
2015年に三ない運動を廃止し、群馬県交通安全教育アクション・プログラム(行動計画)を策定して全年代の県民へ交通安全教育を届けている群馬県。後編では、バイク免許の取得者や原付バイクで通学を行っている高校生、該当校の担当教員が参加する、県教育委員会主催による「二輪車安全運転者講習会」の模様をレポートする。
●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部)
1. 高校生と“先生”への原付バイク講習会
二輪車安全運転者講習会は群馬県総合交通センター(運転免許試験場)で開催された。
2025年12月18日(木)、群馬県前橋市の群馬県総合交通センター(運転免許試験場)において「令和7年度 公立高等学校・中等教育学校(後期) 二輪車安全運転者講習会」が開催された。
当日は、県内の公立校で免許を取得、および原付バイク通学を行っている生徒18名と、該当校の担当教員9名が参加し、13:00~15:30の約2時間半、実技講習と座学講義を受講した。
教習車両はセンターで普段使われている原付一種スクーター。生徒らは自車両は持ち込んでいない。
本講習会の大きな特徴のひとつに、参加高校の担当教員(先生)が必ず参加するというものがあり、今回も参加校の数と同じ9名の先生が生徒と一緒に受講した。
バイクに詳しくない先生も、生徒の免許取得やバイク通学を指導する立場になることもある。本講習会は、実際にバイクに乗り、その特性や危険性を知ると共に、指導員から安全運転の指導法を学べる格好の機会となっている。
スラロームをする先生。先生はただの引率ではなく、講習会の最初から最後まで生徒と一緒に受講する。
先生がそれぞれの学校に二輪車安全運転に関する指導法、そのノウハウを持ち帰ることは、県の方針に基づいた交通安全教育を各校の現場に届けることに他ならない。とても意義の大きな取り組みだと言えるだろう。
2.県警本部ほか関係団体の協力のもと実施
座学講義の時間で、二輪と四輪の死角について説明する群馬県警察本部交通部交通機動隊の隊員。
さて、本講習会の主催は群馬県教育委員会だが、アクション・プログラムの施策推進方針である「関係団体との連携」のもと下記の団体が実技指導と座学講義を行っている。
<当日参加の関係団体>
〇群馬県警察本部 交通部 交通企画課
〇群馬県警察本部 交通部 交通機動隊
〇群馬県交通安全協会
〇群馬県二輪車安全運転推進委員会(県二推)
〇群馬県二輪車普及安全協会実技講習については、主に県二推の二輪車安全運転指導員と群馬県警交通機動隊の白バイ隊員が、座学講義については群馬県警交通企画課の課員と交通機動隊の白バイ隊員が担当した。
県二推の二輪車安全運転指導員は7名が参加。指導法や伝え方も手慣れていて、生徒もすぐに吸収できていた。
二輪車安全運転指導員は、普段から二輪車マナーアップ講習会等で高校生に指導を行っており、教え方も手慣れている。
3.サポートも手厚い! 実技講習を開始
県教育委員会の進行のもと行われた開講式の様子。関係団体からの挨拶や講師の紹介もあった。
実技講習は試験場のコースの全面を使って約60分にわたって行われた。走行前にはヘルメットやプロテクターなど安全装具のチェック、準備体操、車両点検も行なわれ、万全の体制でスタートした。
<教習時の服装>
ヘルメットやグローブなどは各自が持参。胸部プロテクターは貸し出された。
<準備体操>
実技講習は各部のストレッチに重点を置いた準備体操から始まった。
<車両点検>
車両点検は“ブタと燃料”に準じた内容。ブレーキ、タイヤ、灯火類、ガソリン残量の確認を指導員による指導のもと各自が行った。
<ウォーミングアップ走行>
生徒と先生の多くはバイクに乗り慣れている方が多いなという印象を受けた。
まずは、車両と体を温めながらのウォーミングアップ走行から。指導員の先導のもと、一列になって講習コースをトレースしていく。
ウォーミングアップ走行から戻ってきたら、さっそく指導員からアドバイスが。「ヒザを開かないで。肩の力を抜いて、ヒジを上げないで」
なお、バイクに乗り慣れていない、今日初めてバイクに乗るという人たちは一旦列から外れ、マンツーマンの指導を受けることができた。
スクーターの操作方法も一から教えてもらっていたが、講習の終盤には全員がひとりで不安なく走れるようになっていた。
校務分掌(こうむぶんしょう:各教員が分担して受け持つ校内業務)の交通委員として参加していた先生はバイクに乗るのは今日が初めてだった。
4. 生徒と先生が一緒に走って課題に挑戦
女子生徒と、その後ろについて走る先生。ゼッケンの数字が二けたと大きいのが先生たち。
