
ラムエア加圧時で80psを発揮する史上最強ヨンヒャクが遂に降臨!基本設計を共通とするNinja ZX-25Rとは、どんな部分が違っているのか。袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたサーキットテストのファーストインプレッションを速攻でお伝えしよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
【テスター: 丸山 浩】
「SEのブルーもいいね」と語る、本誌メインテスターを務めるウィズミー会長。今回の試乗で感動し、早くもウィズミーが主催するレースでZX-4Rはじめ400ccを象としたSP400&F3クラスの新設を宣言。初戦は10/1だ!
やっぱりパワーは段違い、この速さは別次元だ!
ついにこの日がやって来た。カワサキ「Ninja ZX-4RR」の初インプレッション! ヤングマシンが初めてスクープしてからもうどれくらい経ったんだろう。開発者に聞いたところによれば、やっぱりニンジャZX-25Rの開発が始まった時から既に4Rも視野に入っていたとか。
さて、そのZX-4R。今回走行できたのはリヤサスペンションにZX-10R&6Rにも使われているSHOWAのBFRC-liteを装備した最上級仕様のRR。まずライディングポジションから報告しよう。車体はほぼ25Rと共通なので、ツーリング走りとスポーツ走りを高い次元で両立させるハンドル設定などポジション自体はほぼ同一。足着きもかかとがわずかに浮く程度と良好だ。
ただ引き起こしは若干重くなった印象で、400になったんだなと実感。SEにも跨ったが、足着きは変わらないものの、こちらの方がリヤサスは硬め。RRは高性能サスペンションらしくよく動いてくれる印象だ。
エンジンをかけてみると、図太くなかなか力強い排気音。ゼロ発進後のコンマ数秒ほどの一瞬だけ車重が増えたなりの重さを感じるが、すぐに圧倒的なエンジンパワーがそれを補って、25Rと遥かに異なる鋭い加速を見せる。そのエンジンたるや、ラム圧過給時でMAX80psというのは伊達ではなかった。特に高回転域はまったくの別次元だ。
【高回転でも止まない加速】1万2000rpm→1万4000rpmと高回転まで回していっても止むことのない強烈な加速。250である25Rでは成しえなかったパワーの限界を400である4Rは乗り越えて、その先を見せてくれる。
25Rは1万2000rpmを超えて1万4000~1万7000rpmとかなり上まで回っていくんだけど、排気量的にどうしても回転に対して速度の伸びは鈍化していってしまう。それがレッドゾーン回転こそ低くなるものの、4Rでは1万2000rpmからも怒涛の加速が止むことなく、まったくもって格が違う。私がここ袖ヶ浦フォレストレースウェイで2~3コーナーにかけての緩いカーブを中型バイクで全開にできなかったのは初めてのことかもしれない。とにかく凄さに驚かされるこのパワー!
25Rも速いと思っていたけど、4Rと比べたら音の方がスピードより先行していると思われても仕方がないかなと感じてしまう。400レプリカがなくなって長い期間が過ぎていたため忘れていたが、昔の400と250もこんな風に排気量を隔てると決定的な違いがあった。そして、それはパワーだけでなく走らせ方にも違うものが求められていた。25Rとは似て非なるのだ。
ニンジャZX-25Rよりも難しいが、得られるタイムは段違い
25Rをドカンと4秒近くもブッチギリ!!
