
バリバリ伝説や特効の拓など、バイクを扱った漫画に出てくる車両はいずれもかつての名車ばかり。その姿に憧れてライダーを目指したとなると、手に入れたいのは当然、旧車となるだろう。とはいえ、古いバイクは手間がかかるもの。初心者でも手を出していいものだろうか? そんな疑問にお答えすべく、この記事ではバイクビギナーと同じ目線を持つ筆者が身内の有名バイク屋に聞き取り調査をするという形で、旧車を含めた初めてのバイク選びのいろはをお伝えする。
●文:名城政也(ヤングマシン編集部)
憧れはあるけれど…
先日、周りのバイク好きの仲間から「旧車って今凄い高くなってるよね~」という話を聞きました。少し調べてみると、絶版車が増えてきている流れで、旧車の需要が高まっている様子。
…と偉そうに語ってみましたが、私はそもそも「旧車ってどれを指してるの?」レベル。こっそりインターネットで「人気 旧車」と調べてみました。すると、ホンダCB750FOURやカワサキZ2、ゼファーなど、ヤンキー漫画世代ドンピシャの私としてはテンションが上がるものばかり!
「値段は気合でなんとかするとして、自分が乗るならやっぱり旧車がいい!」
と思い、テンションが高まったまま某有名バイク屋で働いている身内のところに突撃。「旧車って初バイクにしてもいいのかな?」と聞いてみると「絶対やめた方がいい」と一蹴されました…。
「ええ、なんでだよ! 」 と思って色々聞いてみたところ、初心者には向いていないということが判明。であれば、どういうバイクを選ぶべきなのか、初心者のバイク選び方について根掘り葉掘り聞くことにしました。
初心者に旧車は難しい?
まず、なぜ旧車を買ってはダメなのか?と聞いてみると…「別にいくらでもお金かけられるんだったらいいよ」とのこと。
なぜなら古いバイクは壊れるし、旧車自体が高いから。旧車はものが古いから、配線、ゴムパーツなど、細かい部分まで維持費や修理費がかかるのです。場合によってはパーツそのものが販売されていないこともあり、とにかく大変。
「自分でいじれる、もしくはとことんお金かけられるなら旧車買ってもいいけど、どっちも無理なら旧車は諦めて」とのことでした。つまり、私ではカワサキZ2を買ってGTOの鬼塚栄吉にはなるまでのハードルが高すぎるということ…悲しい。
「かっこいい」は大切! でも何年式かはもっと大切!
旧車がダメだとわかっても、やはり好きな見た目のバイクに乗りたい…。そんな想いを伝えると…
「別にかっこいいで選ぶのは問題ないよ。ネイキッドとかアメリカンとか色んなタイプがあるし、インターネットで色々見て見た目で選ぶのは全然いいよ。ただ、それ以上に大切なのがそのバイクが何年式か」という回答が返ってきました。
「古いバイクと今のバイクだとキャブレターとインジェクションの違いがあるんだよ。「燃料供給装置」ってもので、古いものはキャブレターっていう機械式、今のバイクはインジェクションっていう電気式(電子制御)が使われてるんだよ」
と……言われて?マークが浮かんでいる私に、とてもわかりやすく教えてくれました。
「要はキャブレターだと古い機械。家電でいうなら10年前の家電を買ってるようなものだから壊れやすい。さらに言えば、キャブレターからインジェクションに変わったのは2007年頃だから、若い整備士ともなると、キャブレターの知識はあるけど触ったことがないって場合がほとんど。だからメンテナンスも難しい。自分でバイクいじりとかしないで、ただただ乗るだけなら、インジェクションのバイクの方が無難なんだよ」
つまりは「お前にキャブレターは早い」ってことですね…。じゃあどういう人がキャブレター車向けなのだろうか? と聞いてみたところ、峠を攻めたり自分で整備したりする人とのこと。
と考えると…旧車なんて私には扱えそうになさそうですね(湘南純愛組! の弾間龍二にもなれない…)。
バイク買うときって事前の知識がないとダメ?
