「上がりのバイク」や「大人のスポーツバイク」なんて言われることの多いHAWK 11だけに、雰囲気寄りのインプレッションが多い。そこでたまには趣向を変えて……というわけでもないが、普通のツインスポーツとしてどんな乗り物なのかをざっくりとお届けしてみたい。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:HondaGO BIKE LAB
270度点火の美味しいところだけを味わえる
操作の軽いクラッチレバーを引き、ややストロークが長めのシフトペダルを踏み込んで1速に入れる。半クラッチで発進し、スロットルを開けて加速していく。
本当にクセがない。
アフリカツイン系と基本を同じくする1082ccの並列2気筒エンジンは、排気量なりのパルス感こそあるものの、だからといってギクシャクしたり強力すぎるトルクで先走ったりすることもない。
もっとも多様な個性をつくり出す2気筒、それも大排気量のエンジンを搭載するスポーツバイクがホンダ「HAWK(ホーク)11」だ。2気筒スポーツバイクには、V型や並列、水平対向、縦置きVなど様々あるが、HAWK 11の並列2気筒エンジンは270度位相クランクを採用しており、点火間隔は挟み角90度のV型2気筒に等しい270度/450度となっている。
最近は多くのメーカーが採用してきている270度クランクの並列2気筒だが、その特徴はスロットルを開けたときの路面を蹴るようなパルシブなトルクと、スロットルを戻したときに左右の気筒が慣性トルク変動を打ち消し合って、開けた時からイメージするよりもずっとスムーズなエンジンブレーキを発生するところだろう。
HAWK 11は、そんな並列2気筒勢の中でも相当にニュートラルな特性だ。同系エンジンを搭載するクルーザーのレブル1100は、低中速トルクを強化しながら最高出力は抑制し、重たいクランクマスを採用することからドロドロとした雰囲気も醸し出している。また、アフリカツインはもう少しピックアップが鋭い感じがするのだが、HAWK 11は兄弟車のNT1100とともに自然なフィーリングを追求しているように思う。
特に秀逸なのは、頻繁なギヤチェンジをせずに、低~中回転を使ってスロットル操作で操っているときの太いトルク感だ。高めのギヤでこれを行うと、せわしない回転の上昇/下降をともなうことなく幅広い速度レンジに対応してくれる。具体的には、2500~4500rpm程度でスロットルを開け閉めするのが楽しくて仕方がない。もちろん、それよりも高い回転域を使えばとてもパワフル。後輪が路面を蹴る感じがとても気持ちいい。
それでも、速すぎないのがいい。102ps/7500rpmは公道で十分に手に余るが、意に反して高すぎる速度域に連れて行かれる特性ではないし、ライダーのスキルが多少未熟でも、コントロール下にいてくれる範囲が広いのだ。
クセが強くなりがちなツインスポーツを、HAWK 11はこのエンジンをもって身近な存在にしてくれている。
スポーツバイクの醍醐味を、優しく教えてくれる
一方で、車体はけっこう面白い構成だ。ホイールベース1510mmは前傾ポジションのスポーツバイクとしては長めであり、これに820mmのシート高とセパレートハンドル、前後17インチホイールを組み合わせている。
たとえばCBR1000RR-Rはホイールベース1460mm/シート高830mmだが、これでもリッタースポーツ勢の中では長いほう。近い数値といえばCB1300SF/SBのホイールベース1520㎜だろうか。
そんなサイズ感のHAWK 11は、前後に長い車体の上に覆いかぶさるようなライディングポジションで、ハンドル幅もやや広め。なのに車体の芯を意識しやすいフィーリングで、低い速度域&浅いバンク領域でもロールや舵の入り方が馴染みやすくわかりやすい。これは、装備重量214kgという軽量さやホンダの巧みな車体設定に加え、きわめてニュートラルな特性のタイヤ・ダンロップGPR300の採用も利いているように思えた。
また、並列2気筒エンジンも、V型のようにスリムだが質量が分散している……ということもなく、重心近くにまとまっている印象。大排気量エンジンだけに重量物を抱えて走っている感覚はあるが、やはりニュートラルな特性にひと役買っている。
ロングホイールベースならではのゆったりした向き変えに対し、ロールは軽快でクセがない。ゆえに車体を寝かしている時間がわずかに長めで、速さや鋭さをアピールすることはなくとも、コーナリングしている実感が得やすい。かといって、操作を間違えれば破綻のない範囲で違和感としてそれを知らせてくれる。
ホンダは、同系エンジンの他機種では(DCT)デュアルクラッチトランスミッションもラインナップし、オートマチックで乗れるように幅広いライダー層へと門戸を開いているが、このHAWK 11はMT=マニュアルトランスミッションのみ。ここに意味が込められているように思えてならない。
シャカリキになって飛ばすようなバイクではないが、軽い力で操作できるレバー類や扱いやすいエンジン&車体で、ライディングの基本とツインスポーツの醍醐味をさりげなく教えてくれる存在なのだ。
「大人のスポーツ」だとか「上がりのバイク」なんて言葉にも頷くところはあるが、キャリアが浅くても楽しめる懐の深さを、HAWK 11は持っている。
【HONDA HAWK11】■全長:2190 全幅:710 全高:1160 軸距:1510 シート高:820(各mm) 車重:214kg ■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 1082cc 最高出力:102ps/7500rpm 最大トルク:10.6kg-m/6250rpm 燃料タンク容量:14L ■ブレーキ形式F=Wディスク R=ディスク ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:青 黒 ●価格:139万7000円 ●発売日:’22年9月29日
