コロナ禍がバイク文化に与えた影響はきわめて大きい。人と接する必要なく移動できる手段として多くの二輪免許保持者がバイクを稼働させはじめており、新車や中古車市場も活況。ところが、あちらこちらで新車のタマ不足が叫ばれ、「欲しいのに買えない!」という事態に。さらに中古車価格も跳ね上がり……。
●文:ヤングマシン編集部
人気モデルの新車が買えず、中古車相場は高騰中
2021年4月22日にホンダのニューモデル「GB350」が発売され、早くも年間予定台数の4500台を大きく超える受注が入っているという。あまりの人気ぶりに納車まで数か月待ちという状況になりつつあるようで、もちろん待つだけの価値があると断言できるが、ヤキモキしている未来のユーザーたちも多いことだろう。
などと思っていたら、2021年春の新車販売状況が物凄いことになっていることがわかり、コロナ禍の影響の計り知れない大きさが明らかになってきた。まずはWEBヤングマシンの新サービス「中古車検索」より下記の中古車相場を御覧いただきたい。原付二種51~126cc、軽二輪126~250cc、小型自動二輪400cc以下、小型自動二輪401cc以上の人気車を並べてみた。
CT125ハンターカブは相変わらずの人気で、中古車価格も新車と変わらない。人気芸能人のハンバーグ師匠などがYOUTUBEで走行シーンやカスタム姿を公開していることもあって、新車は入庫すれば即売れという状況だ。
軽二輪クラスでは、2018年~2020年で3年連続ベストセラーとなったレブル250が今年も大変な人気。初年度から倍々ゲームのように販売台数を伸ばしてきているが、今年は受注を一時休止するなど、コロナ禍による影響も大きいようだ。
400ccクラスは生産終了となるSR400ファイナルエディションにプレミア価格がつくなど、6000台の販売予定台数を売り切ってしまってから価格が高騰中。交代するように登場してきたホンダGB350も大人気すぎて受注を一時休止しており、これらの状況が落ち着くまでは時間がかかりそうだ。
また、401cc以上の大型バイクで不動の人気を誇るZ900RSは、現行ラインナップから外れた火の玉カラーに人気が集中……かと思いきや、現行カラーの“タイガーイエロー(正式名称:キャンディトーングリーン)”もプレミア価格がつきはじめている。
ハッキリ言って異常事態とも言えるわけだが、新車の生産や運搬が思うようにいかないメーカーとしても望んでいない形になっている。新車の商機を逃しかねないだけでなく、正規ディーラーも“売れているのにモノがない”という苦しい状況なのだ。
なぜ、こんなことに……
新車がなかなか入ってこない……。そんな状況になってしまったのは、やはり新型コロナウイルス感染拡大の影響を抜きには語れないだろう。2020年春に発出された緊急事態宣言の頃から、密を避ける乗り物としてバイクが脚光を浴びはじめ、同じようなタイミングで人気車が発売されたことなども重なって、一部では『第3次バイクブーム』の声も上がるほど。スピードを求めるのではなく、乗っているだけでも楽しく、ツーリングに行くことを素敵な趣味ととらえる健全なライダーが増え、この点だけを見ればバイク文化にとって素晴らしいムーブメントが起きているといって差し支えない。コロナ禍により、医療現場に負担をかけてはならないという意識が安全運転につながっている側面はあるとしてもだ。
しかし、世界的に経済活動が停滞したことや、船舶がコロナ禍を避けるためになかなか入港できないことなどから物流に影響が出はじめ、スエズ運河の船舶事故などもあって、需要が増してからも世界中でコンテナの奪い合いのような事態に。さらに半導体の供給遅れなどがバイクやクルマの生産に影を落とし、これが冒頭のような新車不足を招いている。
こうした困難は国産4メーカー、そして海外メーカーに等しく訪れ、各メーカーとも与えられた状況のなかで最善を尽くしているのだ。それでも正規ディーラーは決められた新車価格を守り、従来と変わらないビジネスを続けたいと願っている。
とはいえ、中古車業界はそうもいかず、需要と供給のバランスにより価格は大きく変化。特に人気車にはプレミア価格がつきがちだ。生産終了からしばらく経ったカワサキ「エストレヤ」なども、高年式のものは新車時以上の値札が躍る。
こうなってしまうと、誰も得をしない。ユーザーは高価格で買い物をすることになるし、メーカーやディーラーは商機を逃す。もちろん中古車販売も健全な姿とはいえず、このままではせっかくのバイク人気にネガティブなイメージを与えかねない。
一刻も早くコロナ禍が終息し、すべてのライダーやライダー予備軍が楽しく愛車選びをできる日々が戻ってくるよう、感染拡大を招かない努力を各自で続けていくしかない。
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