
50年以上にわたって徴収されてきた不自然な税金が25.1円/Lのガソリン暫定税率。税金に対して消費税が上乗せされるという制度設計がようやく見直されようという機運になったが、今度は走行距離課税の導入が俎上に。車検がない250cc以下のバイクはどうするつもりなのだろうか……。
●文: Nom(埜邑博道)
暫定税率を廃止するなら代わりにって……
与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。
このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円/Lの暫定税率が上乗せされている状況が1974年から続いています。
しかし、昨年12月に与党が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」に「いわゆる『暫定税率』は、廃止する」と明記され、先の参議院議員選挙でも野党各党が一刻も早い廃止を訴えたことはまだ記憶に新しいでしょう。
現在、自民党や立憲民主党などの与野党6党が廃止に向けての実務者協議を行っているのですが、そこで自民党から出てきたのが暫定税率廃止による減収分を補うために新たな税金が必要という声で、代替財源として、走った距離に対して課税する(つまり走れば走るほど税金が高くなる)「走行距離課税」を導入してはどうかというものです。
2022年の政府の税制調査会で、電気自動車の普及を見据えた自動車税制の見直しに着手した際に、道路利用税(考え方は走行距離課税と同じ)を検討していると報じられましたが、反対の声が非常に大きく上がり、いつのまにか立ち消えになりました。
このとき、三原じゅん子参議院議員がツイッター(当時)で「これは国民の理解を得られないだろう」とつぶやいて大反響を呼んだことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
車検のない二輪はどうやって走行距離を把握するのか
ゾンビのように蘇ってきた走行距離課税。都会に対して交通インフラが整備されていない地方に住む人や、運送業者の負担が増えることなどさまざまな問題を抱えた考え方ですが、そもそもどうやって走行距離を把握するのか。
報道では、車検ごとに走行距離を記録するという方法が伝えられているけれど、二輪の場合は一体どうするのか。
250cc以下は車検がない二輪の走行距離は、どうやって把握するのでしょうか。こちらも報道であるように、250cc以下のすべてのバイクに走行距離を計測するためのGPS付きの専用車載器を装着するとでもいうのでしょうか。
2024年4月時点での原付一種と原付二種の保有台数の合計は約624万台(総務省調べ)。さらに軽二輪は211万6890台(国交省調べ)ですから、車検のない800万台以上の二輪車から走行距離税を徴収するために、いったいどれだけのコストをかけるのでしょうか。
とても賢い官僚の方々が、必死に考えてなんとか実現しようとしているのですから、そこまで視野に入れているのかもしれませんが、法整備の際などに結構彼らの頭からすっぽり抜け落ちてしまうのが二輪のこと。まあ、生まれてから一度も興味も関心ももったことがないのでしょうから、仕方ないかもしれません。
官僚の仕事は新たな税金を作ることなのか?
今週、さらに与野党間の協議が進むと思われますから、暫定税率廃止にともなう税収不足をどうやってカバーするのか、いろいろな案が出てくると思われます。
ちなみに、本日、財務省が発表した2024年度の法人統計調査によると、全産業の売り上げ高(金融・保険業を除く)は前年度より3.6%増えて1692兆4018億円、同じく経常利益は前年度比7.5%増の114兆7288億円と4年連続で増加、1960年度以降で過去最大を記録したそうです。
そうなると、当然税収も上振れするでしょうから、野党の税収の上振れ分を充てることで新たな国民負担を求めずに財源が確保できるのではないかという主張も十分検討に値するのではないでしょうか。
国民に負担を強いる新たな税金を作ることよりも、官僚が真に国民のために働いているというのなら、徹底的に無駄や不要な支出がないかをその優れた頭と見識で調査してほしいものです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 多事走論 from Nom)
「免許を持ってない人にあれこれ言われたくない」の声で決意 以前から個人的な知人や友人にバイク乗りが多く、ご主人も20代のころからのカワサキ乗りで、石井議員は常にバイクがそばにある環境で長年生活していま[…]