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ライディングポジションはレーシーだがラクチンだ! 「速くない、でも少し速い」だって…? 開発者がプレゼンテーションで提示してきたキャッチフレーズは、なかなか挑戦的だ。しかも、人生の大半をずっと乗り続け[…]
ホンダ ホーク11 概要 スタイリング ライディングポジション エンジン 足まわり 主要装備 オプションでさらに魅力的に モリワキのスリップオン/デイトナのエンジンガード/タナックスのサイドバッグなど[…]
‘22 ホンダ ホーク11 概要 ホンダ ホーク11 開発者座談会 吉田昌弘氏:ホーク11開発責任者代行完成車開発部アシスタントチーフエンジニア倉澤侑史氏:パワーユニット開発部動力設計指導員三木聡介氏[…]
「味わいで勝負すると、ここまでメーカーごとにコンセプトが変わるとは。コレが最高に面白い!」 ネオクラシックのナニが面白いかと言えば、各バイクメーカーでネオクラの解釈がみんな違うところ。とても同じカテゴ[…]
要注目! 2年目の新色で大化けを期待 レトロモダンなカフェレーサーとして'22年にデビューした、ホンダ ホーク11。最大の特徴はFRPを用いたロケットカウルだ。その造形美を際立たせるため単色としている[…]
最新の関連記事(ホーク11)
バイクとの出会いは小学生 リサさんが初めてバイクと触れ合ったのは小学生の時。元々お父さんがバイク好きでリサさんが小学生の時にリターンしてバイクを再び楽しみ始め、リサさんもタンデムシートに乗っていたそう[…]
冬はHAWK 11(ホーク11)を楽しめない? HAWK 11というバイクを所有するオーナーにとって、冬はすこし『我慢の季節』だ。 長年バイクに乗ってきた人には釈迦に説法というものだけれど、寒い時期の[…]
大人は、それほど暇じゃない 年を重ねてみないとわからないもの、というのはけっこう多い。そして、そのひとつに『自分の時間が取れないこと』がある。 仕事は昔と違って責任のある立場だし、やることも多い。だか[…]
無事にHAWK 11(ホーク 11)の納車日を迎えました! 待ちに待った納車で、前日は遠足前の学生のような気持ちでなかなか眠りにつけませんでした(笑) 大人になってもこんなことってあるんですね!つくづ[…]
現代の『新しいカフェレーサー』を目指すというコンセプト HAWK 11はワインディングを楽しむための大型オンロードスポーツとして仕立てられたバイクであり、古き良き時代を懐かしむための懐古的なバイクでは[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
しっかりとした防寒対策をすれば冬ならではの魅力が楽しめる! じっとしているだけでも寒い季節…さらに走行風を浴びるバイクって何が楽しいの? と思われる方も多いかもしれません。たしかに寒さの感じ方は、人そ[…]
6速MT仕様に加えEクラッチ仕様を設定、SエディションはEクラッチ仕様のみに 2017年4月に発売され、翌年から2024年まで7年連続で軽二輪クラスの販売台数で断トツの1位を記録し続けているレブル25[…]
大容量ラゲッジボックスやスマートキーシステム、USB-Cなど充実装備は継承 ホンダは、原付二種スクーター「PCX」および軽二輪スクーター「PCX160」にマイナーチェンジを施し、2025年モデルとして[…]
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
免許取得と同時にCBR250RRを購入 胡桃さんはお父さんのバイクの後ろに乗ってその楽しさに目覚めました。バイク屋さんで見たCBR250RRに一目惚れして購入を決意。普通二輪免許を取得してからは夢中に[…]
人気記事ランキング(全体)
私は冬用グローブを使うときにインナーグローブを併用しています。防寒目的もありますし、冬用グローブを清潔に保つ目的もあります。最近、長年使い続けたインナーグローブが破れてしまったこともあり、新品にしよう[…]
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
白バイ隊員はバイクバカ⁉ 白バイに乗りたい、白バイ隊員になりたい、と白バイ隊員を目指す警察官のなかでバイクに関心のない人はいないと言い切っていいかと思います。少なくとも私が知るなかではひとりもいません[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
最新の投稿記事(全体)
[◯] Vツインの味わい不変。Xはスタイリッシュだ 初出は1999年という非常に長い歴史を持つスズキのSV650。国内の新排ガス規制に対応した結果、最高出力は76.1→72psに、最大トルクは64→6[…]
突然の交通取り締まり! 違反をしていないときでも… 交通ルールを守って安全運転に努めているのに、とつぜん取り締まり中の警察官に止められてしまった経験がある方は多いはずです。 「え? なにか違反した?」[…]
グローバルサイトでは「e-アドレス」「アドレス125」と表記! スズキが新型バッテリーEV(BEV)スクーター「e-ACCESS(e-アクセス)」、新型スクーター「ACCESS(アクセス)」、バイオエ[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
時期が合えば水仙と桜の共演も 日本の三大水仙群生地と呼ばれているのが、福井県の越前海岸と、兵庫県の淡路島、そして千葉県の南房総:鋸南町である。鋸南町の水仙は12月中旬から1月下旬が見頃で、2025年も[…]
- 1
- 2