AT限定普通二輪免許で運転できて、高速道路が走れて車検も不要。そんな軽二輪(126~250cc)クラスのスクーターを紹介しよう。一般道で交通の流れをリードでき、高速道路の120km/h区間も問題なく走れる。原付二種に近いサイズ感のものもあって選択肢は多い。
●文:ヤングマシン編集部
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる
250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。
バイクの免許は全部で7種類あって、原付(~50cc)、AT限定を含む小型限定普通二輪(~125cc)は今回のカテゴリーを運転することができない。軽二輪スクーター対応の免許はAT限定を含む普通二輪(~400cc)および大型二輪(排気量無制限)だ。原付~普通二輪免許は16歳から取得でき、大型二輪免許は18歳にならないと取得不可となっている。
AT限定または限定なしの普通二輪免許を取得するには、指定教習所を利用する or 運転免許試験場での一発試験の2つの方法があり、教習所を利用する場合は技能教習と学科教習を受け、卒業検定合格後に運転免許試験場で適性試験と学科試験(技能試験は免除)を受けて合格すれば、晴れて免許が交付される。
ちなみに、小型限定普通二輪免許を持っていれば学科教習が免除され、普通自動車免許を持っている場合は学科教習が1時限のみに短縮される。
教習所の費用は保有している免許によって変わり、免許なしか原付免許保持者の場合は15万円前後(AT限定)/17万円前後(限定なし)、普通自動車免許保持者の場合は5~7万円程度安くなり、小型限定普通二輪免許保持者は10万円前後安く済ませることができる。これらの価格はおおよその目安であり、地域によっても異なる。
試験場での一発試験(ダイレクト受験とも言う)では、お住まいの都道府県にある運転免許センター(運転免許試験場)で適性検査を受けた後に学科試験、技能試験に合格し、取得時講習と応急救護講習を受ければ免許交付となる。ちなみに、小型限定普通二輪免許または普通自動車免許を持っていれば学科試験は免除となる。
免許センターにおける免許の申請手続きにかかる費用は、教習所卒業者で3800円(受験料/交付手数料)、一発試験の場合は2万2300円(受験料/試験車使用料/交付手数料/取得時講習料/応急救護講習料)だが、不合格の場合は再び受験料と試験車使用料がかかる。
軽二輪スクーターのメリットは?
積載力と利便性は抜群
上記のようにAT限定免許でも運転できるほか、小回りの利く車体や交通の流れをリードするのに必要十分なパワーも持つ。シート下にはヘルメットなどを収納できるスペース、フロントにもペットボトルなどが入る小物入れがある。追加装備なしでもバッグなどを収納して走ることができ、車両から離れる際にもヘルメットなどを収納しておけるので安心だ。
排気量バリエーションとサイズの選択肢が豊富
125cc原付二種モデルと車体を共有する150~160cc前後のものと250ccフルサイズに大別され、一部に中間的な200ccも存在する。コンパクトで置き場所の自由度が高い前者は、一方で高速道路の走行では余裕があまりない面も。後者は余裕があるぶん車格も大きくなる。
維持費が安い
原付二種ほどではないが車両価格は安く、燃費もそこそこ以上にいい。車検がないので、定期的に整備していても車検にともなう費用は節約できる。重量税は届け出時にのみ4900円払えばよく、軽自動車税は1年毎に3600円。自賠責保険料は、12か月で7100円(離島と沖縄県を除く)と、251cc以上の小型二輪自動車(7010円)よりわずかに高いが、その他で十分に帳消しにできるはず。
高速道路を走れる
すぐ下の原付二種(51~125cc)クラスは高速道路を走れないので、高速道路に乗れる最小のクラスが軽二輪ということに。もちろんタンデムも可能で、法規的に言えばできることは大型バイクとなんら変わりない。
軽二輪スクーターのデメリットは?
必要十分だがパワフルではない
高速道路も走れるが、400ccや大型バイクほど余裕があるわけではない。節度を持って走り、追い越し車線の利用は最小限にしたほうが無難だろう。100km/h巡行中でも登り坂ではきっちりスロットルを開け足さないと速度低下しがち。合法的にエンジンをブン回せる楽しみは他にないとも言えるが……。
150~160ccクラスは走行安定性や乗り心地もそこそこ
原付二種と車体を共有することも多い150~160ccクラスは、軽量コンパクトかつ短めのホイールベースなどから機敏に走れる反面、乗り心地や直進安定性では不利な面も。新東名などの120km/h走行が可能な区間でも、ずっと全開にし続けるとちょっと疲れるかも。
車検がないのでメンテナンスをサボリがち
車検がないからといって、定期的なメンテナンスをしなくてもいいと勘違いしてはいけない。油断して酷い状態になっているライダーもたまにいるので、日常典型に加えてタイヤとブレーキ、チェーンぐらいは定期的なメンテナンスを習慣にしておこう。
2024年、軽二輪スクーターはどんな状況?
