
●文:ヤングマシン編集部(peacock Blue K.K.)
バイクは左にハンドルを切って停めるのが基本。でも右に切ってる白バイを見かけるけど…
サイドスタンドを使ってバイクを停車させる際はハンドルを左に切る…、これは教習場での指導はもちろん、バイクの取扱説明書にもしっかりと記載されている常識です。
にもかかわらず、白バイが右にハンドルを切って停車している姿を見かけます。
交通安全の模範となるべき白バイ隊員が、ハンドルを右に切って停車するのには違和感を覚える人も多いかもしれません。これには何か特別な理由があるのでしょうか。
バイクは、車体が傾いた方向にタイヤが切れる構造の乗り物です。サイドスタンド使用時は、車体の傾きに従ってハンドルが自然に左へと切れ込んでしまうため、右にハンドルを切って駐車するためには意図的に操作しなくてはなりません。
それはつまり、白バイが右にハンドルを切って駐車させるのには明確な理由があるということ。その理由のヒントを、過去に神奈川県警察本部交通部交通総務課が以下のようにX(旧Twitter)にポストしていました。
「オートバイは、ハンドルを切った方向とは逆向きに傾く特性があります。乗降時、フロントブレーキをかけながら、ハンドルを右に切ることで、ライダーが乗り降りする歩道側に車体が傾いて、スムーズな乗降が可能になります。危険な車道側へ車体が倒れることの防止にも繋がります!!」
X|神奈川県警交通部交通総務課
オートバイはハンドルを切った方向とは逆向きに傾く特性があります。
— 神奈川県警察本部交通部交通総務課 (@kpp_koutuu) June 17, 2021
乗降時、フロントブレーキをかけながら、ハンドルを右に切ることで、ライダーが乗り降りする歩道側に車体が傾いて、スムーズな乗降が可能になります。
危険な車道側へ車体が倒れることの防止にも繋がります!! pic.twitter.com/ybCoxR36mN
停車中や低速走行中にバランスを崩した際、倒れそうな方向へハンドルを切って転倒を回避したことがある人も多いでしょう。たしかに、バイクにはハンドルを切った向きと反対方向に倒れ込む力が働きます。
上述の神奈川県警の交通総務課のポストのとおり、この作用を利用すれば、バイクを手前側に傾けて保持しやすいため、車道側に倒しにくくなります。また、左足を地面につけやすくなることで乗降も楽になります。
さらに過去に行われた白バイ隊員の講演会では、乗る際にハンドルを右に切ることで、足を持ち上げるために前傾姿勢になってもハンドルの左側グリップが邪魔にならず、左手が窮屈にならない利点があるとも述べられていました。
バイクに乗るときも、降りるときもハンドルを右に切るのであれば、駐車中もハンドルを右に切っておく方が効率的なのはいうまでもありません。
白バイ隊員がハンドルを右に切って駐車しているのは「大きく重いうえ、乗り降りしにくい白バイでの業務を楽にするため」というのが理由のひとつとしてあるようです。
ハンドルを右に切る駐車テクニックは白バイ以外でも使える?
乗降時にハンドルを右へ切る方法は、一般のバイクでも活用できそうです。ただし、右にハンドルを切ったまま駐車するのは避けたほうがよいでしょう。
ハンドルを右に切ればバイクは左側へ倒れようとしますが、右にハンドルを切ることでフロントタイヤの接地点は左側に移動するため、バイクの重心はわずかに右側へ移ります。
つまりハンドルを右に切った状態は、バイクを傾けるのに必要な力が小さくなる反面、サイドスタンドでの停車中は右側にも倒れやすいということです。これは白バイも例外ではありません。
しかし、重い白バイは横風などの外乱に比較的強いため、ハンドルを右に切った状態での駐車中でも市販車よりは安定しています。たとえば、現在白バイとして多く用いられているホンダCB1300Pの車体重量は299kg、またヤマハFJR1300APは重量が365kgにもなります。
ハンドルを右に切って駐車することは、総重量300kgを超える大型バイクを頻繁に素早く乗り降りする必要がある、白バイならではのテクニックといえるでしょう。
ただし、すべての白バイ隊員がこうしているわけではなく、右にハンドルを切っての駐車はあくまで各隊員ごとの判断のようです。もちろん、路面傾斜などの状況によっても使い分けているはずです。
白バイといえば運転技術や装備などに目が行きがちですが、こうした乗降時や駐車の技術も業務に活かされているようです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※
最新の関連記事(バイク雑学)
ボクサー誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカー。 そのBMWが[…]
日本のハイオクは海外ではレギュラー!? オートバイに限らずクルマでも輸入車はほぼすべてハイオク指定。世界に誇る高性能な日本車は、基本的にレギュラーガソリンの給油で事足りる。 そういうところが日本の技術[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
バイクを購入するための、自由になるお金があることが大前提 同居家族にバレずに……という悩みを抱える人のほとんどは、これまでの取材経験に基づくと、奥様の猛反対を受けている旦那さんか、親と同居している若い[…]
燃料コックのポジション“ON/OFF/RES”の意味と使い方 多くの現行モデルの燃料供給方式は、FI(フューエルインジェクション|電子制御燃料噴射)だ。 言うまでもなく、燃焼効率/環境性能の向上になく[…]
最新の関連記事(白バイ)
シリーズ第8回は「8の字走行」。基本操作の総仕上げ! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転のお手本[…]
元警察官が体験を交えて“よくある言い訳/言い逃れ”を紹介 交通違反をして取り締まりを受けると「あぁ、チクショウ!」と悔しい気分になるものです。警察官に声をかけられると、やっぱり言い訳や文句のひとつもし[…]
制限速度1km/hオーバーでも“違反”にはなる 家族や友人とのツーリングやドライブ中に警察の取り締まりを受けたら、せっかくの楽しい気分も台なしですよね。「ノルマのために切符処理するんじゃなくて、注意す[…]
シリーズ第5回は「低速バランス」。教習所の“あの課題”に再会! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運[…]
シリーズ第4回は「発進加速」。日常動作を見直してみよう! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転のお[…]
人気記事ランキング(全体)
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキが、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させたのは、2024年[…]
新5色ラインナップとなった2022年モデル 2022年モデルが発売されたのは、2022年6月23日のこと。2021年のフルモデルチェンジの際には、新設計の水冷エンジンが4バルブの「eSP+(イーエスピ[…]
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
最新の投稿記事(全体)
複雑化/激甚化する”災害”に対し最新技術で立ち向かう ニュースやSNSでも知られている通り、異常気象などにより複雑化/激甚化しているという日本の災害現場。そこで起きる課題に対し、モリタホー[…]
モンキーFSシリーズの最新作として誕生! ホンダ「CB1000F コンセプト」で往年のフレディ・スペンサーが駆ったレーシングマシンのカラーリングが話題になったばかりだが、憧れの“スペンサーカラー”をま[…]
孤高のパニガーレV4Sと友好的なパニガーレV2S パニガーレV4Sでサーキットを3本ほど走ると、強烈な疲労感が僕の身体を襲う。汗は止まらず、足腰に力が入らなくなる。試乗直後は格闘技を終えたような感じだ[…]
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 あえてベールに包まれたファルコ 以下は、元スズキ社員としてファルコラスティコ(以下ファルコと表記)の[…]