二輪車の世界でも、環境改善に向けた取り組みに与えられた時間は多くありません。そんな中で日本自動車工業会・日高祥博副会長は、国内レース業界にもカーボンニュートラルを働きかけていくことに言及しました。二輪車委員会とメディアとの対話で明らかにしました。
●文:中島みなみ
JAMAが合成燃料の対応の国内レースを後押し
「国内の二輪車レース活動では何もでていないが、このままでいいのか。自工会でMFJなどに何らかの働きかけをするための議論を始めている」
日本自動車工業会副会長・日髙祥博ヤマハ発動機社長は3月14日、二輪車メディアとの会合をオンラインで開催。電動化以外の二輪車カーボンニュートラル対応について、二輪の国内レースでの「合成燃料」使用の検討について話しました。自工会二輪車委員会の委員長で、ヤマハ発動機社長の踏み込んだ発言は、国内レースの環境対策にはずみを付けそうです。
今回、日高氏が語った国内レースへの働きかけは、競技車両にカーボンニュートラル燃料である「合成燃料」使用の検討を促すもの。
日髙氏は自工会の検討について、次のように話しました。
「急に電動というわけにもいかないので、キーになるのはバイオエタノール系のカーボンニュートラル燃料。最初から100%ということになると供給先、供給量の課題もある。すでにブラジルでも実現している20%、40%、80%と年々CO2排出量を減らしていく燃料供給を、二輪レース業界に働きかけをしながら、それを前提に各社エンジン開発していくことが委員から提案がされた。議論を始めている」
日高氏が言及したカーボンニュートラル燃料とは「合成燃料」の中でもさとうきび、とうもろこしなどから製造される植物由来のエタノールを混合した燃料のこと。欧州ではレギュラー燃料にエタノール10%を混ぜた「E10」が一般車でも使われています。
しかし、通常のガソリンよりも自動車の燃料装置の金属・ゴム部品を腐食・劣化させやすいため通常のガソリン車では使用できません。一般車でもE10燃料のための対策が必要なため、限界まで性能が求められる競技専用車では、さらに対応が難しくなります。
車両対応でメーカー競争、供給元探しはJAMAで
これまで自工会は、大型バイクのカーボンニュートラル対応ついて、詳細な説明を避けていました。日高氏の発言の背景には、環境対応で出遅れる国内二輪レースに対する焦りが見えます。
「四輪の世界耐久、あるいは二輪の国際レースであるMotoGPでCO2排出を減少する燃料への切り替え、そのタイミングについてはっきりとした指針を言い出している」(日髙氏)
F1では2022年3月18日の初戦からE10燃料を採用します。二輪の世界でもFIM(国際モーターサイクリズム連盟)が、2024年までにMotoGPクラスで最低40%をバイオ燃料に。さらに2027年までに化石燃料に頼らない100%合成燃料を実現することを公表しています。
国内レースでの取り組みで、弾みをつけたいと期待は高まります。
「バイオエタノールと決めつけてはいけないが、さまざまな合成燃料のMFJへの供給先を見つけるということと、各社がそれを前提にした研究開発をしていくことが両輪で環境対応が動く」(日髙氏)
二輪モータースポーツでもモトクロス、トライアルの国際レースではさらに先の電動化が一歩進んで、電動車のためのEクラスを創設されました。日本からもM-TEC(無限)が2022年からのFIM E-Explorer World Cupでエントラント(参加権)を獲得。自社開発の電動モトクロッサー「 E.REX 」を使った参戦を狙っています。
レースに環境性能を持ち込むことは、必ずしもすべてのモータースポーツファンから歓迎されているとは言えません。レース参加者にとっては新しいレギュレーション対応を迫られます。MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)は、どう動いているのでしょうか。
「カーボンニュートラル対応は前向きに取り組むべき無視できない課題だ。会議体はできていないが昨年から、テーマに取り入れて検討は始めている」
厳しい環境性能をクリアして勝利し続ける車両は、チームやメーカーに対する大きな信頼につながります。海外だけでなく、国内二輪レースが環境性能のトライアウトの場所になることは、モータースポーツの存在価値を新たに付け加えることにつながるのではないでしょうか。
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