[高校生のバイク問題] 三ない運動を廃止し、交通安全講習会を始めて6年。埼玉県の目的と思いとは?

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

2019年、三ない運動から早期交通安全教育に転換した埼玉県は、以降、全県的に「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」を開催している。6年目となる2024年度の第1回目・6月16日に秩父地域で開催された3年生向けの講習会を取材した。


●文:田中淳麿(ヤングマシン編集部)

自分と他人の命を守ること

コロナ禍開けの2023年は県内の二輪車交通事故が2331件と微増したが、そのような状況でも県内高校生の二輪車事故は減少傾向にあり、2023年は2022年に続いて死亡事故が発生しなかった。

2024年は関係各所によるモニタリング組織「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する指導検討委員会」が行う検証も対面で実施され、講習会の実施内容は2023年同様とし、大きな変更は行われないことになった。

開講式では、主催の埼玉県教育委員会から参加生徒に向けて、講習の目的は3つあると説明された。

  1. 交通社会の一員としての自覚を持ってもらうこと
  2. より安全にバイクの運転をしてもらうこと
  3. いざという時に人を助けられる知識や技能を身につけてもらうこと

そして何より大切なこととして、「自分の命を守ると同時に他人の命を守ること」が伝えられた。

講習内容はさまざまだが、バイクに乗る高校生に向けて県教委が確実に伝えたいことだ。首都圏で最後まで三ない運動を展開していた埼玉県が、「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会(2017〜2018年)」での白熱した議論を経て、三ない運動を廃止、生涯にわたって交通事故に遭わないための交通安全教育を実践している。

そのために、本講習では自車両持ち込みによる運転実技講習/危険予測トレーニングを含めた座学講習/AEDの使い方や心肺蘇生法などの応急救護も行われている。

一方で、課題として2023年からも挙げられているのが、参加率の向上について。当日も75名が参加予定のところ46名(約6割)に留まっていた。

強制参加ではないため、参加率の向上は簡単ではない。座学の一部を各校の授業等で取り扱うなど、本講習の内容を少しでも届けることを検討してもよいのかもしれない。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習
埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

【右直事故と出会い頭事故防止に必要な、一時停止と左右確認】実技講習のコース内には、右直事故と出会い頭事故を想定した場面が設けられている。見通しが悪い場合は、一時停止して左右を確認してから発進する。地味だが事故にあわないために体で覚えるべきテクニック。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

低速バランスは、一本橋ではなく遅乗りで体験した。2m×5mの枠の中で、より長く乗っていられるようにバランスを取る。参加者同士でタイムを競って、上位者にはプレゼントがもらえるというゲーミフィケーションも取り入れている。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

埼玉県警の白バイ隊員による安全装具の説明と実演。ヘルメットのあごひもをしっかり締めることやプロテクター装着の重要性のほか、隊員がふだん着用しているエアバッグベストの作動実演も行った。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

講習会場となった秩父自動車学校の職員により行われた応急救護。ビデオの視聴のほか、AED(自動体外式除細動器)の説明と実演、人形を使っての心肺蘇生法(心臓マッサージ)を体験した。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

埼玉県警察本部交通部交通総務課による座学「二輪車安全運転講習」では、県内交通事故の現況や事故を起こした際の責任(刑事的/民事的/行政的)、特定原付の注意点などを教えている。

埼玉県・高校生の自動二輪車等の交通安全講習

右に同じく、埼玉県警察本部による動画危険予測トレーニングの様子。1人称のライダー視点による運転動画の中に潜む危険を発見/共有することで、安全確認と予測運転の重要性を学んだ。

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