今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は、’80年代中盤に登場した2ストGP500レーサーレプリカ「スズキRG400/500Γ」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:クオリティーワークス
ワークス/市販レーサーに保安部品を装着しただけ? '80年代中盤に登場した2ストGP500レーサーレプリカの中で、最も本物に近いモデルと言ったら、筆頭に挙がるのはスズキが'85年に発売したRG400/[…]
- 1 長期放置した車両の再始動には要注意
- 2 スズキRG400Γ/500Γ メンテナンスポイント
- 3 パーツ流通:リプロパーツの使用は必須
- 4 [連載] プロに学ぶ’80s国産名車メンテナンスに関連する記事
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長期放置した車両の再始動には要注意
過去に本連載で取り上げたRZV500RやNS400Rと同じく、スズキRG400/500Γも、決して耐久性が低いバイクではない。とはいえ、それは新車かきっちりレストアをした車両の話で、「放置期間が長い車両は問題が起こって当たり前」とクオリティーワークスの山下伸氏は言う。
「ウチに入庫する2スト車で多いトラブルは、納屋などに10年以上眠らせていた車両のエンジンをかけて、『お、イケそうだ』という気持ちで走り続けての焼きつきです。その原因はエンジン内部の細かい錆びで、これがピストン/シリンダー/ベアリングなどに大きなダメージを与えるんですよ。だから長期放置車両を再始動するときは、面倒でも腰上を分解して、シリンダー内壁/ピストン/コンロッドなどの状況を確認してからのほうがいいでしょう」
弱点とまでは言えないものの、固有のトラブルという表現をするなら、キャブレターボディの2次エア吸入(部品設定が行われていないガスケットの劣化が原因)/左側キャブのオーバーフロー/排気バルブ周辺のカーボン堆積/ロータリーディスクバルブの破損/CDIユニットのパンクなどが、Γオーナーの間では話題になることが多いようだ。
「そういった部品の消耗は、生産年度を考えればやむを得ないことで、きちんとした整備や新品パーツへの交換を行えば、以後はトラブルは起こりません。なお消耗と言えば、リヤショックも確実に終わっているパーツで、ウチでは現代のアフターマーケット製への交換が定番になっています」
スズキRG400Γ/500Γ メンテナンスポイント
クランクシャフト:消耗品の交換や芯出しで、本来の性能を回復
シリンダー:定期的にクリーニングを行いたい、排気バルブ周辺のカーボン
ピストン:各部が正常なら焼きつきは起こらない
キャブレター:純正部品だけでは行えない、VM28キャブレターのオーバーホール
トランスミッション:いまひとつの耐久性はカセット式ならでは?
2スト&トランスミッションオイル:ミッションオイルは3000kmごとに交換
ロータリーディスクバルブ:吸気系の重要部品は長期使用で割れが発生
ラジエーター:ストリートならノーマルで問題ナシ
フレーム:スキ間の均一さで骨格の曲がりを判断
スイングアーム:1型で起こりやすいピボット部のクラック
リヤショック:現代製品の導入で運動性と快適性が向上
タイヤ:レアサイズなので選択肢ごくわずか
スプロケット:400専用品としてリヤ用を独自に準備
フロントブレーキキャリパー:ブレンボ用として独自のサポートを開発
フロントブレーキマスターシリンダー:タイトな設計だから交換は大変
CDIユニット:ジールトロニックで良好な火花を実現
メインハーネス:経年変化によって硬化&変形が進行
バッテリー:容量を拡大して最新電子機器に対応
パーツ流通:リプロパーツの使用は必須
ひと昔前は「旧車に優しい」と言われていたスズキだが、数年前から状況は一変。RG400/500Γの場合は、ガスケットやシール類といった消耗部品ですら、もはや完全には揃わないそうだ。「スズキの方針変更には驚きましたが、企業としての利益を考えれば、旧車用部品の切り捨てはやむを得ないでしょうし、逆に数年前までよくあんなに出してくれたと思いますよ。いずれにしても現在のΓの整備は、アフターマーケットのリプロ品が不可欠です」(山下氏)
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