
●文:ヤングマシン編集部(Peacock Blue K.K.)
「オービス」とは、速度超過車両を自動検知してナンバープレートと運転者の顔を撮影する自動速度違反取締装置の通称です。速度超過でオービスに撮影されると、数週間後に違反者の元へ出頭通知書が届きます。
おもに高速道路などの上部に設置されていますが、近年「移動式オービス(可搬式オービス)」の普及が急速に進んでいるようです。
これまでの固定式オービスとはまったく異なる特徴があるようですが、いったいどのようなものなのでしょうか。
近年増えている「移動式オービス」って?
従来の固定式オービスは、高速道路/幹線道路など道幅の広い道路に設置されるのが通例でした。しかし近年普及が進んでいる移動式オービスは、その可搬性を活かして、場所や時間の制限に縛られず設置/撤去できることが最大のメリットです。
移動式オービスの特徴や注意点をまとめると、以下になります。
- 取り締まりの予告看板がない
- 小型で目立たないため、発見が遅れがち
- 15km/h程度の速度超過でも、検挙される恐れがある
- 通学路/生活道路/トンネルのような、道幅が狭く制限速度が低い場所にも設置可能
- 朝や夕方など、事故が起こりやすい時間帯だけ設置される場合がある
- 毎回同じ場所/時間に設置されるとはかぎらない
- レーザースキャン方式を採用する現在の主要機種は、対応したレーダー探知機でなければ事前検知できない
このように、従来のオービスとはまったく異なる特徴を持った移動式オービスは、運転者にとって神出鬼没で恐ろしい存在に思えることでしょう。
移動式オービスは2015年前後から導入され始め、ここ数年で急速に普及が進みました。現在はすべての都道府県警察で移動式オービスが運用されています。
普及が一気に進んだ理由は、移動式オービスによる速度抑制効果/検挙実績などを含めた有用性が実証されたことにあるとみられます。
また、既存の固定式オービスの老朽化が進んでいることや、装置の維持や新規建設に多額の費用がかかることも、移動式オービスの普及が加速した要因といえるでしょう。
バイクはオービスでは捕まらない?
ところで、「バイクはオービスで捕まらない」という噂を耳にしたことがある人も多いと思います。
前方から撮影するオービスでは、バイクのナンバープレートを写すことができないため、車両番号からライダーの身元を割り出すことができません。また、フルフェイスのヘルメットを被っていれば、顔から身元を割り出すことも困難です。
そのため、バイクはオービスに撮影されても検挙されることはほとんどないようですが、近年では移動式オービスを用いた”定置式速度取り締まり(ネズミ捕り)”が増えています。
通常、移動式オービスは警察官1〜2名を配置しただけの自動速度取り締まりで運用されるため、その場で違反切符は切られません。
それに対し、移動式オービスを速度計測器として用いたネズミ捕りの場合は、バイクであっても、速度超過が確認されれば、画像の証拠性に関わらずその場で検挙されます。
また、オービスによる自動速度取り締まりは、移動式/固定式にかかわらず速度超過の事実は画像として記録されていることも覚えておきましょう。
ちなみに過去には、過度な速度超過の常習やオービスに対して挑発行為をした悪質なライダーに対して、オービスの画像を手がかりとして本格捜査に踏み切った事例も多くあるため、バイクとはいえ油断はできません。
移動式オービスに驚いたクルマの急ブレーキに注意!
現在、老朽化した固定式オービスの撤去が積極的に進められており、今後は一般道/高速道路ともに、移動式オービスが主流になると見込まれます。では、これによりライダーにはどのような変化があるのでしょうか?
前述したとおり、移動式オービスを用いたバイクの速度超過は、原則としてネズミ捕りでの併用でなければ検挙できません。そのネズミ捕りを実施するには、違反車両を停車させるスペースが必要になるため、実施場所は限られます。
そのため、移動式オービスの普及によるバイクへの影響は、クルマに比べて少ないと予想されます。しかし、運転環境の変化は確実に起こるでしょう。
もっとも注意したいのが、移動式オービスの存在に驚いたクルマの急ブレーキ。速度超過するクルマのすぐ後方を走行していた場合、追突やパニックブレーキによる転倒の危険性が高まります。
とくに制限速度が30〜40km/hに抑えられた道路は、速度超過をする車両が多いこともあって、移動式オービスによる取り締まりが実施されやすい場所です。
移動式オービスの増加に伴い、バイクはこれまで以上に車間距離の維持と速度管理に注意を向ける必要がありそうです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
EVは脱炭素社会実現と移動課題の改善に寄与するか 「バイクラブフォーラムin南国みやざき」で実施されたパネルディスカッション、「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」において、次のトー[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
免許制度は基本、ヨーロッパで共通 イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第2回。今回はイタリアの自動車運転免許制度について紹介していきます。 と[…]
660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」 イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょう[…]
バイク同様に開放感を楽しめるオープンカー、屋根を開けた状態での雨対策はどうなっている? ごく一部の特別なモデルやカスタムされたマシンを除くと、バイクは雨の中を走ったからといってトラブルが起きないように[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
365GTB/4 デイトナ:275GTB/4を引き継ぎつつ大幅にアップデート 1968年のパリ・モーターショーでデビューした365GTB/4は、それまでのフラッグシップモデル、275GTB/4を引き継[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選 1960年代から1990年代に発表された数々の銘車たち……そのうち300台以上を厳選、年式変遷や派生モデルを含め紹介。 大型やマルチはも[…]
新型トレーサーでACCとY-AMTが融合! 今回のビッグチェンジで色々機能が追加されたり改変を受けているトレーサー9 GT+ Y-AMTではあるが、何はともあれ書くべきは前走車追従型のクルーズコントロ[…]