
アルパインスターズは、2022年に走行テストシーンを公にし始めたカーボン製ロードレース用フルフェイスヘルメット「スーパーテックR10(SUPERTECH R10)」を、ついに欧州とアメリカで市販開始した。日本を含むアジア圏への展開は2024年下半期の予定だ。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
高い安全性とMotoGPレベルの空力性能、快適性を実現
アルパインスターズは、2019年に発売したオフロード向けヘルメット「スーパーテックM10」に続き、オンロード向けのフルフェイスヘルメット「スーパーテックR10」を発売する。2022年秋には当時MotoGPライダーを引退したばかりのアンドレア・ドヴィツィオーゾが開発ライダーを務めることが明かされ、翌2023年にはホルヘ・マルティン選手らMotoGPライダーが実戦で着用していた。
そして2024年、ついに市販を開始。といっても最初は欧州およびアメリカ市場のみで、日本を含むアジア版の発売2024年の下半期になる模様だ。アジア仕様は西洋人と頭の形状が異なる東洋人に適したアジアンフィットとなっているため、一般的な日本人の頭部形状を持つ方は焦らずこちらを待つべし。
SUPERTECH R10
MotoGP最高峰クラスのレーシングスーツでは最大勢力となったアルパインスターズだが、元々はモトクロス用ブーツやグローブなどで名を馳せてきたレーシングギア&アパレルメーカーだ。
2018年にMotoGPで義務かされた“着るエアバッグ”こと『テックエア』も市販モデルとしてシリーズ展開するなど、イタリアンデザインだけでなく安全性の追求でも非常に高い評価を得ている。これは新作ヘルメットも期待せずにはいられないだろう。
新しいスーパーテックR10(S-R10)は、安全性の高さに加え、最高のパフォーマンスを得るべく開発が続けられてきたカーボン製フルフェイスヘルメットで、優れた通気性、快適性を追求。さらに高度な空気力学=エアロダイナミクスを反映するために風洞実験室で無数のテストが行われた。これにより、高いスタビリティと空気抵抗低減を実現したという。重量はMサイズで1540グラムだ。
サイズはXSから2XLまでの6サイズをラインナップし、ソリッドカラーとグラフィックカラーが用意される。ソリッドカラーはマットブラックカーボン、光沢のあるブラックカーボン、光沢のあるホワイト、マットブラックの4色。グラフィックモデルは2パターンあり、それぞれに2色の色違いモデルが用意されて計4バリエーションとなっている。
すべてのヘルメットにクリアとダークのスモークバイザー、ティアオフセット、ピンロックレンズ、チンカーテン、ディフレクターが同梱される。
S-R10はアルパインスターズ欧州&アメリカの正規ディーラーと代理店で購入でき、数量限定でオンライン先行発売が行われる。3月にフルラインナップが揃って店頭販売される予定だ。参考までに、アメリカでの価格は999.95ドル(ソリッドカラー)/1199.95ドル(グラフィックモデル)で、日本円換算では約14万8000円/17万8000円。意外と……高くないかも……!