かつて隆盛をきわめたビッグスクーター(フルサイズ250cc)は、ホンダとヤマハがそれぞれ1機種をラインナップするのみ。とはいえ、往年の電子制御トランスミッションのようなギミックを省略しつつもスポーティな車体や利便性は今も支持されている。
一方でメインストリームと言えるほどに育ってきたのが150~160ccのスクーター群だ。125cc原付二種スクーターと車体を共有するモデルが多く、使い勝手やデザイン性などバリエーションも豊富。特にヤマハは3輪のトリシティ155もラインナップするなど、このクラスで最も多い4機種を揃えている。ホンダは3機種だ。
スズキはバーグマン200をラインナップするが現在は生産終了となっており、店頭在庫を残すのみだ。
【2024年7月版】150~250cc軽二輪スクーター 国産おすすめ8選!
ホンダ PCX160
軽二輪スクーターでは販売台数1位、モーターサイクルタイプを含めた軽二輪カテゴリーでも絶対王者のレブル250に次ぐ2位となっている売れっ子スクーター。原付二種のベストセラースクーター・PCX(125)の兄弟モデルでもあり、利便性や走りのよさは折り紙付きだ。
2021年にフルモデルチェンジでPCX150→PCX160となり、前輪のみ作動するシングルチャンネルABSやホンダセレクタブルトルクコントロール(いわゆるトラコン)を採用するなど、走りの性能を高めたほか、フレームまわりも従来よりモーターサイクルライクな挙動を実現する完全新設計に。2023年1月には水冷4バルブ単気筒エンジン「eSP+(イーエスピープラス)」を令和2年排出ガス規制に適合するマイナーチェンジを受けた。
主要諸元■全長1935 全幅740 全高1105 軸距1315 シート高764(各mm) 車重133kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 156cc 15.8ps/8500rpm 1.5kg-m/6500rpm 無段変速 燃料タンク容量8.1L■タイヤサイズF=110/70-14 R=130/70-13 ●色:茶、黒、白、灰 ●価格:41万2500円 ●発売日:2023年1月26日
ホンダ ADV160
先代のADV150からエンジン&車体を一新するフルモデルチェンジを受け、令和2年排出ガス規制にも適合して2023年1月に発売された。新設計の水冷4バルブ『eSP+』エンジンやホンダセレクタブルトルクコントロール(トラコンに相当)、新設計となったフレームも基本はPCX160のものを踏襲しながら、アドベンチャーテイストを加味したSUVスクーターに仕立てられている。
スマートキーシステムやテーパードハンドルバー、2段階調整式スクリーン、容量29Lのシート下ラゲッジボックス、USBタイプA充電ポート付きのフロントインナーボックス(容量2L)など装備も充実。LCDメーターはタコメーターや外気温計なども表示可能だ。前モデルのADV150からは各種装備の追加&グレードアップのほか、最低地上高165mmをキープしつつシート高795→780mmとして足着き性を向上するなど多岐にわたる利便性の追求がなされた。ABSやエマージェンシーストップシグナルも標準装備する。
2023年12月14日には新色パールボスポラスブルーを追加設定した2024年モデルが発売された。
主要諸元■全長1950 全幅760 全高1195 軸距1325 シート高780(各mm) 車重136kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 156cc 16ps/8500rpm 1.5kg-m/6500rpm 無段変速 燃料タンク容量8.1L■タイヤサイズF=110/80-14 R=130/70-13 ●色:青、赤、灰、黒 ●価格:47万3000円 ●発売日:2023年12月14日
ヤマハ XMAX
250ccフルサイズのスポーティなスクーター。2023年のモデルチェンジで「X」モチーフのLEDヘッドライト&ポジションランプ、テールランプによる新スタイリングを採用し、ディテールの質感も向上。スマートフォン連携機能と2画面構成の新型メーター(4.2インチカラーTFTインフォテイメントディスプレイ/3.2インチLCDスピードメーター)を採用したことにより、利便性も追求した。ブレーキタッチの向上やシートの質感向上なども見逃せない。
また、モーターサイクルと同様にアッパーブラケットを持つフロントフォーク締結方式を採用し、スクーターの既成概念を超えた走りのよさを実現。最新排出ガス規制に適合したブルーコアエンジンにはTCS(トラクションコントロールシステム)が組み合わされ、TMAX560を長兄とするMAXシリーズに恥じないスポーティなスクーターに仕上がっている。スマートフォン連携機能を持つTFTインフォテイメントディスプレイは、スマホでガーミンのアプリを利用することでナビ画面を表示することも可能だ。
