やっぱり現実的じゃない”100km”の条件にも物申す

実はお得じゃない割引率だった?! バイクの高速料金、定率割引への要望を公明党オートバイ懇話会へ……〈多事走論〉from Nom

公明党オートバイ懇話会と、二輪業界関係者。中央で要望書を持つのが懇話会北側会長(向かって右側)とオートバイ政治連盟の吉田会長(向かって左側)、その左隣はAJの大村会長。

あれ? 休日割引料金で比較してみたら、普通車とほとんど変わってないですよね? 2022年4月にはじまった二輪車の定率割引は100km以上の区間を走行したうえで“平日の”普通車の半額になるというものですが、実際のところ100kmというのがかなり微妙な数字で、かつ普通車も休日は30%割引になり、実質的な割引率はわずか7.5%。これって本当に適正なのでしょうか。

定率割引の改善を公明党オートバイ懇話会に要望

11月2日、衆議院第1議員会館で、公明党オートバイ議員懇話会が二輪業界側からの要望を聞く会が催されました。

懇話会の北側一雄会長ほか懇話会会員の国会議員、国土交通省と警察庁の担当者、二輪業界関係者(日本自動車工業会[自工会]及び全国オートバイ協同組合連合会[AJ]など)が出席するなか、自工会二輪車委員会の飛田さんから「二輪車定率割引」について新たな要望が述べられました。

要望事項は3つあり、

  • ①1回の最低走行距離100kmの撤廃、もしくは短縮(30km/回)
  • ②割引率の見直し
  • ③大型連休の際の飛び石接続(対象日の連続化)

というもので、これと同様の内容の要望がAJからも行われました。

2022年4月から開始されたETC搭載車が対象で、37.5%の割引料金(=普通車の半額)となる二輪車定率割引ですが、実際に使用してみるとインターネットでの事前申し込みが必要など手続きが面倒だったり、走行距離が片道100kmに満たない場合は適用されなかったり、土日祝日しか適用されないなどあまり使い勝手のいいものではありません。

そのため、定率割引がスタートした後も、ユーザーはもちろん、この割引制度の導入に尽力した自民党オートバイ議連(三原じゅん子座長)からも苦言が呈されました。

実際、定率割引が施行されて1年半経った現在、使用したユーザーからいくつかの問題点を指摘する声が多くなっています。

まず、最低走行距離の問題です。片道100kmというのは意外に使い勝手が悪く、制約があるもので、自工会が提出した一例は東名高速道路の東京ICから高速に乗った場合、100km以上走行するには沼津IC以遠までが必要で、ツーリングの人気目的地である箱根や富士周辺は通り過ぎてしまうことになっている。同様に、首都圏の場合100km以内に観光地が多数あって、距離制限が足かせとなって利用件数の増加につながりにくいとしています。

確かに、関越道を例にとれば、人気の観光地である埼玉県の長瀞や、同じく埼玉県にあってライダーを歓迎してくれる小鹿野町も人気のツーリングスポットですが、どちらも近隣のICは関越自動車道の花園で、起点となる練馬ICからの距離は56.1kmと規定距離未満のため定率割引を利用できません。

一例として首都圏からのツーリングを上げましたが、この片道100km問題は全国のいたるところで見られるのかもしれません。

そもそもこの定率割引の目的は、利用しやすい料金にすることで地域観光の振興につなげようというものですから、この割引制度の恩恵を受けられないエリアが存在してしまうことは大きな問題です。

初年度である2022年度の定率割引の利用者は約19万件で、今年度は現時点で16万5000件。使い勝手の悪さが影響して、利用者の増加にブレーキがかかっているのかもしれません。

走行距離100kmの撤廃、もしくは30kmへの短縮は観光需要の喚起のためにも即刻行ってほしい項目と言えるでしょう。

また、これは提案ですが、この記事を読んだ地方自治体の方で同様の問題が自分たちのエリアにもあるという方は、ぜひ声を上げていただきたいと思います。事実や実態に、机上の空論はかないませんから。

普通車より7.5%しか安くなっていない!

次に②の割引率の件ですが、この37.5%割引という数字は、二輪車/軽自動車の高速道路料金は普通自動車の80%なので、二輪の高速料金を普通車の半額にするために決まった数字でした。

しかし、定率割引が適用になる土日祝日は普通車も30%の休日割引があるため、実質的な割引率はわずか7.5%に過ぎず、あまりにもインパクトが弱いのでは、ということです。

そもそも、普通車の半額が目標だったわけですから、30%の休日割引が適用された普通車料金から37.5%引きにした(割引率は56.25%になります)料金が適正だと訴えているわけです。

普通車の半額を実現するために、ETC搭載車限定でスタートした37.5%の定率割引だったが、土日休日しか適用されていないため、30%引きの休日割引に対してはわずか7.5%の割引にしかなっていない。こういう数字のレトリックをお役所は多用するのです。

こういうややこしいことが生じてしまうのは、定率割引の適用日を土日祝日に限定しているせいだと考えます。三原議員も本誌のインタビュー記事で言っているように、「いつでも普通車の半額」が望ましく、そして分かりやすく納得のいく答えだと思います。

平日は普通車料金の37.5%引きで、土日祝日は56.25%引きにすればユーザーの納得度も高まって、利用者も増加するのではないでしょうか。

さらに言えば、現行の高速道路料金の5車種区分(軽自動車等・普通車・中型車・大型車・特大車)を見直して、最初から普通車の半額料金の「二輪車」区分を新設すれば割引制度を設けることなどせずに済む話です。国交省の歴代の高速道路課長のなかには、「二輪車」区分新設に前向きだった方もいたようですが、課長が交代すれば話はまた振出しに戻るということが繰り返されてきているようです。複雑な割引制度にするのではなく、このあたりで抜本的な改革を行ってほしいものです。

最後の③は、GWやお盆休みといった大型連休中の平日を定率割引が適用される休日扱いにすることで、利用者の使い勝手を向上させ、ツーリングにおける宿泊利用を増やすことで地域観光振興にも貢献できるし、渋滞の分散化にもなるというものです。

来年の5月と8月のカレンダーを見ると、5月の7、8、9、10日、8月の13、14、15、16日を休日扱いにするとそれぞれ11連休、9連休となり、ツーリング/旅行プランの立て方に自由度が増し、結果的に渋滞の分散や地域の観光振興にも貢献できるようになる。

コロナ禍の影響で企業の働き方改革も進んで、土日祝日以外の日にお休みを取る方が増えています。実際、平日に観光地を訪れると、以前よりも明らかに人出は多くなっていますし、あえて平日の旅行を選択する人も増えているようです。

そういう旧来の休日感に縛られない状況が「常態化」しつつあるいま、この要望は至極まっとうなものだと考えます。

この3つの要望を受けて国交省の担当者は、「現在、定率割引の利用状況のデータを分析中で、みなさまのご意見を聞いて来年度(2024年度)以降について考えていきたいと思う」とのことでした。

今回、「継続検討課題」として二輪業界側から3つの要望が出されましたが、最終的に目指すものは「いつでも、どこでも普通車の半額」。そのためにも、要望の①と②が速やかに実現することを強く願うところです。

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