ここまでの話を聞いて「バイクを買うにはある程度の前提知識がないとダメか」と半ば諦め、「じゃあ…俺はもっと勉強してから買わないとダメかな…?」と聞いてみたところ、決してそういうわけでもないという答えでした。
バイク屋さんなら、聞かれたことには答えてくれるし、何用でバイクを乗りたいのかがわかればお店側から最適な車種を提案してくれるとのこと。保険についても説明義務があるから、事前に調べておく必要もないと聞いて、安心していた私にバイク屋の身内から一つ注意を受けました。
「でも一つだけ初めて買う人に知っておいてほしいことがある…タイヤの空気圧はちゃんと気にすること」
バイクも自転車と同じで、置いておくだけでも空気は抜けるのに、なぜかバイクは大丈夫と初心者は思ってしまいがち。これを知らずに「何かバイク押したときに重くて…」「ハンドルがすごいとられるんです…」とお店を訪れる方も多いのです。
ちなみにバイクのタイヤの空気も、かなり大変だけど自転車の空気入れでも入れられるそうです。気合の入っている人はチャレンジしてみると…動画映えするかも?
適切なメンテナンスのためにも初心者はお店で買うと安心!
「バイクを買う際も乗る際もメンテナンスが大切なんだなぁ…」と納得し、「じゃあ、バイク買ったらメンテナンスはお願いするね! 」と伝えると「じゃあうちのお店で買ってね」との回答。
「急に営業してきたぞ! 」と思ったのですが、ちゃんとした理由がありました。
というのも、お店側からすると自店で売ったバイクでなければメンテナンスしにくいという事情があるからです。他店や個人売買由来のバイクだと、現状の状態もそれまでのメンテナンスや修理の履歴がわかりません。
自店で売ったバイクであれば、お店のシステムで「前にメンテナンスした日やその時の状態、修理内容」が記録されているから、万が一故障しても原因が突き止めやすいのです。
まれにメンテナンスを依頼するバイク屋さんを変えたり、壊れたときだけ相談してきたりする人もいるらしいのですが、かなり整備士泣かせなので、お店によっては断る所も多くなっています。
ちょっと気になるバイク購入のあれこれ
ここまでで、バイクの選び方については理解できてきたものの、実際にバイクを買う際にはまだ少し不安が残っている状態。そこで、「選び方」ではなく「買うときのポイント」について、身内のバイク屋さんにいくつか質問してみました。
買う時に必要なものは?
「必要書類は後日でも良いから、とくにはないかな。強いてあげるなら、住民票と印鑑をもってた方がスムーズに進むよ」
バイクを買ったら最短で当日乗って帰れる?
「ほぼ無理だね。ナンバーとりにいかなきゃいけないから。でも、250cc以下のバイクで、自分で役所or陸運局にナンバーとりにいくとかなら、朝契約済ませて、昼にナンバーとりにいってもらって、その間に整備して…って形で夕方に納車とかはできる場合もあるよ。その日の整備士の忙しさにもよるけど」
バイクを買う前に必ず確認しておくことは?
「中古ならエンジン/タイヤ/オイルのにじみ、あたりを見た方が良いけど、よくわからない場合はとにかく現車確認だけはした方が良いよ。インターネットで見つけて、いいなーって思っても、実際に見たら写真写りが良いだけで色がくすんでるとか、結構よくある話だから」
バイクって返品できるの…?
「よっぽどの事情がない限りは受け付けてないよ。不備があったとかなら返品できる可能性はあるけど、ただただ乗ってみて何か違ったんで返品したいですって言われてもね。その場合は買取ならOK。バイクを買うときって諸費用がのっかってるから、即日に買取依頼しても、購入時の金額がそのまま戻ってくるってことはないから慎重に」
おまけ:バイクを先に買って失敗したお客さんの話
最後に「初心者はバイクを買うのが先か? 免許をとるのが先か? 」と聞いてみたところ、面白い話を聞けました。
「彼氏がツーリング好きで一緒に走れるようになりたいっていう女の子がいて。『これから免許取りにいきます‼ 』って契約までしたんだけど、結局免許とってる間に別れちゃったんだよね。それで、別れたからもう乗りたくありませんってキャンセルに…。そうなるとキャンセル料取らざるを得ないから、確実に免許取る状況じゃないとバイクは先に買っちゃダメ。『友達と約束してて~』とかも、こっちとしては『友達がやめちゃったらどうするの?』って不安になるよね」
初心者のバイク選びは信頼できるお店で買うのが一番!
今回色々と話しを聞いて、「初心者は自分のセンスだけで買ってしまうのは危険だな」とわかりました。下手にセンスだけで選んで、買ったは良いけれど扱えないとなってしまえば意味がないですからね!
