
オフロードマシン乗りなら知っておきたい、愛車の好調を維持するために比較的簡単に行える日常点検として、タイヤの空気圧/ブレーキパッド残量/各部の増し締め/エアクリーナーチェックについて、パリダカールラリー完走率100%の堀田修氏よりアドバイスしてもらった前編。後編では、メンテナンスのコツのまとめとともに、エンジンオイルチェック/ドライブチェーン調整/クラッチレバー注油を紹介するゾ!!
●まとめ:小川浩康(ゴー・ライド編集長)
【堀田修氏】16歳でMTX50に乗り始め、大学でバイクサークルに入りエンデューロやモトクロスに参戦。モトクロス国際B級となる。サラリーマンを続けながら有給休暇を使って、’99年にオーストラリアンサファリ、’00年/’01年/’03年/’04年UAEデザートチャレンジ、’02年/’04年/’06年パリダカールラリー参戦。パリダカはすべて完走し、市販車451cc以上クラス3位/総合37位(’06年)の好成績も残している。
セルフメンテナンスで押さえたいポイント4点
堀田氏に教わった”愛車の好調を維持する最大のコツ=転倒などで愛車にダメージを与えないこと”。それに加えてトラブルに遭遇した際に素早く対応できるように、愛車に対して自分でできることとできないことが分かることが大切であり、普段から愛車の様子をチェックしておくことも重要。そこで堀田氏によるセルフメンテナンスをするにあたり、押さえておきたいポイントをもう一度さらっておこう。
- 自信のない作業はやらなくてOK。プロに任せよう
→調子の悪くなったマシンは自然治癒しないので、それ以上悪くする前にしっかり直す必要がある。 - 工具はきちんとした工具メーカーのモノを揃えよう
→100均などの工具は精度が悪く、ネジをなめる原因になる。精度のいい工具は長く使えるので長い目で見ればお得。 - 作業する時は太陽が出ているうちに行おう
→マシンの細部まで見ることができて、作業ミスをしにくくなる。 - 作業する前に、ワイヤーの取りまわしやネジの位置と個数などを携帯で撮影しておこう
→元に戻す時につけ忘れや取りまわしを忘れてしまうなどのミスを防げる。
それでは前編に引き続き、比較的簡単に行える日常点検のポイントを紹介する。
エンジンオイル交換
エンジンオイルは潤滑/冷却/密閉など、さまざまな役割を果たしている。空気と触れると劣化していくので、走行距離だけ判断するのではなく、定期的な交換が必要な消耗パーツでもあるのだ。
【使用工具類】レンチ/エンジンオイルオイルジョッキ/オイルパン。エンジンオイルは車種により量が異なる(オイルフィルターを交換する際も量が変わる)ので、事前に要確認。オイルパンの代わりに廃油処理パックを使用すると、ゴミとして捨てられる(各自の自治体に従ってください)。
交換作業をしやすくするためにアンダーガードを取り外す。
オイルパンをセットし、ドレンボルトを緩める。セロー225はクランクケース側面にある。
エンジンオイルを抜く。エンジンオイルが出なくなったら、ドレンボルトを装着する。
異物の混入を防ぐため、エンジンオイル注入口まわりをパーツクリーナーで清掃する。清掃後にフィラーキャップを手で取り外す。
オイルジョッキに規定量のエンジンオイルを入れ、ゆっくりと注入。注入し終わったらフィラーキャップを装着。アイドリングでエンジンオイルを循環させた後、レベルゲージでエンジンオイル量を確認する(車種により確認方法は変わるので、事前にサービスマニュアルで確認しておくこと)。
レベルゲージは日常的にチェックしよう!!
セロー225はクランクケースにエンジンオイルチェック窓が設けられている。その車種のマニュアルに従って、エンジンオイルレベル(量)や汚れ具合を日常的に確認しておこう。エンジンオイルの劣化や不足はエンジンに多大なダメージを与えるからだ。
ドライブチェーン調整
ドライブチェーンは走行中にピン(連結部)が摩耗することで、コマとコマの間隔が広がる。これがチェーンの伸びとなる。そこで、ドライブチェーンを適正な遊び(たわみ)量に調整しておく。遊び量が多すぎるとチェーンが外れ、少なすぎても摩耗や破断といったトラブルの原因になるからだ。遊び量は車種によって異なるので、こちらも事前に確認しておこう。
【使用工具】レンチ/プライヤー。リヤアクスルナットは大径となる場合が多いので、愛車に使用するサイズを購入しておきたい。割りピンを使用されていない場合はプライヤーも使用しない。
作業をする前のスネイルカム(遊び量を調整するパーツ)の位置を撮影しておこう。
プライヤーで割りピンを抜く。割りピンは新品に交換しよう。
アクスルシャフトナットを手で緩める。締まっているトルクを手で感じ取っておこう。【★】
スネイルカムを回して、チェーンの遊び量を調整する。ズラすのは2目盛り程度にして、チェーンを張りすぎないようにする。
反対側も同じ目盛りだけズラす。
足でタイヤを押し、スネイルカムをしっかりストッパーに当てる。
アクスルシャフトナットを手で締め込んでいく。足でレンチで踏むと、締め込み過ぎるので注意。
遊び量が規定値になっているかチェック。規定値になっていない場合は、アクスルシャフトナットを手で緩めるところ【★】から作業を繰り返す。
遊び量をチェックする!
遊び量はドライブチェーンのたわみ量で見る。規定値やチェックする箇所は車両によって異なるので、こちらも事前に確認しておく。
クラッチレバーの注油
ダート走行では繊細なクラッチワークも必要となる。スムーズなレバー操作を行えるように、定期的にグリスアップしておこう。
【使用工具】レンチ。レンチのほかに、汚れを落とすためのパーツクリーナー、動きをスムーズにするグリス(マルチパーパスグリスとも呼ばれるウレアグリス)を用意しておく。
ワイヤーカバー(ラバー)をズラし、ロックナットを緩める。
ロックナットとレバーの切り欠きを合わせたら、クラッチワイヤーを取り外す。
レンチでナットを緩めて、クラッチレバーを取り外す。
パーツクリーナーでレバーホルダー内に溜まっている土埃などを清掃する。クラッチレバー、ボルトもパーツクリーナーで洗浄しておく。
洗浄したボルトにグリスを塗る。
レバーホルダーとの接触面にもグリスを塗る。
ボルトとの接触面にもグリスを塗っておく。ワイヤーの太鼓部分をクラッチレバーに入れ、クラッチレバーをレバーホルダーに装着。走行する前にクラッチレバーの遊び量を調整。好みの遊び量になったらロックナットを手で締め込む。
ガンコな油汚れに効いて肌も守れるアイテムもチェック!
メンテナンスの最後は手洗いで作業完了!! となるが、普通の手洗い用ソープでは汚れがちゃんと落とせず、もちろんしっかりと落とせる専用洗剤も各種あるが、手が荒れやすいなどの弊害も。そこで、使用後の肌のケアまでできるシートタイプの汚れ落としを紹介する。
【1】作業を終えて、手には油汚れが付いてる。【2】ガンコな油落としを一枚使ってみる。【3】一枚だけで、これだけ汚れが落ちた。手洗いうがいの励行が求められる時期でもあるので、これはオススメしたいアイテムだ。
※本記事では堀田氏の愛車セロー225をメンテナンスモデルとしています。規定値や使用工具などは車種によって変わりますのでご注意ください。愛車のサービスマニュアルを用意し、作業前の状態を携帯などで撮影してから、作業を行なってください。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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