詳細解説はカラーバリエーション紹介の後にあります↓
SUPERTECH R10 ソリッドカラー
マットブラックカーボンおよびマットブラックは写真なし(初期ロットはラインナップなしの模様)。
SUPERTECH R10(Black Carbon Matte & Glossy)
SUPERTECH R10(White Glossy/Black Matte)
SUPERTECH R10 グラフィックモデル
SUPERTECH R10 TEAM
SUPERTECH R10 TEAM(Black/Carbon Red/White Glossy)
SUPERTECH R10 TEAM(Black/Carbon Red Fluo/Blue Matte)
SUPERTECH R10 ELEMENT
SUPERTECH R10 ELEMENT(Black/Carbon Bright Red/White Glossy)
SUPERTECH R10 ELEMENT(Black/Carbon Silver/Black Glossy)
カーボンシェル構造の多層複合材を用いたアウターシェル
スーパーテックR10のシェル構造はECE 22.06、DOT、および FIM規格に準拠しており、3K高密度カーボン外層、一方向カーボン複合層、アラミド繊維層、グラスファイバー層からなるマルチコンポジットを採用している。
3K高密度カーボン外層は、シェル全体に優れた強度と衝撃エネルギー分散効率を提供。一方向カーボン複合層はシェル周囲のラジアル方向の強度を大幅に高めることでたわみを低減する。アラミド繊維とグラスファイバーの層は貫通を防ぐ。
これらの層状複合材料の組み合わせにより、強度と性能、軽量化を最大化し、分散した衝撃エネルギーはEPSライナーによって吸収される。
現在の ECE 22.06 ヘルメット規格を大きく超える対衝撃性能を実現。垂直のインパクトに対しては基準を37%上回り、異なる角とからの回転加速や斜めのインパクトに対しては基準を65%上回る。
8ピースで6種類の密度を使い分けるインナーシェル
さまざまなライダーの頭部に適合するよう4つのインナーシェルサイズを持ち、全体の重量軽減に貢献するとともに衝撃吸収性能も向上。EPSライナーは8ピースで、6種類の異なる密度のものを組み合わせることでアウターシェル全体に衝撃を分散、さらに快適なフィット感を実現する。
8ピースに6種類、密度の異なるEPS(ポリスチレンフォーム)素材を使い分けている。
EPSインナーシェルには摩擦低減のために内面の研磨とコーティングが施され、回転、斜め、直線の衝撃力に対応。特許取得済みのこの技術によってライナー(内装パッド類)はEPSに対して独立して動くことが可能になり、アウターシェルが衝撃を受けた際にライダーの頭、首、脳、脊椎に伝わる衝撃エネルギー(直線力/回転力/斜め力)を大幅に抑制できるという。
フィット感を向上するA-Head フィットメントシステム
S-R10は、内装のカスタムによるフィット感の向上が可能だが、さらに特許取得済みのA-Headフィットメントシステムを採用することで、ヘルメット着用時の高さと角度をライダーの好みに合わせて正確に調整できる。前傾の強いスーパースポーツモデルとアップライトなネイキッドでは当然ながらライダーの頭の前傾角度が変わるが、このシステムを利用することで良好な視界を確保できるわけだ。
スペアパーツも豊富に用意されており、チークパッド/クラウンパッド/トップパッドとA-Head フィットメントシステムの組み合わせによって様々なライダーのフィット感とパフォーマンスのニーズを満たすことができるという。
風洞実験室とレースの現場で鍛え上げられたエアロダイナミクス
MotoGPのトップライダーが着用することを前提に開発されたスーパーテックR10は、空気抵抗や浮き上がり力の低減、スタビリティを最高レベルに実現。すでにMotoGPライダーが最高峰のレースで使用しているが、一般的な公道ライダーにとっても高速走行時の首への負担軽減や低レベルの風切り音といった恩恵が受けられるはず。
後頭部のスポイラーは特許取得済みのリリースシステムを採用しており、弾性ジョイントでマウントされている。転倒などで大きな衝撃を受けた際には、角度に関係なくスポイラーがヘルメットから外れ、潜在的な回転エネルギーを低減する。
また、空気抵抗を低減するためサイドにはウイングレットを、バイザーにはタービュレーター(乱流翼)を備えており、スポイラーとの組み合わせによってヘルメットの空気抵抗をさらに4.54%低減したとしている。
ホンダCBR1000RR-Rを彷彿とさせる(?)ようなウイングレットを左右に装備!
通気ポートは11箇所!