また今後長く乗り続けるためにも、信頼できるお店に通って気軽に相談できるような仲になっておくのも大切ですね。つまり、バイク選びの前にお店選び。
ちなみに、やはり人対人の関係なので、親身なお客さんと無愛想なお客さんでは、お店側の対応も多少変わってくるらしいです。なので、お店の人との相性も大切。
私もいざバイクを買うときには、失敗しないようにしっかり相談しながら選ぼうと思えた一日でした!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
CB1000Fをレジェンド、フレディ・スペンサーが試乗 Hondaホームカミング熊本にて、レジェンドライダーのフレディ・スペンサーがCB1000Fをサーキットでガチ走行。彼は「ビッグバイクでありながら[…]
1.生徒にアンケート調査!<免許取得と車両の購入> 坂本先生は、本年7月に北杜高校の生徒を対象に安全意識に関するアンケート調査を行った。対象は原付免許を持つ2.3年生の生徒100名と、小学校時に自転車[…]
1位:【俺たちのヨンフォア復活】ホンダ「CB400SF」まとめ 生産終了となっていたホンダ4気筒の名車、CB400 SUPER FOURの復活が確実となった。重慶モーターサイクルショーで世界初公開され[…]
Screenshot シュアラスターから新商品登場! 愛車のツヤ出し作業にピッタリなアイテムがシュアラスターから新登場! ワックスやコーティングの塗り伸ばし作業が今まで以上にラクになるアプリケーター。[…]
父とB+COM SB6XRで会話しながらプチツーリング すっかり秋模様。なんなら執筆している今日は、最高気温が15度。朝から冷え切っていて、冬気分です。 自宅近くを走っているスクーターの方を見て、「わ[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
バイクバッテリー上がりの原因とは? エンジン始動時のセルモーター駆動やヘッドライトの常時点灯、ABS制御、デジタルメーターなど、バイクは高性能化するにつれてバッテリーの負担がどんどん増加していきます。[…]
ハンドルまわりだけでも用語はたくさん 「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役[…]
芦ノ湖スカイラインとは? バイク乗りに人気の理由 富士山の麓に点在する富士五湖のひとつ、芦ノ湖は箱根の人気観光地ですが、湖の西側の尾根に沿って通じているのが芦ノ湖スカイラインです。 全長約10.7km[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
人気記事ランキング(全体)
マニア好みのボルドールカラーが映える! アクティブが手掛けるCB1000Fカスタムだが、まずはカラーリングがインパクト大! CB-Fといえば、純正カラーでも用意されるシルバーにブルーのグラフィックの、[…]
シグナスシリーズ、20年の歴史を背負うニューフェイス 以前は空冷エンジン搭載のコンパクトな原付二種スポーツスクーターとして人気を博した「シグナスX」だが、水冷の新世代「シグナス グリファス」に交代した[…]
気鋭のクルーザー専業ブランドによるカスタムクルーザー 以前に試乗記事などをお届けしたBENDA(ベンダ)がいよいよ本格上陸する。日本での輸入販売を手掛けるウイングフットより取り扱い開始が発表されたのだ[…]
軽量で扱いやすい定番ジェット TE-1はスポーティな印象を残しつつ、重量は抑えめで日常使いに適したジェット型ヘルメットです。対応は全排気量対応で、あごひもは操作しやすいラチェット式バックルを採用。Am[…]
原付免許で乗れる『新しい区分の原付バイク』にHondaが4モデルを投入! 新たな排ガス規制の適用に伴い2025年10月末をもってHondaの50cc車両は生産を終了しますが、2025年4月1日に行われ[…]
最新の投稿記事(全体)
CB1000Fをレジェンド、フレディ・スペンサーが試乗 Hondaホームカミング熊本にて、レジェンドライダーのフレディ・スペンサーがCB1000Fをサーキットでガチ走行。彼は「ビッグバイクでありながら[…]
憧れはあるけれど… 先日、周りのバイク好きの仲間から「旧車って今凄い高くなってるよね~」という話を聞きました。少し調べてみると、絶版車が増えてきている流れで、旧車の需要が高まっている様子。 …と偉そう[…]
1.生徒にアンケート調査!<免許取得と車両の購入> 坂本先生は、本年7月に北杜高校の生徒を対象に安全意識に関するアンケート調査を行った。対象は原付免許を持つ2.3年生の生徒100名と、小学校時に自転車[…]
背中が出にくい設計とストレッチ素材で快適性を確保 このインナーのポイントは、ハーフジップ/長めの着丈/背面ストレッチ素材」という3点だ。防風性能に特化した前面と、可動性を損なわない背面ストレッチにより[…]
防寒性能と動きやすさを両立させたライディングジャケットを探しているなら、コミネ(KOMINE)の「ソフトシェルウインターパーカ MJ-005」を選択肢に入れておきたい。1947年創業の国内メーカーらし[…]
- 1
- 2








































