●文/写真:モトメカニック編集部 ●取材協力:カーベック
’70年代に普及したキャストホイール。保管コンディションが悪いと相当なダメージを受けてしまい、あらためて使用する気分にはなれない。そんな惨事になる前に、マグネシウムホイールなら是非とも処方しておきたいのが「マグリコート」だ。
美しいバイクは “ホイール仕上げ”から始まる
アルミ製と比べて酸化腐食しやすいことで知られるマグネシウムホイール。メーカー系レーシングチームでは、外傷がなく精度が良くても、シーズンごとに部品交換している例もある。鋳物部品/削り出し部品に関わらずマグネシウムは腐食しやすいので、再塗装する際にも気を使わなくてはならない。
施工前のマグホイールはこんな感じ。防錆酸化皮膜処理(見た目はゴールドアルマイトのようだった)の上からクリアコートを施してあったが、紫外線と風化によって防錆処理が終了していた。
ホイールに限らずエンジン部品も含め、マグネシウム部品の再塗装を”最善の作業工程”で仕上げているのが、愛知県のカーベックだ。
「マグネシウム部品は、作られた直後に酸化防錆皮膜処理が施され、さらにペイントされて出荷されます。しかし、使うことでダメージを受け、知らず知らずに腐食が起こってしまいます。そんなマグネシウムホイールやエンジンカバーの再塗装依頼がある中で、最善の処理方法で仕上げたいと思い、たどり着いたのが『マグリコート処理』です。
マグネシウムの金属地肌を露出させてから超音波洗浄を施し、マグ部品専用の化成処理後に特殊な溶剤プライマーでコーティングするのがマグリコートです。封孔効果によってマグ地肌が空気にさらされず、腐食しにくくなります。大切な部品が残念な結果になる前に、この施工法で仕上げてみてはいかがでしょう?」とカーベック代表の浮田氏。気になる方も多いはずだ。
マグネシウムホイールを再生するマグリコートの工程
旧ペイントはマグホイールメーカーで仕上げられたもの。塗膜は意外としつこくなく、強力剥離剤に浸して満遍なく液を流し掛けることで、旧ペイントは簡単に剥がれた。
マグホイール対応のサンドブラストメディアで旧防錆皮膜処理を剥がし、マグホイールの金属地肌を露出させる。粉末になったマグネシウムの粉塵は引火しやすい。
金属素地が完全に露わになったマグネシウムホイール。一度素地を出して完全に腐食成分を除去してから次の作業工程へ進む。旧酸化防止被膜は完全に除去済み。
ブラストメディアはホイールハブの中空部分やスポークエッジなどに残留しやすい。まずは超音波洗浄機でブラストメディアの完全除去から。
超音波洗浄機の浴槽にホイールを沈めて洗浄開始。高周波なビビリ音の中で小さな空気の粒が出ている様子が窺える。指先を浸すとビリビリとシビレを感じる強さだ。
超音波洗浄後はマグホイールの酸化の進行を抑える化成処理工程へ。マグネシウム専用の化成溶液に浸すと、ホイール表面からシュワーっと泡が出て処理が始まる。
ブラスト処理後の表面はアルミホイールと変らない灰色。化成処理後は少しだけ黄ばんだが、これはマグ製部品によって異なる。手に持つと異様なほどの軽さに驚いた。
今回はマルチコートのパウダー仕上げて「キャンディイエローダーク」が希望色。キャンディの呼び名通り、まずはミラークローム01で下塗りを行う。
明るいグレー仕上げなので、灰色パウダーの載り具合は比較的わかりやすい。しかし、厚塗りし過ぎは失敗のもとになるため、必要最小限の塗膜になるように慎重に。
180℃に達してから1時間の設定で下塗りを乾燥させた。温度管理や時間管理を正確にできるカーベックの高温乾燥機CVシリーズは、ペイントの世界に価値観を生む。
輝くメタル調に仕上がるのがミラークローム01。この輝きの上にキャンディーイエローダークを吹き付けることで、ゴールドアルマイト風に仕上げる。
黄色のパウダーが膜となって溶けると”透けるキャンディ仕上げ”になる。粉体塗料の重ね塗りは難しいが、カーベックでは様々なテクニックを開発。
カーベックが取り扱うパウダー専用ガンはカートリッジカップ交換式なので、ペイント色変更時に歩留まりが良く、最低限の無駄で済む。それが大きな特徴のガンでもある。
明るい黄色の粉をまぶされて仕上げられる。スポーク部分が回転方向に肉抜きされているので、その肉抜きの奥へパウダーを届かせる。LEDランプで照らし確認中。
パウダーコーティングを終えたら、温風循環焼付乾燥機へ投入。乾燥機の商品ラインナップはCV600/CV800/CV1800、そして大型トラックパンパーも入るCV2400。
キャンディイエローダークの深みを増し、しかも圧倒的な耐候性を誇るアクリルクリアパウダーで仕上げた。その前に、焼き付け乾燥後のペイント表面に出るヤニを洗浄。
アクリルクリア仕上げによって、ホイールペイントの耐候性が圧倒的に高まる。通常のペイント後でも、このクリアで仕上げ可能。4輪高級車用ホイールもこの仕上げが多い。
マグリコート処理+マルチコートパウダーで、ご覧の通りとても美しい仕上がりに。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
美しいバイクは"ホイール仕上げ"から始まる!! オフロードの世界では、スタンディングポジションでタイヤ交換が可能なマニュアル交換式タイヤチェンジャーが普及している。これを使って、20年以上放置されてき[…]
憧れのツールブランドからお手頃価格の実力派まで 「ワールドインポートツールズ横浜」のショーケースには、誰もが憧れる国内外メーカー製工具が数多く並んでいる一方で、必要十分な機能を持ちながら財布に優しい工[…]
明るく長持ちするLEDライトで快適なメンテ作業を メンテナンスのキャリアを積めば積むほど、手元の明かりが必要になる。冗談みたいな話だが、ジェットの番手が見えない、ドライバーの先端がビスを捉えられないな[…]
工具の世界の奥深さは、1種類ですべての作業がこなせるオールマイティが存在しないところにある。10mmのめがねレンチも2番のプラスドライバーも、サイズは同じでも長さや角度違いがなければ"あるのに使えない[…]
ホームセンターの工具売り場には必ず電動インパクトドライバー用ビットコーナーが置かれ、6.35mm六角軸のドライバーやソケットが数多く並んでいる。この軸寸法は各電動工具メーカーの共通規格だが、建築用工具[…]
最新の記事
- 2025MotoGPヘルメット勢力図は5社がトップを分け合う戦国時代へ突入! 日本の3メーカーに躍進の予感!?
- 【SCOOP!】スズキ「GSX-8」系にネオクラが存在か!? 丸目のGS&クーリーレプリカ復活希望!!
- 「初の100ps超え!! 」全面改革で進化した第二世代のZ:カワサキZ1000J【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 3色ラインナップ化! ホンダ「CT125ハンターカブ」歴代カラー大図鑑【2022年モデル】
- 【受注限定】SHOEI「グラムスター」に新色モスグリーン! 5月発売で全5色展開に
- 1
- 2