る程度では落ちる気配のないガソリンが変質したワニス状の首輪が付着している。このジェットニードルはラジオペンチでバキュームピストン内部のキャップを引く抜くことで取り出せる。小さなスプリングやワッシャーが出てくるので紛失に注意。
キャブレターのワニス汚れは一般的なブレーキ&パーツクリーナーでは落ちないので、キャブレタークリーナーを使用する。ヤマルーブのスーパーキャブレタークリーナー(泡タイプ)は、強力洗浄成分をスプレーのガス圧で噴射することで狭い通路の隅々まで行き渡らせることができる。
キャブレタークリーナー成分が残らないようパーツクリーナーで入念にすすぎ洗いを行い。エアーブローで各部の通路が開通していることを確認する。パイロットアウトレットやバイパスポートなど、穴径が小さい通路は特に要注意。
ジェットニードルはスタンダードサイズを使用し、クリップも標準の3/5段にセット。余計な気を起こさず、まずは純正通りのセッティングで走行することが重要。
パイロットジェットとメインジェットに加えて、このキャブレターにはスタータージェットも付く(メインジェット右側)。文字通りエンジン始動時のみ稼働するパーツだ。
キースター製フロートバルブシートとニードルを使用してフロートを復元する。新品フロートは白色だが、長くガソリンに触れていたことで飴色に変色している。真鍮製フロートのように穴が開くことはないが、浮力が低下して実油面が高くなることがあるの注意が必要だ。
長く使用して潰れたフロートチャンバーガスケットはオーバーフローの原因となるため、新品への交換は必須。キースター製ガスケットは純正部品と同等の品質で安心して使用できる。
デリケートなパイロットスクリューもキースター製に交換する。ロックするまで締めたスクリューを1と3/4回転戻した位置が規定値となる。
トップカバーを閉じる際にピストンダイヤフラムを挟み込まないよう、ベンチュリー側からバキュームピストンを押し上げ、ダイヤフラムを伸ばした状態でカバーすると良い。
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