
ETCが普及し初めて久しいものの、標準装備車を除けば取り付けは任意のまま。でも、2030年までにほぼすべての高速道路料金所がETC専用化になる計画があるという話があるのも確か。加えてETCには、便利なだけでなく、じつは経済的なメリットも大きいかったりする。それはもう「まだ取り付けを迷っている方はいますぐ付けたほうがいいぞ!」ってぐらいいいことづくめ。そこでこの記事では、国が推し進めるETC専用化計画の現状と進捗状況を整理しつつ、ETCを装着するメリットと注意点について詳しく解説していく。
●文:ヤングマシン編集部(山崎陸)
「ETC専用化等のロードマップ」の現状
2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は下記のように、段階的な計画となっている。
- 都市部(圏央道、東海環状、京奈和道とそれらの内側、京阪神地):2025年度までにETC専用化を完了
- 地方部:2030年までに全国ほぼすべてでETC専用化を完了
ETC化の狙いは混雑の緩和、将来的な管理コストの削減、料金収受員の少人化など。交通量が多く混雑しやすい都市部から優先的にETC専用化を進め、その後、地方部へと展開していく方針だ。
気になるのは、「本当にこの計画どおりに進んでいるの?」といったところ。実はこの計画、単なる将来の構想ではない。着々とETC専用料金所が増えているのだ。
首都高速道路のETC専用化状況
たとえば都市部の代表ともいえる、首都高速をピックアップしてみよう。首都高速道路株式会社が公開した「首都高速道路におけるETC専用化の取組み」によると、2025年度末までに新たに55か所の料金所をETC専用化し、合計90か所となる予定となっている。首都高速の料金所は全179か所なので、およそ50%がETC専用になってしまうのだ。
地方部は一例として、NEXCO西日本の中国地方を例に見てみる。2024年12月時点で、約100か所あるすべての料金所のうち、スマートICを入れて21か所がETC専用。2030年までに全料金所のETC化をする計画で、2024年末でも約20%がETC専用となっているというわけだ。
全体としていえるのは、現時点ではロードマップから多少遅れているものの、ETC専用化が着々と進められているといったところだ。これはそう遠くない未来に、ETCの装着が必須となると考えてもいいのではないか。とくに都市部を走る機会が多いライダーは、早めのETC装着が必須といえそうだ。
ライダーにとってうれしいETCのメリット
さらにいえば、バイクへのETC装着は現時点でもさまざまなメリットを享受できる。実際に私がETCを付けてよかったなと感じたメリットは下記の3つだ。
1.高速道路の乗り降りがスムーズ
一番わかりやすく実感できるETCを付けるメリットは、高速道路の乗り降りがスムーズなことだろう。とくに次の4点がありがたい。
- グローブを脱いで、財布から小銭を取り出す手間がなくなる
- 悪天候時の雨や風の中での支払い作業から解放される
- 料金所で停車する必要がなくなる
- ETC装着済みのツーリング仲間を待たせることがなくなる
私は頻繁に高速道路に乗る機会はないし、通常レーンに停車してお金を払う時間も1分程度と大きな時間の節約というほどではないのも事実。それでも、この少しの時間が大きな違いになるのだ。
2.割引制度/ツーリングプランの活用で経済的にもお得
ETC装着車だけが使える割引制度やお得なツーリングプランがある。それぞれの特色を紹介しよう。なお、複数の割引が積み重なることはなく、還元率が一番高いものが自動的に適用されることに注意していただきたい。
ツーリングにはあまり恩恵がないかも、平日朝夕割引
平日朝夕割引は、1ヶ月で平日の通勤退勤時間帯に5回以上対象の高速道路に乗ると、料金の30%または50%が還元されるというもの。5回以上乗る必要がありツーリング目的では恩恵を受けにくい割引なので、あまり気にしなくていいだろう。
意識して使いたい休日割引と深夜割引
休日割引、深夜割引は土日祝日または0〜4時の深夜に高速道路を使うと30%割引になるというもの。とくに休日割引はツーリング時に恩恵を受けやすい。高速道路は土日祝が安いと覚えておこう!
