2022年4月1日より首都高速道路の料金アップが実施されました。そして、その翌日4月2日より、主な高速道路ではバイクを対象に待望の定率割引がスタート。ETC機器を利用、かつ事前の申し込みをすることが原則ですが、適用すればクルマの半額になるというものです。さっそく、実際に利用して検証してきました。
●文: Nom(埜邑博道)
二輪車定率割引スタート! 悲願の普通車の半額料金が実現しました!
すでにこの割引についてはご存知の方が多いと思いますが、概要をあらためて説明すると、土日・祝日に東日本/中日本/西日本のNEXCO3社および宮城県道路公社が管理する高速道路を利用するETC機器装着のバイクを対象に、料金を定率で割引くサービスで、割引対象日は令和4年4月2日(土)~11月27日(日)<北海道内は10月30日(日)まで>の土曜日、日曜日、祝日で、インターネットで事前に申し込みをすることで37.5%の料金割引を受けられるというもの。
この割引によって、実際に支払う高速道路料金は普通車の半額になるというものです。バイク業界、ユーザーにとって悲願だった「公正なバイクの高速道路料金」が条件付きとはいえ、ついに実現したのです。
ただ、気を付けないといけないのは、ETC車載器を装着していて、土日に対象の高速道路を走行しただけではこの割引は受けられないこと。
事前にインターネットで走行日を申告して申し込みをすること、各インターチェンジ(高速道路に乗ったインターチェンジと降りたンターチェンジ)間の走行距離が100kmを超える走行が対象となるなど、適用されるにはいろいろな条件があります。
これらの条件を満たした走行を土日にすることで、定率37.5%割引の料金で高速道路を走行できるというわけです。
実施内容の告知はわずか1週間前の3月25日。親方日の丸体質は変わらない
この定率割引をバイクに適用することが発表されたのは昨年の6月でした。
WEBヤングマシンでも詳細を紹介しましたが、それから今年の3月24日までの9か月間、このサービスに関する新たな情報は一切なく、4月2日のサービス開始のわずか1週間前の3月25日に唐突に具体的内容の発表が各道路会社のウェブサイトで発表されました。
筆者はサービス開始の4月2日に早速利用してみようと、今年に入ってから毎日のようにNEXCO各社のウェブサイトをチェックしていましたが、3月に入っても一切情報が出ないので何をやっているんだろうと思っていました。
このサービスは走行当日の直前でも申し込みが可能なのですが、対象外の高速道路があるなど結構、複雑です。事前にある程度、このサービスについて勉強する必要があります。
さらに、この割引サービスを受けるにはNEXCO中日本のETC割引サービスである「速旅(はやたび)」に事前に登録しなければいけなくて、その登録には普段、気にもしていないETCカード番号やETC車載器管理番号なども記載する必要があります。
たとえば、4月1日金曜日に明日から定率割引が始まるから申し込みをしてツーリングに行こうと思ったとしても、とくにETC車載器管理番号などはどこに保管していたか分からなくてアタフタしてしまう人も多いのではないかと思います(ご自分の車載器管理番号が分からない方はETC総合情報ポータルサイトをご覧ください)。
これまでの「ツーリングプラン」を利用したことがある方はすでに同様の登録をしたことがおありなので面倒とは感じないかもしれませんが、すべからくサービスというものは誰にも使いやすく、準備も十分にできる形で提供されるべきものでしょう。
この定率割引に関しては提供する側の準備期間が十分あったはずなのに、利用者には利用方法を直前にいきなり公表するというとても乱暴な印象しか残りません。
これについてNEXCO東日本の広報担当者は、関係各所と実施内容について討議を重ねてきた結果、この日の発表になったのであり、適正な日程で発表したと思うとの見解でした……。
これまで高速道路料金に関することやETC2.0についてなどを取材していて感じた、高速道路会社の親方日の丸的な「上から」の姿勢をまたまた感じてしまいました。
せっかくの割引、有意義に使って、いつでも普通車の半額実現を達成しましょう
と、文句ばかり言っていても先に進めないので、このサービスを利用してどんどんツーリングに行くことを考えましょう。まん延防止重点処置等も全国的に解除されましたから、今まで我慢してきた2年分もこの機会に取り返してしまいましょう。
このサービスを利用するには、以下の手順が必要になります。
1)申し込みサイトより二輪定率割引に申し込む
事前に、前述のNEXCO中日本サイトにある「速旅」に会員登録をしてから、中日本サイトで利用日を登録する。NEXCO東日本/西日本が管轄する道路でこのサービスを受ける際も申し込みは中日本サイトで行います。
この「事前に」というのには特例があって、たとえば高速道路を利用してツーリングしている最中に、二輪定率割引に申し込むのを忘れていたことに気づいたとしましょう。
そんなときは、途中のサービスエリアなどから申し込んで登録を完了すれば、利用当日でも定率割引が受けられるそうです。
つまり、この事前にという言葉には、高速道路の出口から出る前(「流出前」という)という意味が含まれているのです。もちろん、申込方法にはそんな利用の仕方は説明されておらず、まるで裏技のような仕組みになってしまっています。特例だからだそうですが、なんだかほかにも特例(裏技?)がありそうな気がしてしまいますね。
実際のWEB申し込みは以下のように進行します。
2)指定した利用日に対象道路を走行する
