ライダーが増え、バイクが売れているいま、その背後にある不安や不満を払しょくするために各界のトップはどう考えているのか。全国のバイクショップで構成される全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)会長の大村さんに、我々ユーザーに一番身近な存在であるバイクショップの立場から、いま取り組んでいる事柄を聞いた。
●取材/文:ヤングマシン編集部(Nom) ●写真:Nom、田中淳麿、AJ
約500万人が便利に利用している原付一種の存続を強く訴えていく
全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)は、日本全国の約1600社のバイクショップが加盟する都道府県単位の協同組合で組織される団体で、大村さんは2016年から会長を務めている。
バイクユーザーにとってもっとも身近なバイク販売店の代表として、先代会長の吉田さんの時代からバイクの利用環境の改善に取組んできた。
高速道路の2人乗り解禁、大型自動二輪免許の教習所での取得可能化、最近の例では割高なバイクの高速道路料金の是正を自民党や公明党のオートバイ議連等政治家と緊密に連携しながら強く訴えていて、ツーリング割引やETC定率割引の実現はAJの活動の成果と言えるものだ。
バイクユーザーがよりバイクを楽しめるようにと日々活動しているAJの代表として、いま大村会長が最重要視して取組んでいるのが「原付一種」、50ccバイクの存続問題だ。
ご存知のように、バイクの排ガス規制も強化の一途をたどっていて、最新の令和2年排ガス規制は世界でもっとも厳しい欧州の「ユーロ5」と同等の規制で、新型車(全排気量)は令和2年(2020年)12月から、継続生産車は令和4年(2022年)11月から適用対象となる。本誌でも、この規制によってディスコンになる車種をお伝えしてきたように、かなりの数の現行モデルが絶滅するような状況なのだ。
ただし、この令和2年規制には例外がひとつだけあって、原付一種の継続生産車は令和7年(2025年)10月まで適用の猶予が与えられている。これは、この規制に対応するためにはコストが莫大にかかる変更が必要となり、そうなると原付一種はユーザーが手軽に買えるものではなくなることが明白で、AJが中心になって反対したことによるものだ。
「いまでも全国で500万人(編注:自工会の発表によると2021年3月末で保有台数は465万2000台)が日常の足として便利に使っている原付一種を、絶対になくしてはいけない。存続させないといけないと思っています。なので、2022年から2027年に5年間、規制の施行を猶予してくれるよう強く働きかけました。中央環境審議会で各界の識者や科学者が討議を重ねて決めたことを一部でも変更するなんて、前代未聞だと言われましたよ」
規制の施行を遅らせはしたが、もはや日本にしかマーケットがない原付一種は製造原価もどうしても高くなるし、原付一種クラスのコミューターとしてはEVも現れ始めている。
「5年くらい前は、エンジンを使う原付一種を残そうなんて言う人は誰もいませんでしたが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機になったことなどもあって、最近はメーカーの販売会社の方々の中にもエンジンを使う原付を残そうという考えが出てきています。ただそれは、最高出力など車両の規格も含めて、いまの原付一種に該当する小さい乗り物をどうやって残すかということでもあり、もしそれがエンジン車ではなくEVであっても、現在の原付一種と同等の価格で、同等の走行距離を実現するものならOKなんです。とにかく生活の足としての原付一種は、ちゃんと討議してどうやって残すかを考えないといけません」
原付一種=50ccは、自分には無関係だと思う方が多いかもしれないが、いまでも原付一種はバイクの世界への入り口で、そこから趣味の中~大型バイクにステップアップする人も多い。持続可能なバイクライフの実現にも、リーズナブルな価格の原付一種は絶対に必要だと筆者も考える。
「バイク販売店にとっても、国内の年間販売台数の30%を占める原付一種は重要な商材ですし、生活の足としてとても便利な乗り物です。原付一種の代替になるものが出るならそれでもかまいませんが、いま規制緩和を進めようとしている電動キックボードなどでは生活の足にはなり得ません。行政は国民の生活を守るのが仕事なんですから、しっかり考えてもらいたいと思っています」
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