アイポートを除く11個の通気ポートを装備。チンガードに3箇所、ヘルメット上部の4つを含む7箇所のインレットを備え、チンバーの2つを含め4箇所の排気口を持つ。これらの換気システムは開閉可能で、真夏の走行時などに積極的な空気の循環で威力を発揮するほか、シールドの曇りを防ぐのにも効果的だ。
11箇所のインレットポートを持つ。
トップベントから効果的に排出。
側面視野220°、垂直視野57°を確保
シールド機構には金属製のロックレバーを採用しており、衝撃を受けた際のシールドの脱落を防止。さらに前面の金属製フックによって閉位置にロックされる。シールドの密閉性はゴム製トリムによって確保され、視野は側面220°、垂直57°を確保しった。
また、安全かつ工具不要のクイックリリースシステムにより、バイザー交換もスピーディに行える。シールドにはピンロックレンズに対応する内側のピンと、ティアオフに対応する外側のピンも装備。
光学クラス1のシールドは厚さ3mmで、傷防止および曇り防止の処理が施されている。
内部パーツは取り外し可能、洗濯可能、抗菌加工済みの生地を採用
スーパーテックR10は、クラウンパッド、トップパッド、チークパッド、チンカーテン、チンストラップ、イヤーパッド、ウィンドディフレクター、ブレスディフレクターの8つの内部パーツを持ち、トップパッドとチークパッド、イヤーパッドは取り外して洗濯可能。
イヤーパッドを取り外すと通信システムを取り付けることもできる。
鎖骨の骨折を避けるチンバー
ヘルメットが受けた衝撃によって側面が鎖骨に当たり、骨折を招くことがあるが、スーパーテックR10の底部輪郭は鎖骨を避けるように高くされ、硬いカーボンシェルの代わりに軟らかいEPP(発泡ポリプロピレン)ライナーが伸びている。これにより、鎖骨の怪我のリスクを減少させた。
アルパインスターズのエアバッグ=テックエアによって鎖骨の怪我は大幅に減ったが、さらにヘルメットも鎖骨の怪我のリスクを低減する設計としている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
まず安全性、そしてMotoGPレベルのエアロダイナミクス、快適性を追求 アルパインスターズは、オンロード用フルフェイスヘルメット「スーパーテックR10(SUPERTECH R10)」の開発に取り組んで[…]
クアルタラロがHJCと巨額契約! アレイシはカブトのユーザーに スズキの撤退もあって、活発だった2023年に向けてのMotoGPストーブリーグ。それに呼応してか、チームの移籍に加え、被るヘルメットを変[…]
カピロッシも「マルケスが勝つんじゃないかな」 マレーシアでの公式テストを皮切りに、間もなくMotoGPの'24シーズンが始まりますね。僕が注目したいのは、やっぱりドゥカティを走らせるマルク・マルケスで[…]
総合トップはヤマハのレミー・ガードナー選手 ヤマハのYZF-R1がひと際注目を集めた。ジョナサン・レイ選手の移籍から初走行という大きなトピックに加え、来季でヤマハ2年目のレミー・ガードナー選手がコース[…]
WorldSBKオフィシャルサイトで公表 スーパーバイクコミッションを構成するドルナ、FIM、MSMAは、幾度にもわたる会合を経て2024年からスーパーバイク世界選手権のレギュレーションを変更すること[…]
最新の関連記事(アルパインスターズ)
防水・防寒性能も万全。オールシーズン対応のスタイリッシュパーカ:MOBLAST WP JACKET 街の景色に溶け込むことを意識した、スタイリッシュな防水パーカ。メイン生地に防水メンブレンとソフトシェ[…]
高い安全性とMotoGPレベルの空力性能、快適性を実現 アルパインスターズは、2019年に発売したオフロード向けヘルメット「スーパーテックM10」に続き、オンロード向けのフルフェイスヘルメット「スーパ[…]
MotoGPがいよいよ開幕! プレシーズンテストや体制発表会の情報が続々と舞い込み、中にはSNSで2024年仕様のヘルメットを公開するライダーもちらほら現れていたので、レースファンの筆者としては、胸の[…]
クシタニ独自のパターン設計と高品質なレザーが、エアバッグの膨張時にも適切に対応 2023年12月より全国のクシタニでスタートした本サービスでは、既製品への組み込み/カスタムオーダー/お客様のスーツへの[…]
