
旧車好きが乗りたい車両を造った──。カスタムが熱かった1990年代にインスパイアされた、CB1000Fコンセプトのカスタマイズドマシンが、鈴鹿8耐の“8FES!”エリア内の“NANKAIビレッジ”に展示中だ。あの頃を思わせるディテールに最新レーシングパーツも組み合わせた、アールズギア×TSRのコラボだからこそ出来たスタイリングに注目だ!
タンクの両サイドに「アールズギア」「テクニカルスポーツ」のロゴ
大阪モーターサイクルショーで世界初披露され、鈴鹿8耐でデモランも予定されるホンダの注目コンセプトモデル「CB1000F コンセプト」を早くも大胆にカスタムした車両が登場した。
鈴鹿8耐の“8FES!”エリアにて展開中の“NANKAIビレッジ”にて、高性能エキゾーストマフラーで知られるアールズギアと、長年のレースで鍛えられたTSRがコラボレーションしたカスタマイズドマシン、「Neo-Classic Rebellion CB1000F Concept Model(ネオクラシック レベリオン CB1000F コンセプトモデル)」が8月2日(土)の朝から展示されたのだ。
1979年~1983年に生産されたホンダ「CB900F / CB750F」の名を継承するCB1000Fコンセプトだが、ホンダの次期フラッグシップネイキッドという立ち位置を担うだけに、単なる“F”のオマージュだけではない。そこにはTFTメーターやシングルショックのリヤサスペンションといった最新テクノロジーが仕込まれ、エンジンは最終型CBR1000RR(SC77)をベースとしたCB1000ホーネットの心臓部を共有することで高いポテンシャルを秘める。
とはいえ、このスタイリングが“あの頃”を知るライダーの感性を刺激するのもまた事実。となれば、「やっぱり砲弾型メーターが欲しい!」「シートカウルの絶妙な跳ね上げ角度を実現したい」といった欲が出てくるというもの。
なかでもカスタムが熱かったのは1990年代。根っからのライダーであるTSRの酒匂社長は旧車好きとしても知られているが、このCB1000Fなら自分が乗りたい“あの頃”のバイクが作れるかもしれない……そんな思いでアールズギアとのコラボカスタムを制作するに至ったという。
ハイパフォーマンス4気筒の、いわばジャパニーズカフェレーサー。「こんなのが欲しかった!」という方も多いのでは?
樋渡治さんが代表を務めるアールズギアは、高性能マフラーの製作で知られるだけでなく、現在はTSRとともに世界耐久選手権(EWC)を戦う盟友でもある。そんな2社によるコラボが熱くならないわけがない!
燃料タンクの左右には1990年代を思わせるカタカナで「アールズギア」と「テクニカルスポーツ(TSRの当時の呼び名)」の文字がロゴと一緒にあしらわれている。ペイントは大阪の「ペイントショップ ガンファイター」の手によるものだ。
Neo-Classic Rebellion CB1000F Concept Model
ネイキッド+セパハンカスタムの王道に遊び心を加えて
スタイリングイメージを大きく変えているのは砲弾メーター型のアルミ製メーターカバーだ。今回の展示では削り出しの試作品を装着しているというが、これだけでフロントマスクがグッと締まるから不思議だ。また、ホンダの砲弾型メーター(CB1300SFなど)は意外なほど整流効果があるのが特徴だが、このメーターカバーも同様の効果が期待できそうなカタチをしている。
立体的な造りで5インチTFTディスプレイを囲う。
これに合わせるように、ハンドルはクリップオンタイプとしてグリップ位置を下げ、行き過ぎていないスポーツ感を演出。トップブリッジとハンドルバーはともにアルミ削り出しだ。
左右のレバーはEWCで使用しているものをそのまま装着しており、風圧でブレーキレバーが押されることを避けるためのホールが“本物”をさりげなくアピール。これに最新トレンドであるカーボン製レバーガードを組み合わせ、仕上げにCB750Fの純正グリップ(今でも純正部品として買える!)を装着している。カーボンボディのバックミラーはマジカルレーシング製だ。
トップブリッジの上にクリップオンされたセパレートハンドル。スポーティだがきつくは感じないグリップ位置だ。
燃料タンクには前述のコラボレーションロゴのほか、CB750Fをオマージュしたグラフィックパターンに渋めのトリコロールを配色。HONDAのロゴも当時をイメージしたものだ。その下にあるH.A.R.T.のステッカーには、ホンダ公式の“ホンダ アクティブ ライダーズ ターミナル”ではなく、“ホンダ アッツイ ライダーズ タマシイ(Honma Attsui Rider’sTamashii”と記載しているあたりが遊び心を感じさせる。
