
速く走りたいからレースを始め、 バイクを速くする術を考える。若いライダーを育てるにも、 安全で速いバイクが必要。そんな思いを詰め込んでモリワキはレーサーを作り続けた。見た者の心を熱くする、 珠玉のマシンを一堂に掲載!
●文:伊藤康司(ヤングマシン編集部) ●写真協力:モリワキエンジニアリング
- 1 ME125W[1977]:オリジナルフレームの原点
- 2 MONSTER[1979]:Zエンジンの鉄&アルミフレームレーサー
- 3 ZERO-X1[1983]:超激戦のTT-F3を制したアルミフレーム
- 4 GSX1000[1983]:ヨシムラ×モリワキの親子合作マシン
- 5 ZERO-X7[1984]:750cc化したTT-F1で猛威を振るう!
- 6 ZERO-Z250/Z400[1985]:アルミフレームのあくなき追求
- 7 ZERO-Z750[1987]:コンストラクターの範疇を超えた実験機
- 8 ZERO-ZX7[1988]:新作フレームに最後の2本ショック
- 9 ZERO-VX7[1990]:モリワキフレームのRC30
- 10 MH80R[1992]:誰もが腕を磨けるロードレース入門機
- 11 MTM-1[2001]:オリジナルフレームでXフォーミュラに参戦
- 12 MD211VF[2003]:MotoGPを駆けたモリワキドリーム
- 13 MD250 series[2006]:モータースポーツ拡大を支えるマシン
- 14 MD600[2009]:Moto2&J-GP2で好成績を収める
ME125W[1977]:オリジナルフレームの原点
レースが2ストローク全盛の時代に、ホンダCB125JXの空冷4ストローク単気筒SOHCエンジンを大胆にチューン。自然循環式のオリジナル水冷シリンダーを製作し、14ps→24.6psにパワーアップ。フレームもSTDのダイヤモンドからモリワキオリジナルのダブルクレードルに。1977年セニアクラス4位を獲得した後、新たに2台制作して森脇護氏と佐藤健正氏がオーストラリアのレースに参戦した。
【MORIWAKI ME125W】
【修行中の若武者の姿も】ライダーは1976年にモリワキに入社した佐藤健正氏(現オーヴァーレーシングプロジェクツ会長)が務め、セニアクラスで活躍!
MONSTER[1979]:Zエンジンの鉄&アルミフレームレーサー
カワサキZ系エンジンのチューンに長けたモリワキは、そのポテンシャルを存分に生かすため、1978年の鈴鹿8耐に走らせたZ650レーサーを原型とするオリジナルフレームの開発に着手。これが1979年に完成した鉄フレームの初代モンスターで、STDのZ1より80kg近くも軽く、約20台をコンプリート販売。これをベースに1981年にアルミフレーム(軽量化が目的でディメンションはほぼ同じ)のモンスターが誕生する。
【MORIWAKI MONSTER】
【1981年にはアルミフレームに】カワサキZエンジンを搭載するモリワキモ ンスターは、1979〜80年の鉄フレーム車(上)と、1981年以降のアルミフレーム車(左)が存在。最終年となる1983年にはアルミ角パイプがリブ付きとなるなど進化を続けた。エンジンは1981年まではZ1000系、それ以降はZ1000J系を搭載する。
ZERO-X1[1983]:超激戦のTT-F3を制したアルミフレーム
モンスター譲りの鉄フレーム車・ZEROを経て発展し、アルミフレーム(アルミの角パイプはマルチリブタイプ)を採用したTT-F3レーサー。軽さを追求したためフロントブレーキはシングルディスク。エンジンはホンダCBX400Fで、CRキャブレターを装着した仕様もあり、最高出力は65ps以上を発揮。1983年の鈴鹿4時間耐久レースで宮城/福本組が優勝した。#2は宮城光が1983年の全日本TT-F3で使用したマシンで、ノービスクラスでチャンピオンを獲得。
【MORIWAKI ZERO-X1】
GSX1000[1983]:ヨシムラ×モリワキの親子合作マシン
TT-F1のレギュレーションが1000cc最後となった1983年の鈴鹿8時間耐久レースに、ヨシムラがチューンしたスズキGSX1000Sカタナ用のDOHC4バルブエンジン(耐久仕様で150ps)を、モリワキの手によるアルミフレームに搭載したマシンが参戦。予選ではグレーム・クロスビー/ロブ・フィリス組がポールポジションを獲得(決勝レースはエンジントラブルで13位)。写真はスプリント用のカウルで、8耐車は角型ヘッドライトを装備。
【YOSHIMURA&MORIWAKI GSX1000】
ZERO-X7[1984]:750cc化したTT-F1で猛威を振るう!