レーシングスーツの最大勢力はアルパインスターズ 今シーズン、装具での注目はアルパインスターズがついにロードレース用のヘルメットを投入してきたことだろう。世界最高峰のロードレースで開発を続け、市販化を狙[…]
最新の関連記事(ヘルメット)
X-Fifteen OROCHI 日本神話を描くグラフィックモデルの新色はマットなブラック×グリーン 『X-Fifteen OROCHI』は、日本神話に登場するヤマタノオロチ(八岐大蛇)をモチーフとし[…]
高性能を、もっと身近に 空力性能を追求したダイナミックな新シェルデザインを採用。走行時のリフトを抑えるシャープなシルエットはスポーツライディングにおける安定感を約束。帽体内部には多密度EPSライナーを[…]
SHOEI X-Fifteen DAIJIRO X-Fifteenでの第2弾となる加藤大治郎レプリカが登場! 加藤大治郎レプリカの登場は、2024年9月以来およそ2年ぶりだ。彼のレプリカモデル製作の経[…]
RX-7X IOM-TT26 バイクレースの原点にして伝統のマン島TTモデルが今年も登場! 1907年に第1回が開催された『マン島TTレース(IOMTT)』は、現存するバイクレースでは世界最古となる歴[…]
3種のニューカラー追加で選択肢が広がった、アドベンチャーフルフェイス 『HORNET ADV INVIGORATE』は、2023年8月に発売されたグラフィックモデルで、メカニカルな印象のブロックパター[…]
人気記事ランキング(全体)
「ちょっとそこまで」が劇的に変わる。免許いらずの新たな足 ガソリン代は上がる一方だし、大きなバイクは維持費も置き場所も頭が痛い。かといって、自転車での急な坂道は体力が削られる。そんな我々の日常に寄り添[…]
輝かしい歴史を持つXT500は、なんと2002年まで生産 そもそもXT500は、1976年にヤマハが初めて作った4ストロークのビッグシングル搭載のトレールバイク。2スト全盛ともいえる時期に、空冷4サイ[…]
コンパクトだから出先での使用に最適! バイク用サンシェード 陽気も良くなるこれからのシーズン、ゴールデンウィークに遠出のツーリングなどを予定しているライダーも多いのではないだろうか? そんな楽しいツー[…]
音質がさらに向上し高速走行にも強くなった『B+COM 7X EVO』 “史上最高のサウンドを手に入れた”と話題のサイン・ハウス『B+COM 7X EVO』。使い始めてまず感じた進化のポイントはやはり音[…]
速さの秘訣を本人に迫ってみた! 丸山:この機会に長年抱いてきた思いをお伝えしたい。貴方が1985年にWGP 500と250でダブルタイトルを取った年に、私は天才フレディ・スペンサーに憧れてレースを始め[…]
最新の投稿記事(全体)
電気系統トラブルに有効なヒーロー電機の製品 バイクの電装系の中で意外にトラブルが多いのがウインカー関連だ。電球切れはもとより、スイッチ接点のサビやウインカーリレーの故障もあり得る。昨日まで何ともなかっ[…]
軽くて足つき抜群の相棒バイク 「バイクに乗りたいけれど、重くて取り回しが不安」「ちょっとコンビニに行くのに大型バイクを出すのは面倒」。そんな不満を感じたことはないだろうか。重いバイクは所有感を満たして[…]
楽しいツーリングも計画はタイヘン? ツーリングの計画を考えている時間は楽しいものですよね! どこへ行こうか、何を食べようか、どこに寄り道しようか・・・そんなことを考えている時間そのものが、すでにツーリ[…]
850cc化、エアロパーツ小型化、車高デバイス禁止、そしてタイヤメーカー変更! 先日、イタリアはミザノサーキットで、来季に向けたドゥカティ・モトGPマシンのテストが行われたようだ。 来シーズンは排気量[…]
1. 国交省がバイク駐車に関する連絡会議を設置 2025年5月、国土交通省は、バイクの駐車スペース確保に関する施策推進に役立てることを目的に、関係行政機関相互の連携のもと、関係省庁を横断する形となる「[…]































































