2024年5月9日には新カラーバリエーションとした2024年モデルを発売。
主要諸元■全長2180 全幅795 全高1410-1460 軸距1540 シート高795(各mm) 車重181kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 249cc 23ps/7000rpm 2.4kg-m/5500rpm 無段変速 燃料タンク容量13L■タイヤサイズF=120/70-15 R=140/70-14 ●色:艶消し赤味灰、艶消し灰、黒、灰 ●価格:71万5000円 ●発売日:2024年5月9日
ホンダ フォルツァ
2022年12月22日発売のモデルで令和2年排出ガス規制に適合したほか、灯火まわりとメーターまわりのデザイン変更を受けたフルサイズ軽二輪スクーター。海外仕様のフォルツァ350と車体を共有することもあって、150~160ccモデルよりも力強く安定した走りが持ち味だ。
可動域180mmの電動式スクリーンやフルフェイスヘルメットが2個入る大容量48Lシート下ラゲッジボックス、スマートキーシステム、インナーボックスに標準装備するUSB電源ソケット、急ブレーキ時に後続車へ注意を促すエマージェンシーストップシグナルなど、利便性や安全性に配慮した装備が多数。ABSやHondaセレクタブルトルクコントロール(いわゆるトラコンに相当)も標準採用している。
主要諸元■全長2145 全幅750 全高1360 軸距1510 シート高780(各mm) 車重186kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 249cc 23ps/7750rpm 2.4kg-m/6250rpm 無段変速 燃料タンク容量11L■タイヤサイズF=120/70-15 R=140/70-14 ●色:灰、黒 ●価格:69万1900円 ●発売日:2022年12月22日
ヤマハ NMAX155
2022年にフルモデルチェンジし、2023年にはニューカラーを追加するとともにスマートフォン専用アプリ非対応に。最新世代のブルーコアエンジンは、可変バルブ機構『VVA』や軽量鍛造ピストンで走行性能を高めただけでなく、静かなエンジン始動を可能としたSMG(スマートモータージェネレーター)を搭載。さまざまな路面状況でスリップを抑制するトラクションコントロールシステムも装備する。
普段使いに便利な機能としては、スマートキーや12VのDC電源ソケット、容量約23Lのシート下トランクには小ぶりなヘルメットも収納可能。ヘルメットホルダーは2個装備しており、フロント収納ボックスは左右に。左側は600mlのペットボトルが収納でき、右側はリッド付きで安心だ。
主要諸元■全長1935 全幅740 全高1160 軸距1340 シート高765(各mm) 車重131kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 155cc 15ps/8000rpm 1.4kg-m/6500rpm 無段変速 燃料タンク容量7.1L■タイヤサイズF=110/70-13 R=130/70-13 ●色:白、赤、艶消し暗緑、艶消し暗灰 ●価格:42万3500円 ●発売日:2023年10月25日
ヤマハ トリシティ155
リーニングマルチホイール(LMW)を採用する3輪スクーター。2023年のフルモデルチェンジで上位機種のナイケンやトリシティ300が採用する“アッカーマンジオメトリ”を採用し、前2輪ならではの安心感と、より自然なフィーリングをより高いレベルで両立した。
エンジンは令和2年排出ガス規制に適合した最新の“ブルーコア(BLUE CORE)”で、静粛かつ振動の少ないエンジン振動をもたらすスマートモータージェネレーターも装備。また、“ストップ&スマートシステム”(いわゆるアイドリングストップ)も採用している。
このほか、スマートキーシステムの搭載やスマートフォン専用アプリにも対応したメーターパネルを採用。専用アプリ「YAMAHA Motorcycle Connect(略:Y-Connect)」をインストールしたスマートフォンと連携することで車体メーターへのスマホ通知の表示やスマホ画面のサブメーター化が可能になる。
2024年4月にニューカラー採用の2024年モデルが発売された。
主要諸元■全長1995 全幅750 全高1215 軸距1410 シート高770(各mm) 車重172kg ■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 155cc 15ps/8000rpm 1.4kg-m/6500rpm 無段変速 燃料タンク容量7.2L■タイヤサイズF=90/80-14 R=130/70-13 ●色:薄緑、灰、白 ●価格:56万6500円 ●発売日:2024年4月11日