「ZX-25Rとは似て非なるもの」。そう感じたのはパワーもさることながら、その“走らせ方”だった。端的に言うとサーキットでは25Rと同じ走りができず、難しい。コーナーでは25Rより曲がってくれないと思う人も出てくるだろう。
25Rではとにかくスロットルを開けてコーナリング速度を稼いでいく走りが基本で、その全開感を味わえるのが魅力だった。一方、4RRはパワーが強烈であるがゆえに、もっと上手く走りを組み立てる必要が出てくる。リヤサスはストリートに合わせた標準設定のままだったので、コーナーでサスが入りすぎてリヤ下がりな印象で、これも曲がりにくさを覚える要因にはなっていた。
だが、それよりもダブルディスクとなったフロントまわりが重くなった分、必然的に25Rより回頭性そのものが下がってしまう。こちらが何より大きい。だから上手く曲がるためにはイケイケではなく、ちゃんと進入ラインからブレーキタイミング、脱出速度まで見越して走りの組み立てをキチンと行わなくてはダメ。
そうやってもコーナリング速度自体は25Rの方が稼ぎやすいので、パワーによる直線での稼ぎ分と相殺してラップタイム全体としては25Rと大体同じところに収まるんじゃないかなというのが最初の印象だった。
ところがラップタイムを見てみるとビックリだ。袖ヶ浦フォレストでのノーマル25R標準ラップタイムはだいたい1分20秒前後。それが4RRは1本目の走行でいきなり驚きの1分17秒台。2本目を走ると1分16秒台まで入れることができた。MAX77ps(ラムエア加圧時80ps)だとこんなにも違うのかと走行データを確認してみると、やはり立ち上がりからのパワーで圧倒的に稼いでいる。
走行モードはトラクションコントロールシステムがレベル1でかかるSPORTモードを使用していたが、タイヤのグリップが追いつかず頻繁に介入を始めたので、最後はトラコンOFFにして走るほど。このパワーにはサーキット用のハイグリップタイヤが本気で欲しくなる。
標準装着タイヤのダンロップ製GPR-300は端のグリップ力を強化した4R専用タイプ。それでもサーキットでの全開走行ではもっとハイグリップが欲しくなるほどのパワー感だ。
全体的な印象として、難しさは25Rよりあるが、その先にある速さの世界を体験させる4RRは、10Rや6Rなど超本格スーパースポーツの世界の入口に到達したライダーを対象としている感じだ。ライダーを育てるマシンとも言える。
このようにサーキットでは25Rより上のライディングスキルが要求される4RRだったが、その一方で公道では難しさよりもメリットが光る部分が多いのではとも感じさせられた。排気量が多いとエンジンを回さなくても楽にスピードが取り出せるし、峠道ではギヤチェンジを頻繁に行わなくとも1つのギヤで済む場面が多くなって楽になる。坂道発進も25Rより断然楽だろう。このことは中型バイクから大型に乗り換えた人ならよくご存じのはず。
それに車格自体は25Rと同じコンパクトさ。パワーはひと頃の600に近いのに、手軽さ感では25Rとそんなに変わらない。ライディングモードも25Rでは「SPORT」と「ROAD」の差をあまり感じなかったけど、4RRではもっとそれを感じさせてくれそうな雰囲だった。このあたりヤングマシン10月号以降では公道に持ち込んでじっくりとテストしていってみたい。まだまだ新しい発見がありそうだ。
【袖ヶ浦フォレストレースウェイ 走行データ比較】“走らせ方”が全然違う!
ノーマル25R:1分23秒
カスタム25R:1分16秒4
今回の4RR:1分16秒8
4Rはダブルディスクでフロントまわりが重量増。また排気量増に合わせてクランクマスも増大。こうして増えた重量が回頭性を妨げてしまう。25Rとは違う走り方が必要だ。(写真は’22年にテストした際の25R)
上のグラフは今回走ったZX-4RR(青)と、以前にデータを採ったZX-25R SEノーマル(緑)および、ハイグリップタイヤなどを装着したZX-25Rレーサー改(赤)との比較を行ったもの。4RRはダブルディスクの能力で高い速度から強力に減速。そして立ち上がりからはパワーで一気に差をつける。この走りは大型SSのそれに近くなっているようなもの。それだけスキルも要求される。
また、コーナリングが難しいと感じつつも速度自体は25Rノーマルと同等なのは4RRの凄いところと言えるだろう。25Rレーサー改は武器である旋回速度を徹底的に高めている。250と400の走り方は突き詰めていくと、こういった所で違いを出すのだ。
ライディングポジション
【扱いやすいライポジ。引き起こしは25Rより重さを感じる】基本的には25Rと同じ前傾しながら公道でも扱いやすいライディングポジション。タイヤが1サイズ太くなったことなどで25Rよりシート高は15㎜増となるが、足着きはかかとが若干浮く程度。引き起こしは少々重たくなって400になったと感じさせる。 ※身長168cm/体重61kg
タイプは2種類、カラーは全部で3色
国内で発売されるのは、ZX-4R SEとRRの2グレード。青と黒が用意されるSEはフレームスライダーとスモークスクリーン、USB電源ソケットが専用装備。ライムグリーンKRTカラーのRRはSHOWA製バランスフリーリヤクッションとリンクプレート、クリアスクリーンが専用装備だ。※SEには今回試乗できず
ニンジャZX-4R SE / 4RR ディテール
史上最強80psの400直4エンジン
エンジンは399ccのDOHC4バルブ水冷4 ストローク並列4気筒。腰上は新作となるが、腰下はミッション含め25Rと共通となっている。クイックシフターは双方向対応。ラムエアは前方ダクトからカウル左を通ってエアクリーナーに導かれる。
RRにはZX-10R譲りのリヤサスを装備
SEはプリロード調整のみ付いている標準的なショックユニット、RRはZX-10Rと同タイプのフルアジャスタブルSHOWA製BFRC-liteと専用リンクをリヤに装備。フロントはSE、RRともプリロード調整付きSFF-BP倒立タイプを採用する。
メーター表示はサーキットモードあり。スマホ連携機能付きだ!
