【カタナ用パーツ復刻】想像以上の苦労と手間をかけて廃番パーツ復刻に取り組むアドバンテージ

メンテナンスや修理に不可欠なたったひとつの部品が手に入らないだけで、走行できなくなるかもしれない。だからこそ絶版車や旧車ユーザーにとって、「部品販売終了」「ゴソウダンパーツ」はもっとも震撼するフレーズといって過言ではない。アドバンテージではここ数年「廃番プロジェクト」と称してメーカーが販売を終了した部品の独自復刻に注力している。だが、このプロジェクトはユーザーが想像するよりはるかに難易度が高く、リスクが大きい試みであることを知っておくことが必要だ。
●文/写真:栗田晃 ●BRAND POST提供:アドバンテージ
ローフリクションケーブルからスタートして、クラッチやキャブレターパーツにも進出
1台のバイクの部品はすべてバイクメーカーが作るわけではなく、サスペンションやホイールなど、それぞれの専業メーカーが製造する。新車製造時はまとまった数量があるが、車両が販売を終了して補修部品となるとその数は激減する。さらに補修部品の注文が減ると、バイクメーカーが各製造メーカーに販売終了を通達し、生産設備が廃却される。
「だから金型などが処分された純正部品を復刻するのは一筋縄ではいかないのです」と語るのは、廃番プロジェクトを推進するアドバンテージ代表取締役の中西昇さん。生産設備がなくなった部品を復刻する際、新車製造時と同等の生産数が見込めるのなら、製造メーカーも話に乗るかもしれない。だが絶版車用の部品では大量販売は見込めない。
「30年間にわたるFCC社との関係があるため、「アドバンテージだから簡単に再生産を依頼できるんでしょ」と言われることもありますが、とんでもありません。我々もあらゆる手段を使い、時間をかけて1点ずつ復刻していくしかないのです」
純正キャブレターのパーツやインナーチューブなどの廃番パーツも、純正部品を製造していた国内メーカーに掛け合って、ひとつずつ堅実に製品化するアドバンテージ。絶版車ユーザーは皆でこのプロジェクトを支持し、応援していくべきであろう。
「廃番プロジェクトを始めた頃と比べて、現在は純正部品終了のペースが速くて、販売状況を把握するのも大変です」と語る中西社長。それでも品質が確かな部品をユーザーに届けるべく、MADE IN JAPAN にこだわるモノ作りを堅持している。
GSX1100Sカタナ用Type-Gキットは削り出しプレートで軽量化
クラッチプレートやフリクションディスクは車種間で互換性がある場合もあるが、クラッチハブやプレッシャープレートはエンジンごとの専用品となるため、純正部品と同じ物を製造するのは容易ではない。
クラッチハブがクラッチプレートの内爪で叩かれ凹みができるとジャダーの原因となるが、スズキGSX1100S用純正部品はかなり以前に販売終了となっていた。そのため、独自に製造したクラッチハブとプレッシャープレートを加えた、トラクションコントロールクラッチキットを製作した。
【ADVANTAGE FccTRACTION CONTROL CLUTCH KIT Type-G】ダークオレンジアルマイトが印象的なアルミ削り出しプレッシャープレートと、ハードアルマイト仕上げのクラッチハブを独自に製造し、FCC製クラッチプレートとフリクションディスクと組み合わせたGSX1100S用キット。これに救われたカタナユーザーは多い。●価格:7万4800円
GSX1100Sの純正クラッチプレートはスチール製で、アドバンテージのアルミ製プレートに交換するだけで600g程度の軽量化となる。現在は完売したが、プライマリードリブンギアとの間にゴムダンパーを内蔵したクラッチハウジングも限定復刻した。
絶版車の操作性を一変させるローフリクションワイヤー
アドバンテージが廃番プロジェクトに取り組み始めるきっかけとなったのが、スーパーローフリクションワイヤーの製品化だった。
ステンレス製インナーワイヤーの芯線の太さや編み方、アウターワイヤー内部に使用しているポリプロピレン製チューブ、さらにインナーとアウターのクリアランスなど、純正レベルを遙かに超える低抵抗とするべく、各部の仕様にこだわり抜くことで多くのユーザーから絶賛されている。スロットル/クラッチ/チョークワイヤーがあり、両端の金具も各対応車種の純正形状に合わせて製造されているため、無加工で装着できる。