ヤマハ Xフォース
2022年に発売されたスポーティスクーターで、開発コンセプトは「マスター・オブ・ストリート スクーター」。水冷155ccの“BLUE CORE(ブルーコア)”エンジンを専用設計フレームに搭載し、トラクションコントロールシステムや専用アプリによるコネクテッド機能など最新の装備を誇る。
ブルーコアエンジンには、全域で高トルクを発生すべく可変バルブ機構VVAを搭載。オフセットシリンダーや鍛造ピストン、DiASilシリンダーなどの採用によりフリクションロスを低減している。NMAX155らと同様に「スマートモータージェネレーター」も採用。メーターはスマートフォン連携機能を持ち、シート下とランクは容量23.2L、ヘルメットホルダー2個装備、USBソケットなど装備も充実だ。
2023年4月にはアクセサリーのローダウンシート(-30mm)を組み合わせた「X FORCE Low」も+1万1000円で発売された。
主要諸元■全長1895 全幅760 全高1120 軸距1340 シート高815(各mm) 車重130kg(装備)■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 155cc 15ps/8000rpm 1.4kg-m/6500rpm 無段変速 燃料タンク容量6.1L■タイヤサイズF=120/70-13 R=130/70-13 ●価格:39万6000円 ●色:艶消し緑、艶消し青、白、黒 ●発売日:2022年6月28日
スズキ バーグマン200
199cc水冷単気筒エンジンを搭載したジャストサイズモデル。150~160ccよりも20%ほどパワフルで、250ccよりも20kgほど軽量コンパクトという独自の立ち位置で、2014年の初登場から息の長い人気を誇る。
フルフェイスヘルメットが2個収納できる大容量41Lのシート下スペースや、12Vのアクセサリーソケットを備えたフロントボックス、735mmと足着き抜群のシート高など、利便性の追求に余念がない。
2021年にABSを標準装備とするマイナーチェンジを受けたのち、現在は生産終了となって店頭在庫を残すのみとなっている。
主要諸元■全長2055 全幅740 全高1355 軸距1465 シート高735(各mm) 車重165kg(装備)■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 199cc 18ps/8000rpm 1.6kg-m/6000rpm 無段変速 燃料タンク容量10L■タイヤサイズF=110/90-13 R=130/70-12 ●価格:57万1340円 ●色:艶消し青、黒、白 ●発売日:2021年3月16日
まとめ
通勤バイクとして、またモーターサイクルタイプに加える2台目のバイク(セカンドバイク)として人気の125cc原付二種スクーターに対し、余裕のある動力性能と車体を持ち、高速道路も走れる排気量区分の軽二輪スクーター。“これ1台”でほぼ何でもこなせるだけでなく、125ccの兄弟モデルはそのコンパクトさからセカンドバイクとしての用途にも応えてくれる。操作そのものを楽しむモーターサイクルタイプに対し、移動を楽しめて利便性も高く、使える用途は幅広い。
よくある質問
タンデムの安定性はどう?
煩雑なギヤチェンジ操作が不要なことからライダーのアクションによる挙動の乱れは少なく、またパッセンジャーの乗車位置も低めであることが多いため、150~160ccクラスでもかなり安心感がある。ただし、操作がイージーなぶんラフになりやすいので気遣いは大事。
どのくらい荷物が積めるの?
シート下スペースはかなり大きいものから最小限のものまである。容量○〇リットルというのを参考にしたいところだが、ヘルメットの形状やサイズによって収納できる場合とできない場合が生じるので、可能な限り確かめてから購入したい。ヘルメットホルダーの有無も要チェック。基本的には車体が大きいほど収納スペースも大きくなる。1~2日分の食料品や一般的な上着などはどの機種でもOKだ。積載性を拡大したいならリヤキャリアに装着するタイプのボックスなどを追加装備しよう。
燃費はどのくらい?
国産軽二輪スクーターの現行モデルは全て水冷単気筒エンジンを搭載していて、燃費はおおよそ排気量なりになるのでわかりやすい。実測値に近いとされるWMTCモード燃費では250ccフルサイズおよびバーグマン200が30km/L台前半、150~160ccクラスは40km/L台前半だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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