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●文:沼尾宏明
ヤングマシンお家芸のスクープネタとして、何度も執拗に追いかけ回してきた次期ハヤブサの姿。3代目新型のお披露目に伴ってスズキが公開した開発ストーリー動画により明らかになった試作車「ターボ」は、我々が長い間追い求めてきた夢の1台でもあった。
規制議論を巻き起こすほど突出した速さと人気を誇った '98年秋のショーで発表された初代ハヤブサは、よく"衝撃的”と表現されるが、写真が公開された段階では、いい意味で使われていなかった…気がする。当時は[…]
これがハヤブサに乗るぅ?! YMスクープ班の血圧急上昇
文字通りの“大物”だけに、ヤングマシン本誌スクープ班が全力で追いかけてきた次期ハヤブサ。YM本誌では’15年12月号から独自の”予想”を展開。「1500cc化」に始まり、「ターボ化」「やっぱり自然吸気で1400ccだ」「いやターボとの2本立てだ」「正常進化はするけど詳細不明」と変遷を辿った。
…結果的に的中は叶わなかったわけだが、我々が様々な仕様を予想してきたように、公式の開発ストーリー動画で数多くの試作車がテストされていた事実が判明。我々の迷走ぶりは、スズキの試行錯誤を正確に表していた…とも言えるのではなかろうか!?
開発ムービーの中でも驚いたのは、「ターボ隼」の存在だった。どの時期に試作されたのかは不明だが、YM本誌では’16年2月号でスズキ社内でのテスト情報をキャッチし、同4月号で特許を紹介した。当時の我々はテンション爆上がり。読者の反響も凄まじかった。
当時公開された特許は”電動アシストターボ”。単なるターボではなく、電動モーターでタービンの回転上昇をアシストする先進システムだ。唐突なターボラグを防ぐ上に、バッテリー+駆動用モーターで電動走行できるのも画期的。おまけにコンパクト設計で2輪用に最適だった。盛んに電動化が叫ばれる現在、”マイクロハイブリッド”として注目を集める手法でもある。
特許の図面は4気筒で、マシンの性格からしてハヤブサに最適。さらにDCTより速いセミオートマチック技術の特許も公開され、その導入にワクワクしたものだった。
ちなみに、同じ動画で明らかになった”6気筒”の存在までは、さすがのYM本誌もつかめず。採用は見送られたが、別の機会にぜひ市販化を!!
貴重な開発風景のカット。10年以上にわたるテストで膨大な試作車が生まれ、その中にターボや1340㏄超の大排気量版などが存在した。
“ターボ隼”夢の根拠:電動アシスト式ターボ特許関連図面(’15年5月公開)
【リカージョン用とは異なる勇ましい並列4気筒ターボ】スズキは’13年秋に2気筒600cc程度のターボモデル「リカージョン」を初公開したが、後に公開された本特許は4気筒向けで、電動アシストモーターまで採用。エンジン前面にターボユニットと補助モーター、背面に駆動用のEVモーターを置くというまったく異なる構造だった。
【タービン軸の回転上昇を電動でアシスト。スペースは最小限に】電動モーターが強制的にタービンを回し、スムーズな走りを実現。タービン同軸上の真横にモーターを置き、小型化を図った。
【EVモーターはエンジン背面に】駆動を補助するハイブリッド用モーターはエンジン背面に搭載。カウンターシャフトとギヤに直結し、発電機としてターボの補助モーターに電力供給する機能も持つ。モーターのみや電動アシスト走行など、任意でモード切り替えも可能だ。
【大容量バッテリーはシート下に】ハイブリッド化にはバッテリーの追加か大容量化が必要。特許では、シート下(図面35)に大きなスペースを割いて置く。その前方は、電動モーター向けに電源を変換するインバーターだ。
にしてもまさか6気筒ハヤブサまで作っていたとは…
もうひとつ驚いたのが”6気筒のハヤブサ”。これはさすがにYM本誌も初耳だった。今までスズキ製バイクで6気筒は存在せず、唯一思い当たるのがコンセプトモデルのストラトスフィア。’05年の東京モーターショーで展示され、180psを発生する水冷6気筒1100ccを搭載していた。この企画が継続中で、ハヤブサとしてテストすることになったのだろうか? もはやハヤブサとは別モノになりそうだが、市販されればインパクト抜群だったのは間違いない。
【’05 SUZUKI STRATOSPHERE [Comcept]】6気筒ながらスリムな横幅で、パワーも180psと十分。会場では走行シーンの動画が流され、カタナを連想させる端正なスタイルでも話題になった。
〈蛇足〉そして誰も信じなくなった…。YMスクープ団オオカミ少年記
次期ハヤブサの第1報を載せたのは『ヤングマシン』’15年12月号。従来型ベースで1380cc程度、または新設計で1500cc化と予想した。そして翌’16年2月号でターボ化の情報をキャッチし、大反響を呼んだ。当時は’17年秋頃の登場を予想したが、次期型は待てど暮らせど現れず、やがて”ターボ案消滅”との情報が舞い込む。結局YM本誌は「オオカミ少年」呼ばわりされ…。ハヤブサ関連のスクープは完敗にオワッタのでした。
【”隼ターボ”追跡は’15年暮れから】写真右が’16年2月号、左が’16年4月号。ターボについて初めて報じたのが当時。’15年にスーパーチャージャーのH2が登場し、ヒットを飛ばす。その対抗馬として十分現実味があったハズが…。
【’16年2月号:テスト情報と特許をキャッチ】社内で既にテスト中との情報に続き、特許情報も掲載。隼の軽快な運動性を損なわずにパワーアップできるのが、ターボ化の根拠だった。
【’17年2月号:NAで排気量アップか?!】情報が乱れ飛び、自然吸気とターボ仕様が併売との噂も。しかし’17年に入ったあたりでターボ案は消え、NAで+100cc程度が有力に。
【’18年6月号:でもターボも売ってほしい】国内では既に生産終了。望み薄ながら再浮上してきたターボ案を再プッシュした。スズキ100周年でユーロ5適用開始となる’20年発売を予想。
【’18年11月号:商標も再出願されてたぞ!】カタナのロゴに続き、欧州と日本でハヤブサの「隼」ロゴが商標出願。用途はキーホルダー/ステッカー/アパレルなど。いよいよと思いきや…。
【’19年3月号:“正常進化版”で情報が定着】’19年前後からほとんど情報が入らず。フレームや車高調整の特許もあったが、電脳化などの正常進化で落ち着く、との見方が有力になった。
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