ライダー大注目、二輪車限定のツーリングプランと二輪車限定割引
そして、とくに注目すべき割引が二輪車向けのツーリングプランと二輪車限定割引だ。ツーリングプランは特定のエリア内を定額で乗り放題になるプラン。たとえばNEXCO東日本の「首都圏 東名・中央道コースワイド」は3,900円で連続する2日間、静岡の焼津や藤枝から長野の安曇野、神奈川の藤沢、東京の八王子など首都圏付近のエリアが乗り降りし放題になるものだ。八王子から安曇野まで行くとETC料金片道4,690円と片道だけでもツーリングプランのほうが安い。さらにツーリングプランは乗り降りし放題!フラっと気軽に高速道路を降りられる。金銭的にも精神的にもお得といえるだろう。
二輪車限定割引は、土日祝日限定で各IC間の1回の走行距離が80kmを越えるときに37.5%割引になるというもの。休日深夜割引きの30%よりも高い割引率を誇っている。
ツーリングプランは首都圏付近限定、中京圏限定などエリアが決まっているが、二輪車限定割引は極端なことをいうと青森から鹿児島まで走っても適当される。エリアを決めて周遊するときはツーリングプラン、とにかく遠くに行くときは二輪車限定割引と覚えておこう。
ただし、ツーリングプランと二輪車限定割引はNEXCOのサイトから事前申し込みが必須。両方同時に申し込みもできるが、ツーリングプランに含まれる高速道路を少しでも走ると、ツーリングプランが適用される。考えなしに申し込むと損をする可能性もあるから、注意しておこう。
3.ETC取り付けキャンペーンを利用できる
NEXCO各社はETC車載器購入助成キャンペーンとして、期間と台数限定で車載器取り付け設置費用の最大1万円を割引してくれる。2025年4月時点ではまだ2025年版の発表はないものの、ここ数年は毎年実施しているので続報を待とう。
ETCを取り付けるデメリットやハードル
一方で、バイクへのETC装着には車と比較していくつかの課題もある。私が感じたデメリットは、次の2つだ。
1.高価なバイク用ETC車載器が必要
二輪車用ETC車載器は、四輪車用と比較して価格が高い。
- 四輪車用ETC車載器:5000円~1万円程度
- バイク用ETC車載器:2万円~2万5000円程度
バイク用ETC車載器が防水・防塵性能や振動対策など、バイク特有の走行環境に対応しなけらばならないためだ。さらに、取り付け工賃も考慮すると総額5万円程度になる。
2.DIYでの取り付け難しい
バイクへのETC装着は、下記の理由でDIYのハードルが高い。
- 防水処理を適切に行う必要がある
- 配線の取り回しが車体デザインにより制限される
- 取り付け位置や視認性の確保が難しい車種もある
- セットアップは登録店でしかできない
実際、私も車には自分でETCを取り付けたが、愛車のホンダCB400SFへの取り付けはバイクショップに全部お任せした。どこにETCの本体を設置すればいいか分からず、自分で正しく装着する自信がなかったためだ。きちんと動作せずETCゲートを通れないリスクを考えると、プロに依頼しておいたほうが無難といえるだろう。
ETC必須化の流れに乗って、お得にツーリングを楽しもう!
「高速道路で乗る機会も少ないし、取り付けも高額だし」と取り付けに二の足を踏んでいる方も多いことだろう。しかし、いまや高速走行にETCはほぼ必須。加えて最初のハードルさえ乗り越えてしまえば、便利で経済的な恩恵を受けられるし、面倒なこともなく高速ツーリングを楽しめるのだ。2025年の購入助成キャンペーンが来たら、取り付けを検討してみよう!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ツーリング)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
「いつか一緒に走ろう」の約束から8年が経った レースの取材をしていると、大分県のオートポリス・サーキットに年に3度ほど訪れる。このサーキットは大分県に所在しているが、熊本側から向かう方が便利な立地だ。[…]
世界初の360度カメラを生み出したメーカーの現行モデル ツーリング時のスピード感溢れる風景や、ガレージでのカスタム作業の俯瞰映像など、SNS全盛の現代において、臨場感あふれる記録は、単なる思い出以上の[…]
フィジカルの土台作りから本気の肉体改造まで ホームフィットネス製品を展開し、日本においてトップクラスのEC販売実績を誇るステディジャパン株式会社(STEADY)が、年末を達成感で締めくくり、「なりたい[…]
神奈川の奥座敷・山北町の秘境を駆け歩く 秘境という定義は本当に難しい。難しいというか、奥深い。関東平野の西端・神奈川県にも秘境と呼ばれる場所は多い。身近なところでいうと、湘南平や足柄山地、世界的に知ら[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
元々はブレーキ液の飛散を防ぐため フロントブレーキのマスターシリンダーのカップに巻いている、タオル地の“リストバンド”みたいなカバー。1980年代後半にレプリカモデルにフルードカップ別体式のマスターシ[…]
人気記事ランキング(全体)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
寒暖差が大きくても着替えずに対応できる! ワークマンのヒーターウエア『WindCore(ウインドコア)』シリーズは、電熱ヒーターを内蔵する防寒アイテム。別売りのバッテリー(4900円)は必要だが、もの[…]
お待たせしました経過報告です 前回のラバゲイン記事、おかげさまで大反響をいただきました。ありがとうございます! そして同時に、「続編が知りたい!」「その後どうなったの?」「どれぐらい持つの?」「いつま[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
BLESS CREATIONのカーボン外装をまとう カーボン外装メーカー・ブレスクリエイションの高い質感と造形の美しさのX350専用外装に惚れ、編集部号にも装着することにした。フロントフェンダー/ラジ[…]
最新の投稿記事(全体)
戦闘力を高めるヘッドギア「ダインギア ヘッドアーマー」 クロスカブ110の個性をさらに際立たせ、カスタムの方向性を決定づけるほどの高いデザイン性を持つパーツが登場した。それがダイバディプロダクションが[…]
粘り強い100mmボアビッグシングルと23Lタンク KLR650の心臓部は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンだ。排気量は652ccで、ボア径はなんと100mmにも達する超ビッグシングルと[…]
きっかけは編集部内でのたわいのない会話から 「ところで、バイクってパーキングメーターに停めていいの?」 「バイクが停まっているところは見たことがないなぁ。ってことはダメなんじゃない?」 私用はもちろん[…]
ワールド経験者と全日本ホープが加入! FIM世界耐久選手権(EWC)を戦っているTeam Étoile(チーム・エトワール)が2026年のライダーラインナップを12月12日(金)に発表しました。 2[…]
まさかのAMTをクラス初採用 BENDAやヒョースンなど海外メーカーがV型2気筒モデルを投入する一方、日本車ではホンダの単気筒・レブル250が孤高の地位を築く軽二輪(250cc)クルーザーカテゴリー。[…]
- 1
- 2












































