高速道路や峠道を走行すると、路面に溝が掘られた道路に遭遇することがあります。横溝の道路なら大きな問題にはなりません。しかし、縦溝の道路はバイクが極端に不安定になってしまうことから、バイク乗りには嫌がられる道路と言っていいでしょう。この溝は、そもそも何のために施されているのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
ナゾの溝の正体=グルービング工法とは?
道路へ縦や横に刻まれた溝は「グルービング工法」といい、舗装路面に滑り止めの効果を持たせるための加工です。
縦溝/横溝のほかに、縦と横の溝を組み合わせた「グレードアップグルービング」などもありますが、いずれも路面に溝を設けることで路面の抵抗を増大させて、車両のスリップを防止するとともに、溝から雨水や雪解け水の排水効率を高める目的で施工されます。
路面にこうした特性を与えられることから、グルービング工法はおもに以下のような場所に施工されます。
- カーブが続く峠道
- 冬季に凍結しやすい山岳道路
- ハイドロプレーニング現象が起きやすい高速道路
- 横風の影響が出やすい橋 など
横溝のグルービングは、路面の縦方向の摩擦抵抗増大によりブレーキ時の制動力を大きく引き上げるとともに、走行時に振動や音が発生することからドライバーへ速度超過などを警告する効果もあります。
一方、縦溝のグルービングは、横方向の摩擦抵抗が増えることで、走行する車両の直進安定性を劇的に高めてくれます。
路面に施工されるグルービング工法は、横溝/縦溝ともに道路の安全性向上のための措置と言えるでしょう。
しかし、安全のためのグルービング工法とはいえ、車両によっては不都合も生じさせます。とくに縦溝グルービングが施された道路は、かえってバイク事故を誘発しかねない恐ろしい道路へと変わります。
なぜバイクにとって縦溝道路は脅威なのか?
縦溝グルービングが施工された道路をバイクで走る際は、ハンドルが重くなり操舵しにくくなるうえ、車体全体がフラフラし、場合によってはスリップして転倒しそうな恐怖感を覚えます。
こうした影響は、溝の凹凸によって発生する振動のせいだけではありません。
縦溝によってできた凹部と凸部を平行に近い浅い角度で横断する際には、タイヤの接地点の位置や面圧が変動することで、実際にグリップ力やバンク角も微量ながら連続的に変化しています。
その結果、縦溝グルービングが施工された道路を走行すると、バイクは舵角とバンク角が定まらずフラフラするというわけです。
ハンドル操作でバランスを取ろうにも、タイヤがレールのようにタイヤを溝に沿って誘導される形になり、思うように操作しにくくなります。
縦溝グルービングが施された道路は、溝によって路面の排水が促され、危険なハイドロプレーニング現象は起きにくくなるものの、路面が濡れているとそのぶんタイヤグリップも唐突に変化しやすくなるため、転倒防止のリカバリー操作も難しくさせます。
さらに、ブロックタイヤを履くオフロードバイクなどは、溝にブロックが引っかかりやすかったり、また万が一転倒した際にライダーが受けるダメージも通常の路面に比べて増大します。
これらが、バイク乗りに縦溝グルービング工法の道路が嫌がられる理由です。
十分に速度を落としてやり過ごす
縦溝グルービング道路を走行する際の、もっとも簡単かつ確実な対策法は“十分に速度を落とすこと”です。
具体的には以下のような点に注意して走行しましょう。
- 安定感を高めるために低いギアで走行する
- 速度を抑えてなるべくバンクをさせずにカーブを曲がる
- 速度変化によるバンク角の変化を抑えるために速度を一定に保つ
低速走行であれば、不安定感は残るものの、転倒するほどの挙動変化は起きません。また、転倒しそうになった際にも対処しやすく、いざ転倒した際の被害も抑えられます。
ただし、グルービング道路に侵入してから大きく減速をすると挙動を乱しやすいため、侵入する前に速度を落としておくことが大切です。
そのためには「この先、路面溝切りあり」などの文言が書かれた予告標識を見逃さないことが肝心です。ただし予告標識が設置されない場所もあるため、進行方向の路面チェックも欠かさずに行いましょう。
また、バイクの車体特性/タイヤサイズによって、縦溝グルービングから受ける影響の大きさは異なりますし、受ける恐怖もライダーによって差があります。
なので、マスツーリングを行う際、先頭を走るライダーがグルービング工法の道路を発見した場合は、後続のバイクに配慮して十分な減速を心がけ、低速走行を促してあげましょう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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