たかがワイヤーと思うかもしれないが、車種によって1m近くの長さになることもあるため、フリクションの大小は操作性や快適性に大きく影響する。ワイヤーグリースを何度注入してもレバーが重いクラッチが、このワイヤーで信じられないほど軽くなった例もある。
高品質新品インナーチューブは、点サビフォークリペアの必需品
フロントフォークインナーチューブの点サビは絶版車にありがちなトラブルだが、GSX1100Sカタナ用純正部品は販売終了となっているため、硬質クローム再メッキか社外品で対処するしかない。
だが、品質と性能面を両立させるには純正クオリティに勝るものはないという考えから、ADVANTAGE KYBブランドで復刻。純正インナーチューブは1種類ではなく、アドバンテージでは4種類の部品番号に対応したパーツを製品化した。
【ADVANTAGE KYB GSX1100S用インナーチューブ】●価格:2万7500円(1本)
純正キャブにこだわるならオーバーホールは必須
カスタムブームの時代は、純正キャブレターを迷わずレーシングキャブに交換するオーナーも多かった。だが昨今の絶版車は純正仕様が尊ばれることが多く、純正のミクニBS キャブをメンテナンスして使いたいという声も多い。
負圧キャブにおけるピストンダイヤフラムはアキレス腱のようなもので、劣化や破損によってピストンがスムーズに作動しなければセッティングどころの話ではない。だからこそ純正スペックで復刻されたピストンに価値がある。
【ADVANTAGE MIKUNI GSX1100S用キャブレターダイヤフラム】ダイヤフラムゴムは、厚み/硬度/すり鉢部分の中間形状によって吸入負圧に対する反応やレスポンスが変化するため、キャブレターメーカー以外が完全復刻するのは極めて難しい。●価格:5万2800円(4個)
左・パイロットジェット(4個5280円)、右・ニードルジェット(4個1万9800円)ともにすでにメーカー自体が生産設備を持っておらず、製造委託先も軒並み営業休止や廃業となり、純正品質で復刻するにはコスト上昇を避けられなかった。
素材の見直しでアップデートした、カタナファイナルエディション用メインワイヤーハーネス
完売してしまったものの、過去にはGSX110SYファイナルエディション用のメインワイヤーハーネスも復刻した。これは本体にYAZAKI製高密度配線を使用し端子に銀メッキを施すなど、復刻を超えるアップグレードを実践。
配線色はもちろん、カプラー類もすべて純正形状の部品を使用しており、交換するだけでハーネス不良を根治できる製品だった。こうした部品を製造するメーカーの多くも海外に製造拠点を移管し、少量生産に対応できなくなっているそうだ。
アジアで大人気のニンジャ150向けに専用設計したクラッチキットを新発売
絶版車向けの廃番プロジェクトと並行して、現行車向けのハイパフォーマンスパーツの開発も盛んで、市場規模が大きなアジア向けの新製品が続々登場。
カワサキKR150/Ninja150RR用ADVANTAGEFccTRACTION CONTROL CLUTCH Kit は、インドネシア/タイ/マレーシアのチューニングファンのリクエストから生まれた新製品である。2ストロークのKR150/Ninja150RR自体は2016年前後で販売終了となったが、現在も現地のレースで活躍する人気モデルである。
【ADVANTAGE FccTRACTION CONTROL CLUTCH Kit】●価格:3万6300円
KR150/Ninja150RRに搭載されていた水冷2スト149ccエンジンは日本国内にはなく、クラッチキットを開発する労力は廃番プロジェクトと同様だったそう。現地のレースレギュレーションは曖昧でエンジンチューニングも強烈らしいが、開発時にクラッチが滑ることはまったくなかったそうだ。
※本記事はアドバンテージが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。