実技講習で行われた課題は、主にブレーキング、8の字、Uターン、パイロンスラローム、一本橋で、コース走行時のインフィールドセクションではクランクやS字も通過するという内容だった。
生徒も先生も一列になって課題に挑戦していたが、普段からバイクに乗っているという先生も多く、生徒の後ろについてサポートする姿も見られた。
<ブレーキング>
ブレーキングは、パイロン位置からの指定制動(前後のブレーキを使った全制動)で行われた。指導員からは「制動時に近くを見すぎないこと」「ヒジを突っ張らないこと」などがアドバイスされていた。
<8の字>
8の字はその場で周回するものではなく、切り返して抜けていくというもの。目線とハンドル操作、切り返しのタイミングを体で覚える。
<Uターン>
広めの直線部分に設けられたUターンコース。目線を変えるタイミング、低速で車体を安定させるためのリヤブレーキの使用といったアドバイスが飛んでいた。
<パイロンスラローム>
スロットルワークや体重移動を習得できる直線パイロンスラローム。タイムを計測するわけではないので、自分のペースで通過する。
<一本橋>
脱輪する生徒も多かった一本橋。指導員からは目線を遠くにやること、スロットルを一定にしてリヤブレーキで速度を調整すること、ふらつかないために自らハンドルをこまかく左右に切ることなど多くのアドバイスがあった。
<インフィールド>
各課題をつなぐように設定されたインフィールドセクションでは、クランク(写真)やS字も通過した。
5. ビデオ視聴も交えての座学講義
屋内での講義は県警本部交通部交通企画課の課員が担当。もちろん先生も一緒に受講する。
実技講習の後は、屋内での座学講義となった。県警本部の交通企画課員が講師となり、県内の二輪車交通事故の情勢、二輪車の特性、二輪車の死角について説明を受けた。県内では、2025年(1~11月)に二輪車の関係する人身事故が約500件発生し、うち5人が亡くなった。二輪車事故を年齢層別に見ると、50代と40代、16~24歳の事故が多く、リターンライダーと若年層という二極化の傾向にあることがわかった。
二輪車事故情勢や二輪車死亡事故事例については配布資料を見ながらの解説が行われた。
人身事故の8割ほどは二輪運転者にも違反があった。仮に二輪運転者のほうが過失が少なかったとしても、亡くなる可能性はライダーのほうが高い。万が一に備えたヘルメットと胸部プロテクターは命を守るために重要な装備であることが改めて示された。
また、交差点の右直事故の要因となる「遠近錯視」についてはビデオ視聴でその原理(脳の誤知覚)を学んだ。
大きさの違うものが同じ速度で向かってくると、小さいもののほうが遅く遠くに見えるという遠近錯視は、知識として覚えるほかない。
6. 実際の車両にまたがり死角の危険性を体験
屋外に配置されたクルマとスクーター。クルマの運転席からはドライバー視点が、スクーターのシートからはライダー視点が体験できた。
座学講義で特に大きく扱われたのが、運転中の死角の危険性だ。座学講義の最後には、全員で屋外に移動。クルマの周りにスクーターを配置して、それぞれのシートに座ってミラーをのぞくことで、相手の車両がどこまで見えるのか、運転手の顔がどこまで見えるのかなどを確認した。
白バイ隊員と生徒らは、クルマの死角に入らないためにはどのように運転すべきかについて、その場でディスカッションを行って、相手車両と自車両の走行位置を常に考えるなど防衛運転の考え方を学んだ。
以上で座学講義は全てとなり、閉講式を経たのち講習会は終了となった。北風が強く寒い一日だったが、怪我や事故もなく無事に終えることができた。
7. 【私感】「誰ひとり取り残さない」取り組みの好事例
群馬県教育委員会の取り組みは、他県にとって参考事例となるものだ。
群馬県が主催する高校生とその先生に向けた原付講習会の模様をお届けした。群馬県が三ない運動を撤廃して10年、その間に高校生の免許取得者がどんどん増えたわけではない。
免許取得とバイク通学を許可する一方で、県は公共交通の利用促進もうたってきた。それでも、決して大勢ではないが、山あいの子どもたちの通学環境はどんどん悪化に向かっている。
そうしたごく少数の子どもたちのために何ができるのか。
群馬県の教育委員会は、安全運転を実技と座学で学べる場を用意した。先生も一緒に参加して、関係団体が協力して学校現場に交通安全教育を届けている。
学校が単独で講習会を開催することは難しい。群馬県教育委員会の取り組みは少人数の希望を叶えてあげられる、まさに「誰ひとり取り残さない」ものだ。ぜひこの取り組みが他県にも広がってほしいと願うばかりだ。
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