1984年からの750cc化に合わせ、モンスター型アルミフレームにホンダCBX750F用の空冷4気筒エンジン(125ps)を搭載したTT-F1レーサー。400cc並みの車格がコンセプトの小型軽量車で、1984年の初戦鈴鹿ではフロントがシングルディスクだった(後にダブルディスクに変更)。リヤサスペンションも時代的にはモノショックがメジャー化していたが、2本ショックにこだわり、1985年にはスイングアーム貫通式を投入するなど独自の進化を続けた。1984年の全日本TT-F1では八代俊二が国際A級、宮城光が国際B級でチャンピオンを獲得している。
【MORIWAKI ZERO-X7】
ZERO-Z250/Z400[1985]:アルミフレームのあくなき追求
低重心化を狙って開発。メインフレームはアルミ板と削り出しの複合構造で、後半はマルチリブ材。スイングアーム貫通の2本ショックも採用。当初はホンダRS250Rの2ストロークエンジンを搭載していたZ250は1987年からワークスNSR250エンジンを搭載する(Z400は4ストロークのCBR400Rエンジンを搭載)。データ取りを行って、その後のF3/F1マシンへと展開した。
【MORIWAKI ZERO-Z250】
ZERO-Z750[1987]:コンストラクターの範疇を超えた実験機
Z型フレームの集大成といえるZERO-Z750は、ホンダCBR750スーパーエアロの水冷直列4気筒エンジンを搭載。フラットバルブのキャブレターを装備し、最高出力は130ps。鈴鹿8耐参戦時はフレームが熱を帯びて剛性が低下するといった問題もあったという。
【MORIWAKI ZERO-Z750】
ZERO-ZX7[1988]:新作フレームに最後の2本ショック
独創的なZフレームに替わって、新作のダブルクレードルフレームにCBR750スーパーエアロのエンジン(最高出力134ps)を搭載。バックボーン部分はツインスパーに近い配置と太さ。リヤは2本ショックのアンダーブラケット方式。1988〜89年の全日本や鈴鹿8耐に参戦。
【MORIWAKI ZERO-ZX7】
ZERO-VX7[1990]:モリワキフレームのRC30
ホンダVFR750R(RC30)のV4エンジンを搭載するTT-F1マシン。スイングアームは片持ちではなくスタビライザー付きの両持ち式で、モリワキ初のモノショックを採用。レースキットには倒立式のフロントフォークも用意された。
【MORIWAKI ZERO-VX7】
MH80R[1992]:誰もが腕を磨けるロードレース入門機
ホンダNS-1の車体にモトクロッサー・CR80の2ストロークエンジンを搭載したレース入門車。ライディングに試行錯誤することでスキルが身に着くよう、あえて性能を低く設定。できるだけ純正パーツを使用して価格を抑え、39万5000円で販売し、760台を製作した。
【MORIWAKI MH80R】
MTM-1[2001]:オリジナルフレームでXフォーミュラに参戦
フレーム変更が可能な鈴鹿8耐のXフォーミュラに参戦するために製作。オリジナルのクロームモリブデン鋼管フレームにホンダVTR1000FのV型2気筒エンジンを搭載。2000年の8耐はクラス7位(総合17位)。このMTM-1で培ったフレーム技術が後のMotoGPマシン・MD211VFに繋がる。
【MORIWAKI MTM-1】
MD211VF[2003]:MotoGPを駆けたモリワキドリーム
世界GPの4ストローク化(MotoGP)を転機に、モリワキは参戦プロジェクトを立ち上げ。HRC貸与のRC211V用のV型5気筒(最高出力240ps以上)を、独自のクロモリ鋼管フレームに搭載。2003〜2004年の間に9戦にスポット参戦、2004年の日本GPでは11位のリザルトを残している(写真は2005年式)。車名のMDは「モリワキドリーム」の略。
【MORIWAKI MD211VF】
MD250 series[2006]:モータースポーツ拡大を支えるマシン
全日本のGP-MONOクラスに参戦可能な、オリジナルのアルミフレームにモトクロッサーの4ストローク単気筒(ホンダCRF250X/Rのほか、他メーカーのエンジンも搭載可能)を搭載するマシン。MH80Rのコンセプトを引き継ぎ、低コストで長く使えることを重視した。2008年にはシリーズチャンピオンを獲得。
【MORIWAKI MD250】
MD600[2009]:Moto2&J-GP2で好成績を収める
4ストローク600ccのMoto2マシン(エンジンはホンダCBR600RR)として2008年に開発に着手し、GPチームに供給。2010年はレギュラー参戦の5チーム/7ライダーが乗り、グレシーニ・レーシングのトニ・エリアスがチャンピオンに。2014年は全日本J-GP2で高橋裕紀がチャンピオン獲得。
【MORIWAKI MD600】
Moto2の初代チャンピオンマシン!
2ストローク250ccに代わるクラスとして2010年にスタートしたMoto2。その開幕初年度にモリワキMD600を駆るT.エリアスはチャンピオンを獲得している。
「わからないコトこそ面白い」と語る森脇護氏の考えこそが、モリワキの革新的なもの作りの原動力。オリジナルフレームに始まりMDシリーズまで、その心が絶え間なく続いている。
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