
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也/YM ARCHVES ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
シリーズ累計で約3万台を生産したW1の系譜
約9年に及んだ販売期間の中で、W1シリーズの人気が最高潮に達したのは、ペダルの配置が左:シフト/右:リヤブレーキに改められたW1SA。それに次ぐのはツインキャブレターを導入したW1Sだが、750RS/Z2の兄弟車的な位置づけで販売された最終型の650RS/W3も、3年間で4330台を販売する好セールスを記録している。
1965 650-W1:K1/K2の構成を引き継ぐ初代W1
W1S以降とは異なる初代W1の特徴は、スタミナK1/K2と同様のシングルキャブレター/モナカ合わせマフラー、表皮がプレーンなシート、ヘッドライトボディ内臓式の速度/回転計など。なお1965年の東京モーターショー出展時の車名はX650だった。
1968 650-W1スペシャル(W1S):パワーアップを実現
ツインキャブレターの導入や吸気バルブの拡大(φ36→37.5mm)によって、W1Sの最高出力は47→53psに向上。後期型では北米仕様のW2SSに準じる形で、前後フェンダー+ステーとシートが刷新された。メーターはレンズの外周にメッキリングを配置。
1971 650-W1SA:現代的なペダル配置で支持層を拡大
W1SAの最大のトピックは、BSAから引き継いだ右:シフト/左:リヤブレーキというペダルの配置を現代的な構成に改め、従来はトップニュートラル/逆チェンジだったシフトパターンを、1ダウン3アップ式に変更したこと。後期型はマフラー容量を拡大。
1973 650-RSスペシャル(W3):同時代のZシリーズと部品を共有化
シリーズ最終型となったW3は、足まわりや電装系部品をZシリーズと共有化。ただし、フロントのダブルディスクは当時のZシリーズより豪華な装備だった。VM28キャブレターはティクラーを省略。乾燥重量はW1~W1SA+16kgとなる215kg。
北米仕様“SS”&“W2”
北米仕様のW1シリーズは、日本とは異なる車名・構成で展開。SSのキャブトンマフラーはショートタイプで、気化器は、W1SS:シングル、W2SS:ツイン。スクランブラーのTTは、日本では販売されなかった。
カワサキの主力機種と並列2気筒車の変遷
海外市場に進出するなら、250→500→750ccという段階を踏むのが、1960~1970年代初頭の日本車のセオリー。当時のカワサキはこれを破ったわけだが、W1シリーズは日本での好調なセールスとはうらはらにあまり受け入れられなかった。そのため、以後はセオリーを意識した展開を行った。
なお主力機種の高性能化を推し進める一方で、1970年代中盤の同社はW1シリーズの後継となるZ750Tを開発。ただしこのモデルを最後に、カワサキ製バーチカルツインの歴史はいったん途絶えることとなった。
主力車の系譜
1966 250A1:250cc並列2気筒
北米進出モデル第2弾となったA1のコンセプトは、世界最速の250cc。最高出力は当時のクラストップとなる31ps。
1969 500-SSマッハIII:500cc並列3気筒
A1の発展型として生まれた2スト並列3気筒の500SSは、欧米の大排気量スポーツバイクを凌駕する60psを発揮。
1973 900スーパー4(Z1):500cc並列4気筒
同時代のライバル勢をイッキに突き放す、圧倒的な動力性能を獲得したカワサキ初の並列4気筒車。最高出力は82ps。
パラツイン後継
1976 Z750T
Z1シリーズで培った技術を転用して生まれた、W1シリーズの後継車。DOHCツインはW1S~W3+1psとなる54ps。
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