(1)の完了後に、登録したETC機器、ETCカードを利用するバイクで、高速道路の入り口および出口料金所をETC無線通信により走行する。
3)後日、ETCカード会社等から二輪車定率割引を適用した通行料金が請求される
出口料金所通過時点では定率割引料金は適用されず(WEBのETC利用照会サービスでも、通常のETC割引額が表示される)、後日、ETCカード会社等から定率割引を適用した料金が請求される(ETC利用照会サービスで確認できる)。
言葉にすると簡単ですが、事前に「速旅」会員登録をしなければいけないなど、利用するにはちょっとしたハードルがあるのは事実。さらに気を付けなければいけないのは、利用日の走行ルートに割引対象外の高速道路があるとその道路に乗り入れた時点でそれまでの走行距離が無効になってしまうこと。
ツーリングルートに首都高速道路を使用するライダーは(阪神高速道路なども同じでしょう)、NEXCO東日本管轄の高速道路の料金所から乗って、首都高を経由して他の高速道路に乗り継いで目的地に行くような場合、最初の高速道路→首都高の走行距離は一切カウントされないのです。
これは結構、面倒くさいことで、たとえば東京・練馬に住む筆者が、常磐自動車道を使用して那珂まで行くとしたら、高島平から首都高に乗って常磐道の三郷に行くまでの距離(30.8km)は100kmという走行条件には含まれないことになり、常磐自動車道の三郷から東海PA(スマートインターチェンジ)以遠まで走らなければ割引は受けられません。
しかし、高島平から首都高に乗らず、外環道の和光から常磐道にアクセスした場合は、和光からの距離(120km)が適用されます。首都高経由だと東海PA以遠まで行かなければ割引の適用にならないのが、外環道経由なら那珂の手前の水戸までで定率割引が受けられるというわけです。
これは、とても分かりにくいですね。
慢性的に混雑する首都高などの都市高速道路をなるべく利用せずに、外郭高速道路を利用させたいという各道路会社の意図は承知していますが、その意図のしわ寄せをユーザーに求めるのはいかがなものでしょうか。
誰もが利用しやすい形にして、より多くの人に使ってもらうのがサービスの基本だと思いますが、またまた真逆なことになっています。
まあ、このユーザーを置いてけぼりにするような考え方は絶対に治らないのでしょうね……。
4月2日、実際にこの定率割引を利用してみたら……
いろいろ不満に感じることはありますが、日ごろから割高だと感じていた二輪の高速料金が普通自動車の半額になるのですから、これは利用しない手はないと、サービス開始初日の4月2日に利用してみました。
筆者の自宅から最寄りの練馬ICから関越自動車道に乗ると、走行距離100km超のICは渋川伊香保以遠。最短の渋川伊香保までの距離は103.4kmなので、目的地は渋川伊香保にすることにしました。
申し込みがスタートした3月28日の10時に、NEXCO中日本のサイトでルートを登録して申し込みをし、2日に渋川伊香保まで行って来ました。
その日の夕方に帰宅して、ETC利用照会サービスを確認したら、表示されている料金は通常のETC二輪料金の2590円。これが、定率割引が適用された1590円(おそらく。これが四輪のETC料金の半額です)に表示されるのは最長で3週間後になるそうです。
以前、WEBヤングマシンに「高速道路の無料化は永遠に無理? 『料金確定まで最長3週間』で見える親方日の丸体質 …」という記事を投稿した際、高速料金の支払いにETCを利用した場合は「確定」になるまでに、各高速道路会社とのすり合わせなどが必要なため、最長3週間かかるという問題点を指摘しましたが、今回の定率割引でも同様の時間がかかるとのことでした。
ライダー念願、二輪業界悲願の普通車の半額という高速料金が曲がりなりにも実現したとても喜ばしいことなのですが、それが実現するまでの過程やNEXCO各社の対応、そして使用に当たってのハードルなど不満はまだまだあるのが正直なところです。
とはいえ、実際に普通車の半額が実現したのですから、これを足がかりに事前登録など面倒な手続きなしで、いつでも普通車の半額料金が実現するようにみなさんにもこの定率割引を積極的に活用していただきたいと思います。
GW、お盆の休日割引廃止からバイクの定率割引は除外が決定
最後になりましたが、NEXCO各社はスルッと3月16日にGW、お盆、年末年始の休日割引は行わないと発表しています。バイクの定率割引の詳細発表とはとても対照的に、非常に早い段階での発表でしたね。こういうところに、とてもイラっとしてしまうのです。
しかし、朗報もあります。
このGW、お盆の休日割引廃止からバイクの定率割引は除外され、具体的には4月29、30日、8月13、14日は定率割引対象日となるそうです。聞くところによると、自民党オートバイ議連の方々が、二輪は除外すべきだと強硬に主張してくださったとのことです。
以前の記事でも書きましたが、バイクの高速道路料金は多くの人が割高だと感じているうえに、クルマには用意されているNEXCO東日本の「ドラ割」や、NEXCO西日本の「みち旅」などといったお得な割引プランがほとんどなかったの(かろうじてツーリングプランがそれにあたるでしょうか)が現状です。
バイクはほとんどNEXCO各社の施策のメリットを享受できていないそんな状況にあって、交通集中による渋滞緩和処置としても繁忙期の料金割引除外にバイクも付合う必要はまったくないと思います。
だいたい、バイクは渋滞の原因になりにくいですしね。
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