来年10月から首都高料金が1割値上げか? 12月24日、首都高速道路公団は来年10月から料金を改定(値上げ)する案を発表しました。 これは、今年の10月に設置された「首都高の持続可能な道路サービスに関[…]
片山財務大臣が走行距離課税は検討していないと明言! この発言の持つ意味はとても大きい 11月12日の参議院・予算委員会で、国民民主党の榛葉幹事長の「走行距離課税はやりませんよね」という質問に対し、片山[…]
補助金を段階的に上げて暫定税率廃止へと繋ぐというが、年末までに無理なく実施できる? このコラムでも何度も取り上げてきたガソリンの暫定税率が、ついに廃止される見通しとなりました。 自民、日本維新の会、立[…]
トランプ関税はバイクの世界にも影響があるのか、国内各メーカーに聞いてみました 世界中に吹き荒れている「トランプ関税」の深刻な影響。 特に、自動車に課されることになった15%の相互関税は日本の自動車メー[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
ハンドチェンジ/フットクラッチは昔の変速方式。ジョッキーシフトはその現代版カスタム 今回は、バイク乗りなら一度は見たことのあるかもしれない「ジョッキーシフト」について書きたいと思います。 戦前や戦後間[…]
窃盗犯が新品ではなく中古のヘルメットを狙う理由 窃盗犯が新品ではなく中古のヘルメットを狙うのは「盗みやすく確実に売れる」というのが、大きな理由です。実は近年、窃盗件数自体は減少していると同時に検挙率は[…]
きっかけは編集部内でのたわいのない会話から 「ところで、バイクってパーキングメーターに停めていいの?」 「バイクが停まっているところは見たことがないなぁ。ってことはダメなんじゃない?」 私用はもちろん[…]
車検満了日の2か月前から受験可能に! 春といえば車検の季節。新車や中古車がもっとも売れるのは1~3月であり、そこから3年あるいは2年が経つと車検がやってくる。もちろん納税も……。 この季節は年度末でも[…]
改めて知っておきたい”路上駐車”の条件 休暇を利用して、以前から行きたかったショップや飲食店を訪ねることも多くなる年末・年始。ドライブを兼ねたショッピングや食べ歩きで日ごろ行くことのない街に出かけると[…]
人気記事ランキング(全体)
高いコスパと「旅」をテーマにした日常着としてのデザイン 『葬送のフリーレン』は、魔王を倒した勇者一行の後日譚を描くファンタジー作品だ。主人公のエルフ・フリーレンが、かつての仲間との約束を果たすため、あ[…]
なぜ、これほどまでに売れるのか? ワークマンのリカバリーウェア「MEDiHEAL(メディヒール)」が、異常とも言える売れ行きを見せている。 2025年の秋冬商戦に向けた第1弾は、用意された211万着が[…]
アンチレプリカを貫きアルミフレームをスチールでも軽量化! 1985年にリリースしたGPZ400Rは、エンジンが水冷化したDOHC16バルブ4気筒で何と他ではヒットしないフルカバードボディ。 ライバルた[…]
伝説の暗殺拳が拓く、愛と宿命の世紀末 1980年代、原作・武論尊、作画・原哲夫により展開され、少年たちの胸を熱く焦がした『北斗の拳』。その魅力について振り返っておこう。 物語の舞台は、199X年の核戦[…]
日本に導入される可能性も?! ホンダはタイで、PCX160をベースにクロスオーバー仕立てとした軽二輪スクーター「ADV160」の新型2026年モデルを発表した(インドネシアでは昨秋発表)。新たにスマー[…]
最新の投稿記事(全体)
FANTICが本気で “オンロード” を始めた! FANTICは、どちらかというとオフロードやスクランブラーのイメージが強いメーカー。しかし最近はMoto2に参戦するなど、ロードにもかなり力を入れてい[…]
■ 獲物は「シートレールとの平行美」。後付け感ゼロの衝撃! まず目を引くのが、そのレイアウトだ。マットな質感を湛えるブラック仕上げの2本出しサイレンサーは、あえてシートレールと平行に配置。 「後から付[…]
2026年度版のトピックスは5つ! 大人気企画「RIDERʼS REPORT」 2026年度版もアプリ「Route!」利用コードを同梱 今年度も紙書籍版には12か月間使えるクーポンコードの同梱を継続実[…]
ニキ・ラウダも関わった「勝つためのホモロゲ」初代M3の軌跡 初代M3は、BMWがツーリングカーレース参戦に向けたホモロゲーションモデル。1986年に市販車をリリースすると、1987年から世界ツーリング[…]
使い勝手と存在感を両立した”ミドルサイズ” シェルシートバッグMは10~14Lの可変容量を備えた標準サイズモデルだ。メインファスナー下の拡張ファスナーを開くだけで+4Lの容量を追加できる。荷物が少ない[…]
































