●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
’20年12月26日、埼玉県教育委員会主催による年度内最後の「令和2年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習(南部)」が開催され、大宮/新座/岩槻/桶川/狭山といった埼玉県南部の生徒約90名が参加した。今回は、本講習で行われた救急救命法について紹介したい。
新学習指導要領により保健体育で習得すべき技能となった”救急救命法”
心肺蘇生法やAED(自動体外式除細動器)の使用法といった救急救命法は、’18年改訂の高等学校学習指導要領(新学習指導要領)において保健体育科の技能内容として位置付けられた。傷害に関する応急手当も含め、実習を通して”できるようにしておく”ことになっており、特に、水泳の授業などと関連付けるよう明記されている。
現在、こうした救急救命法への対応は小学校から段階に応じて教えようという方針になっているが、高等学校でさえ66%に留まっているのが実情であり(表参照)、広い校舎にAEDが1台しかないという高校も多い。実際に本講習でも、初めて実習を受けるという生徒が多かった。普通自動二輪免許を取得した生徒なら教習段階で必ず受講しているが、原付免許しか持っていない生徒にはそうした機会もほとんどないからだ。
交通社会人に必要なスキルを習得できる貴重な機会
さて、南部地域講習での教習所職員による救急救命講習をレポートする。講師の稲員(いなかず)氏は、陸上自衛隊施設科部隊を任期満了した方で、災害派遣や事故現場での経験が豊富だ。講習ではまず最初に”脳の活性化”として、利き腕ではない方の手で後出し、かつ負けるというジャンケンを全員と一斉に行った。朝から運転講習と座学が続き、眠気に襲われていた生徒たちの目がこれで覚めた。これまで開催された本講習でも、救急救命法はたいてい講習の最後で行われてきた。なので、参加する生徒には疲れが見えていることも多かった。仕方ないといった感じで、居眠りする生徒にも注意せず、淡々と行う講師も多かったが、これは上手いなと感心した次第だ。
また、自衛隊勤務時の夜間訓練中に刃物で大けがをしながらも自身の応急処置で対応したこと、母親が倒れた際に心肺蘇生で一命を取り留めたことなど、自らの豊富な経験談から救急現場での迷いやすい判断を「こうすべき」と力説していたことが、生徒にもストレートに伝わっていた。最初はけだるそうに聞いたり、おしゃべりをしていた生徒らも、稲員さんのリアリティのある現場経験談に引き込まれていった。
’20年度は新型コロナ禍もあって、講習映像を見るだけで終わりという講習会もあったが、今回は見事な内容だった。学校現場の先生にこのレベルを求めるのは難しいだろうから、教習所の講師に直接指導してもらえる本講習は貴重な機会となるだろう。交通社会人に必要なスキルとして今後も注目したい。
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〈連載〉二輪車利用環境改善部会
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