メーターには4.3インチカラーTFTとなった’23年型ZX-25Rと共通ユニットを採用。背景色を白と黒に切り替えられるほか、レイアウトも通常モードとサーキットモードが選択可能。Bluetoothも搭載しスマートフォンとの連携機能を持っている。
SEは充実装備
SEはフレームスライダーにスモークシールド、それにUSB電源ソケットと、ストリートユースで役立つものを専用装備として採用。ETC2.0車載器キットはSE、RRともオプションとなっている。
スペック比較【4RR vs 25R】
| 車名 | Ninja ZX-4R SE / Ninja ZX-4RR KRT EDITION | Ninja ZX-25R SE/KRT |
| 全長×全幅×全高 | 1990×765×1110mm | 1980×750×1110mm |
| 軸距 | 1380mm | ← |
| 最低地上高 | 135mm | 145mm |
| シート高 | 800mm | 785mm |
| キャスター/トレール | 23.5°/97mm | 24.2°/ 99mm |
| 装備重量 | SE=190kg/RR=189kg | 184kg |
| エンジン型式 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ | ← |
| 総排気量 | 399cc | 249cc |
| 内径×行程 | 57.0×39.1mm | 50.0×31.8mm |
| 圧縮比 | 12.3:1 | 12.5:1 |
| 最高出力 | 77ps/14500rpm(ラムエア加圧時80ps/14500rpm) | 48ps/15500rpm(ラムエア加圧時49ps/15500rpm) |
| 最大トルク | 4.0kg-m/13000rpm | 2.2kg-m/12500rpm |
| 変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
| 燃料タンク容量 | 15L | ← |
| WMTC燃費 | 20.4km/L(クラス3-2、1名乗車時) | 18.7km/L(クラス3-2、1名乗車時) |
| タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 | 110/70R17 |
| タイヤサイズ後 | 160/60ZR17 | 150/60R17 |
| ブレーキ前 | φ290mmダブルディスク+4ポットキャリパー | φ310mmディスク+4ポットキャリパー |
| ブレーキ後 | φ220mmディスク+2ポットキャリパー | φ220mmディスク+2ポットキャリパー |
| 乗車定員 | 2名 | 2名 |
| 価格 | SE=112万2000円/RR=115万5000円 | 96万2500円 |
| 色 | SE=黒×灰、青×黒/RR=ライムグリーン×黒 | SE=赤×黒、灰×黒/SE KRT=ライムグリーン×黒 |
| 発売日 | 2023年7月15日 | 2023年4月15日 |
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
速ぇ!!! 音が気持ちいい!!! 10年くらい前まで、国内向けのバイクには排気量帯ごとに最高出力の自主規制というものが存在し、400ccは53ps(1992年以前は59ps)、600ccは69ps、7[…]
これはクルーザーじゃない?! 扱いやすさを基本とした“ネイキッド”の復活 扱いやすい低回転域と伸びやかな高回転域の二面性が楽しい並列2気筒エンジン、178kgの車重を感じさせない軽快かつ自由自在なハン[…]
CB400SFのリニューアルではなく、完全新設計の可能性 ヤングマシンでは以前より、ホンダが400〜500ccクラスのミドル4気筒を開発中と報じてきたが、それはCB400SF/SBを最新規制に合わせア[…]
カワサキがフェイスブックで展開している「Kawasaki - RIDEOLOGY」というページをご存じだろうか。カワサキの伝統と哲学、そして情熱を伝えるページで、英語と日本語が入り混じりながらカワサキ[…]
日本国内の'18年400cc市場において上半期トップセールスとなったNinja400は海外でも大好評。その実力は最強と謳われた往年の400レプリカと比べるとどうなのか。そんな疑問に答えるためドイツのモ[…]
最新の関連記事(ニンジャZX-4Rシリーズ)
北米仕様ではそれぞれ4カラーの多色展開 カワサキは北米で、フルカウルスポーツ「ニンジャ」ファミリーを発表。本記事では4気筒モデル「Ninja ZX-6R」「Ninja ZX-4R /4RR」を紹介しよ[…]