極めつけは燃料タンクの上面のコーションラベルで、なんとCB750FやCBX400Fの時代の純正ラベルを貼付。今でも純正部品として360円で購入できるのだといい、時代ごとに異なるコーションラベルの文言の違いにまでこだわった、好き者にだけわかるマニアックなディテールだ。
いわゆるスペンサーカラーのグラフィックパターンを踏襲しながら、白ベースに渋めのトリコロールでフィニッシュ。
シートカウルは、CB1000Fコンセプトのプレーンな形から少しだけヤンチャな跳ね上げ角度を狙ったテール形状が特徴的。試作を重ねたというこだわりの、“行き過ぎていない”跳ね上げラインがCB-Fのシルエットにマッチしている。また、シートはライダー側をアンコ抜きし、パッセンジャー側は素材感の異なる表皮に張り替えてゴールドのCBロゴを加えている。これにより、前後席の段差が少し大きくなり、ストッパー付きシートのようなスポーティな見た目になっているのもポイントと言えそうだ。このあたりのパーツはプロトタイプとのこと。
フロントフェンダーはノーマルの基本形状を踏襲しつつ、CB750Fオマージュの整流フィン付きに。
ビッグラジエーターにブルーの彩り
エンジンまわりでは、CBR1000RRベースのポテンシャル開放を思わせる大型ラジエーターを採用し、開発中だという専用ウォーターホースやコアガードを装着。これらはDEGREEとTSRのコラボアイテムで、TSR専売品になる予定だという。
クラッチカバーやジェネレーターカバーに使用しているブルーのチタンボルトはベータチタニウム製をチョイス。クイックシフターはTSR製だ。
アールズギアの高品質マフラーと削り出しステップ
フルエキゾーストシステムはもちろんアールズギア製。跳ね上げタイプのメガホン形状をチタン素材げ形成し、美しい焼き色を付けているのもアールズギアならでは。これもネオクラシックを感じさせる形状で、1980~1990年代のカスタムシーンを現代の素材で印象的に解釈し直している。
焼け色が美しいチタン製フルエキゾースト。加工精度や溶接の美しさなど、ディテールを見るほどに感心するはず、
左右ステップも、ディテールと品質、加工精度にこだわるアールズギアならではの美しい削り出し。いかにも剛性の高そうなペダル類や、グリップのよさそうなローレットが刻まれたステップバー、そしてステップワークによるコントロールに欠かせないヒールプレートも当たり面の形状と剛性感を追求しているのは、ファクトリーレベルのレーシングライダーだった樋渡さんのこだわりが生かされていると感じずにいられない部分だ。
足まわりも一級品で固める
前後ホイールはBITO R&Dのマグネシウム鍛造、通称“マグ鍛”で、TSR専売のスペシャル品。リヤホイールのスプロケットまでセットとして統一感を持たせている。
ブレーキディスクはサンスターのホールなしタイプを選択し、往年のCB-Fイメージに合わせた。ブレーキホースはアクティブとTSRのコラボアイテムだ。
そしてフロントフォークは、スクーデリアオクムラによる内部パーツのチューニングと、インナーチューブのDLCコーティングで一段上の作動性を実現。右インナーチューブにのみストロークセンサーのリングが追加される。また、今回は間に合わなかったがリヤサスペンションも合わせてチューニングしていくつもりだという。
また、前後アクスルとピボットシャフトには、KOODとTSRが共同開発したクロモリ製シャフトを使用している。
キャリパーはノーマル。インナーチューブのDLCコートとアクティブ×TSRのブレーキホース、サンスターのディスク、そしてビトーR&Dのマグ鍛ホイール。アクスルシャフトはKOODとのコラボによるクロモリ製だ。
細かいところでは、タイヤがCB1000FコンセプトのバトラックスハイパースポーツS22から、最新世代のS23に換装されているのも見逃せない。
まとめ
ホンダはCB1000Fをあくまでもコンセプトモデルと言っているが、鈴鹿8耐では灯火類を装備した姿で公開されていることから正式発表は時間の問題と言える。そんなCB1000Fを“あの時代”をオマージュしたカスタマイズドマシンに仕立てたアールズギア×TSRのコラボレーションは、市販車の登場とその後の熱いカスタムシーンを想像させるものだった。
1980年代のオリジンを追求するのがCB-Fの王道かもしれないが、CB1000スーパーフォアがカスタムシーンをけん引し、鈴鹿8耐への出場までしていた1990年代の熱さもまた、CB1000Fのもうひとつの王道と言えるのかもしれない。
車名ロゴにも“あの頃”感アリ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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