今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はホンダのCB750フォアについて、本機に精通するベイエリアモータース代表・市川直寛氏に話を伺った。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ベイエリアモータース
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:型式に対する認識が徐々に変化
’03年の創業以来、ベイエリアモータースでは多くのCB750フォアの販売・整備を行っている。創業時と現在を比較して、この車両を取り巻く状況にはどんな変化はあったのだろうか。
「一番大きな変化は、中古車価格が上がって入手のハードルが高くなったことですが、一方でリプロパーツが充実してきたので、整備は行いやすくなっています。それに加えて、後期型をそのままの姿で普通に乗る人が増えたことは、面白い変化だと思いますね。
一昔前の後期型オーナーは、いつかはK0と考えている人や、K0ルックのカスタムを希望する人が多かったのですが、最近は型式にこだわる人が少なくなってきました。ちなみにK0好きの間では、かつてはネジ1本まで純正でなくては…という主張が珍しくなかったのですが、近年はそういう話を聞く機会も減ってきたように思います」
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:ノーマルのフィーリングは絶妙です
同時代のカワサキZシリーズが、カスタムの素材と考えられることが多いのに対して、CB750フォアはノーマル派が主力である。その理由を、市川さんはどう考えているのだろう。
「あくまでも私見ですが、いい意味でも悪い意味でもスキがあって、ライディング中にいろいろなカスタムプランが浮かぶZとは異なり、CB750フォアはノーマルがベスト、と感じることが多いんですよ。
そしてノーマルの重要パーツの筆頭に挙がるのが大アップハンドルと4本出しマフラーで、この2つに価値を見出すと、カスタムが進めづらいような気はします。また、車載状態でエンジンがいじれないことや(Zシリーズは腰上の分解整備が可能)、特殊な構造のフロントブレーキキャリパーの変更が難しいことも、カスタムを妨げる一因かもしれません」
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:各部の熟成が進んだK3以降がオススメ
CB750フォアの購入を希望しているお客さんがベイエリアモータースに来店して、年式/型式に関するこだわりが特にない場合、市川さんはK3~K6を勧めることが多いと言う。
「K0やK1と比べると、価格が格段に安いという理由もありますが、K3以降は構造を一新したフロントフォークの動きがすごくよくなっているんですよ。ただし信頼性や安全性という視点で見るなら、K2で1段、K4でさらに1段上がったという印象ですから、厳密に言うとK4以降がいいのかもしれません。もちろんスタイルが気に入っているなら、タマ数は多くないですが、最終型のK7やカフェレーサーのIIもアリだと思いますよ」
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:状態のいい車両は多め
中古車の程度に関しても、ZとCB750フォアには差がある模様。
「素性がハッキリしない中古車が新規で入庫した場合、Zシリーズは十中八九以上の確率で重整備が必要になりますが、CB750フォアは一般的な整備で気持ち良く走り出せる車両が、まだ多少は存在します。やっぱり生産台数が多いぶん、CB750フォアのほうが良好な車両が残っている確率は高いのでしょう。
と言っても、それはあくまでも傾向の話で、CB750フォアも程度が劣悪な中古車は少なくないですし、いくらコンディションが良好な車両でも、40年以上という年月の経過を考えれば、フルレストアをしない限り、実際に走り出してからはいろいろな整備が必要になります。まあでも、乗りながら少しずつ完調に戻していくのは、それはそれで楽しいものですよ」
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:旧車デビューの入門的存在
近年の同店に新規で来店するお客さんは、初めての旧車がCB750フォアというケースが少なくないと言う。そんなお客さんに対して、市川さんはどんなアドバイスをしているのだろう。
「真夏の渋滞路をできるだけ避けること、ブレーキが近年のバイクのようには利かないこと、異変を感じたら絶対に無理をしないこと、くらいでしょうか。逆に言うならCB750フォアは、決して扱いが難しいバイクではないんですよ。
もし気軽に乗れないなら、その車両はどこかに問題があるはずなので、そういう場合はプロの診断を受けたほうがいいと思います。もちろんウチでも診断は行っているので、どんなことでも気軽に相談して欲しいですね」
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