4気筒の「ニンジャZX-R」、2気筒「ニンジャ」計6モデルに10色を新設定 カワサキは欧州でフルカウルスポーツ「ニンジャ」ファミリーのうち、4気筒モデル「Ninja ZX-6R」「Ninja ZX-4[…]
ニューカラーにスマートフォン接続機能が進化 2026年モデルでパッと目を引くのは、やはりカラー&グラフィックの変更だ。「Ninja ZX-4R SE」は、パールロボティックホワイト×メタリックスパーク[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
最新の関連記事(新型小型二輪 [251〜400cc])
「ハーレーダビッドソン東大阪」と「AELLA」が共同開発 ブラックに塗装されたメガホン形状のサイレンサーは、ハーレーダビッドソン東大阪と京都のカスタムパーツメーカー「AELLA(アエラ」)が共同で開発[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
10/1発売:カワサキ「Ninja ZX-25R SE/RR」 250ccクラスで孤高の存在感を放つ4気筒モデル、「Ninja ZX-25R」の2026年モデルが早くも登場する。今回のモデルチェンジで[…]
ニンジャ400と同日発売のストリートファイター カワサキモータースジャパンは、Z250と共通の車体に398ccの並列2気筒エンジンを搭載し、タイヤをラジアルに換装したストリートファイター「Z400」の[…]
ダーク系カラーに異なる差し色 カワサキモータースジャパンは、ニンジャ250と共通の車体に398ccの並列2気筒エンジンを搭載し、タイヤをラジアルに換装したフルカウルスポーツ「ニンジャ400」の2026[…]
人気記事ランキング(全体)
マニア好みのボルドールカラーが映える! アクティブが手掛けるCB1000Fカスタムだが、まずはカラーリングがインパクト大! CB-Fといえば、純正カラーでも用意されるシルバーにブルーのグラフィックの、[…]
シグナスシリーズ、20年の歴史を背負うニューフェイス 以前は空冷エンジン搭載のコンパクトな原付二種スポーツスクーターとして人気を博した「シグナスX」だが、水冷の新世代「シグナス グリファス」に交代した[…]
気鋭のクルーザー専業ブランドによるカスタムクルーザー 以前に試乗記事などをお届けしたBENDA(ベンダ)がいよいよ本格上陸する。日本での輸入販売を手掛けるウイングフットより取り扱い開始が発表されたのだ[…]
軽量で扱いやすい定番ジェット TE-1はスポーティな印象を残しつつ、重量は抑えめで日常使いに適したジェット型ヘルメットです。対応は全排気量対応で、あごひもは操作しやすいラチェット式バックルを採用。Am[…]
原付免許で乗れる『新しい区分の原付バイク』にHondaが4モデルを投入! 新たな排ガス規制の適用に伴い2025年10月末をもってHondaの50cc車両は生産を終了しますが、2025年4月1日に行われ[…]
最新の投稿記事(全体)
CB1000Fをレジェンド、フレディ・スペンサーが試乗 Hondaホームカミング熊本にて、レジェンドライダーのフレディ・スペンサーがCB1000Fをサーキットでガチ走行。彼は「ビッグバイクでありながら[…]
憧れはあるけれど… 先日、周りのバイク好きの仲間から「旧車って今凄い高くなってるよね~」という話を聞きました。少し調べてみると、絶版車が増えてきている流れで、旧車の需要が高まっている様子。 …と偉そう[…]
1.生徒にアンケート調査!<免許取得と車両の購入> 坂本先生は、本年7月に北杜高校の生徒を対象に安全意識に関するアンケート調査を行った。対象は原付免許を持つ2.3年生の生徒100名と、小学校時に自転車[…]
背中が出にくい設計とストレッチ素材で快適性を確保 このインナーのポイントは、ハーフジップ/長めの着丈/背面ストレッチ素材」という3点だ。防風性能に特化した前面と、可動性を損なわない背面ストレッチにより[…]
防寒性能と動きやすさを両立させたライディングジャケットを探しているなら、コミネ(KOMINE)の「ソフトシェルウインターパーカ MJ-005」を選択肢に入れておきたい。1947年創業の国内メーカーらし[…]
- 1
- 2

















![KAWASAKI ZXR400[1994] vs Ninja400[2018]](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2019/02/img00-17.jpg)



































