今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はホンダのCB750フォアをあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:ベイエリアモータース
ホンダ CB750フォア:同時代のカワサキZより敷居は低い?
第二次世界大戦後の’48年に創業したにも関わらず、’60年代初頭に2輪車生産台数世界一の称号を獲得し、’66年には世界グランプリで驚異の全クラス制覇を成し遂げたホンダ。そんな同社が、欧米の古豪メーカーに真っ向勝負を挑んだ初めての大排気量車が、’68年の東京モーターショーで公開され、翌’69年から発売が始まったCB750フォアである。
一般的な量産車では世界初となる並列4気筒エンジンと油圧式フロントディスクブレーキ、そして同社初の本格的なダブルクレードルフレームを導入したこのモデルの大成功で、ホンダは名実共に世界ナンバーワンメーカーの地位を確立したのだ。
ちなみに、昨今では日本製並列4気筒車の基盤を作ったと言われているCB750フォアだが、この車両のエンジンは以後のライバル勢とは一線を画する、独創的な機構を随所に採用していた。中でも最も注目するべき要素は、左右幅の縮小を考慮したロングストローク指向のボア×ストローク、全高を抑えるために採用されたOHCの動弁系やドライサンプ式の潤滑だが、スムーズな吹け上がりと良好な生産性に寄与するプレーンメタル支持の一体鍛造クランクシャフト+分割式コンロッドも、当時としては画期的な要素だった。
また、現役時代から近年に至るまで、このモデルはカワサキZシリーズが最大のライバルと目されることが多いものの、’73~’80年型の総生産台数が約30万だったZシリーズに対して、CB750フォアは約10年間で60万台前後を販売。そしてデビューの数年後から頻繁な仕様変更を繰り返したZシリーズとは異なり、CB750フォアは初代の基本設計を頑なに維持していた。
ホンダ CB750フォア:堅実な改良を重ねつつ、派生機種を展開
基本設計に大きな変更はなかったものの、CB750フォアは約10年の生産期間中に数々の刷新を受けている。
以下に概要を記すと、まず’69年型K0は約7400台を生産した時点で、クランクケースを砂型→金型、キャブレターの開閉を4本引き→リンク式に変更。
’70年型K1ではシートとサイドカバーが見直され、’72年型K2は吸排気系や前後ショックを改善すると同時に、安全性に配慮した装備を追加。
そしてK2の思想をさらに推し進めた’74年型K4で、このモデルはひとつの完成形に達したのだが、’77年型K7ではクルーザー的な軌道修正が行われることとなった。
ホンダ CB750フォア 絶版中古車の現状
昨今の中古車市場において、CB750フォアの価格はZシリーズほどの高騰はしていない。もっとも、K0を筆頭とする初期モデルは500万円以上が珍しくないのだが、’70年代中盤以降のモデルなら、100~200万円前後の中古車が数多く存在する。’70~’80年代車を得意とするベイエリアモータースの市川直寛さんは語る。
「タマ数が豊富なことに加えて、程度が良好な中古車がまだ存在することも、CB750フォアの特徴かもしれません。あくまでも私見ですが、車両の価格と整備費用を考えると、ZよりCBのほうが敷居は低い気がしますね」
中古車相場は100~600万円:年式が新しいほど安くなる傾向
CB750フォアの中古車相場は、年式が新しいほど安くなる傾向。400万円以下でクランクケースが砂型鋳造のK0を探すのは難しいが、K2以降なら100万円台での購入が不可能ではない。タマ数はかなり豊富で、当記事を執筆している’23年1月の時点では、中古車検索サイトで150台以上、ヤフオクで50台前後が確認できた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載] プロに学ぶ’80s国産名車メンテナンス)
ホンダ CB750フォア 有識者インタビュー:型式に対する認識が徐々に変化 ’03年の創業以来、ベイエリアモータースでは多くのCB750フォアの販売・整備を行っている。創業時と現在を比較して、この車両[…]
ホンダ CB750フォア:経年劣化はあるものの耐久性は十二分 CB750フォアの弱点をネットで調べると、カムチェーンテンショナーの作動不良、シリンダーヘッド下部のシーリングラバーの劣化によるオイル漏れ[…]
カワサキ 900スーパー4 Z1:Z1乗りの”夢”を実現するGPクラフト 空冷Zシリーズを得意とするショップでは、ノーマルスタイルを重視したり、往年のAMAスーパーバイクレーサーが念頭にあったり、現代[…]
カワサキ 900スーパー4 Z1:クランクやフレームにもダメージが発生している GPクラフトではメンテナンスとカスタムだけではなく、車両販売も行っている。そして’90年代の同店がアメリカから輸入した空[…]
カワサキ 900スーパー4 Z1: 車両価格は高価だが整備環境は良好 量産初の並列4気筒車という称号は、’69年にホンダが発売したCB750フォアに譲ったものの、’72年秋からカワサキが海外市場での販[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ハイパワーだけでなく、本来持つテイスティさを損なわず、より“らしさ”を強調するストロークアップ エンジンを強化する際、排気量アップが効果的なのはたやすくイメージできるだろう。ハーレーダビッドソンはエボ[…]
直線基調の斬新スタイルへの挑戦 「デザインの源流はバック・トゥ・ザ・フューチャー」 好みにカスタムしたバイクで行きつけのカフェに向かい、日がな一日、気の合う仲間とバイクを眺め、バイク談義に耽る。 その[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
リグニスによるカスタムコンプリートのニューモデル『フリスコスタイル』とは 「これこれっ、これなんだよなぁ」と、エボリューションVツインを知る人はもちろん、もしかしたらハーレーダビッドソンに乗ったことが[…]
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
人気記事ランキング(全体)
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
ライトグレーのボディにライトブルーのホイールが新鮮! ヤマハが「MT-25」の2025年モデルをインドネシアで世界初公開した。欧州で発表済みの兄弟モデル・MT-03に準じたモデルチェンジ内容で、現地価[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の投稿記事(全体)
先日、バイク好きな友人と車でドライブしているときに(私は助手席だけれど…)ライダー同士がすれ違う際に、ピースをしあっている光景を見た。なんだか楽しそうなことしてるなーと思い、「あれって、車に乗ってる俺[…]
スパナプライヤー:刻みのないジョーが平行にスライド。スパナのように使えるプライヤー ストレートのスパナプライヤーは、細部の形状や仕上げは異なるものの、ヒンジの仕組みや特徴はクニペックスのプライヤーレン[…]
ハイパワーだけでなく、本来持つテイスティさを損なわず、より“らしさ”を強調するストロークアップ エンジンを強化する際、排気量アップが効果的なのはたやすくイメージできるだろう。ハーレーダビッドソンはエボ[…]
直線基調の斬新スタイルへの挑戦 「デザインの源流はバック・トゥ・ザ・フューチャー」 好みにカスタムしたバイクで行きつけのカフェに向かい、日がな一日、気の合う仲間とバイクを眺め、バイク談義に耽る。 その[…]
1位:ホンダ新型「CB1000」8月時点最新情報まとめ ホンダがCB1000ホーネットをベースに、CB1300の後継機として開発を進めているというウワサの新型CB1000。その8月時点のスクープ情報ま[…]
- 1
- 2