FCRキャブレターの雌ネジをリペア

なめた雌ネジをステンレス製リコイルで完全修復【適正トルクで締め付けもOK】

セッティング作業でフロートチャンバーを外す機会が多いスペシャルキャブレター。作業に慣れすぎて力加減を誤ったか、斜めに入ったままレンチでグイッと締めたのか、フロートチャンバーの雌ネジがなめてしまい…。ボルトナット固定だった箇所を、今回「リコイル」を投入して修理することに。ポイントさえ押さえれば確実な修理が可能だが、思わぬトラップが待ち受けていた!?

なめた雌ネジをリコイルを使って修理

以前の記事で、キースターの燃調キットを使ったFCRキャブレターのフルオーバーホールについてレポートしたが、その際にフロートチャンバーの1カ所の雌ネジがなめてしまい、キャップボルトとナットで固定してあったので、今回「リコイル」を使って修理を行った。

ステンレス製のコイルスプリングのようなリコイルインサートをねじ込んで傷んだ雌ネジを補修するリコイルは、オーストラリアで開発され、世界中の生産/補修現場で利用されている。「トレードシリーズ」は、補修に必要な下穴用ドリル/リコイルタップ/挿入工具/マグネット付き折取工具の工具類と、15個(M2~M9サイズの場合)のリコイルをパッケージにした製品で、あとは電動ドリルがありさえすればすぐに作業できる。ちなみに、FCRのフロートチャンバー固定ボルトのサイズはM4×ピッチ0.7で、リコイルの標準ラインナップに含まれている。

【トレードシリーズ リコイルキット M4-0.70】価格:7200円(税抜、以下同)

作業手順は下記の写真解説の通りだが大きな罠!? があった。ボルトを取り付ける場合、フロートチャンバーの合わせ面に対して垂直にセットするのが一般的な感覚ではないだろうか? ところがFCRは合わせ面から十数度傾いているのだ。

そのため下穴用ドリルで穴を明ける際、必ず正常な雌ネジにボルトを差し込み、傾きを確認しながら作業しなくてはならない。

また、今回のように厚みが少ない雌ネジ部分に施工する場合は、トレードシリーズの標準リコイルでは長すぎることがあるので、あらかじめカットしておくことも作業上のコツとなる。

これらのポイントを押さえておけば、デリケートなM4雌ネジも補修が可能で、必要なトルクでしっかり締め付けることができる。

トレードシリーズリコイルキットのパッケージには必ずサイズ表記がある。

右側がボルトナットの固定部分。同じボディでもう一カ所なめかけていた。

ピッチゲージが見当たらなかったので、ボルトサイズをダイスで再確認。

【座面に対して雌ネジが斜め】健全な雌ネジに長ボルトを通すと、確かに合わせ面から傾いている。

分度器と三角定規でざっと見ると、合わせ面に対するボルトの傾きは15度前後だった。

全バラ状態で施工するのが理想だが、組み立て後に作業を決めたので、修理部分だけを露出してウエスとビニール袋でグルグル巻きにしておく。

左右の傾きに注意し、合わせ面に対する角度をキープしつつ下穴を開ける。下穴が浅いとタップが傾きやすいので、慎重に雌ネジを切っていく。

長さ1.5D( 呼び径の1.5 倍)のリコイルは、このフランジの厚みに対して長いので、カット量を検討するため仮挿入。奥に飛び出させるのではなく、手前を切断する。

ネジ部の厚みに応じてコイルの長さを調整】切断面が荒れると下穴に挿入しにくくボルトも入りにくいので、切れ味が鋭い食い切りなどで切断。浅い下穴ばかりなら短い1Dのリコイルもある。

挿入工具でセット。1周半ほど切断したので手前のはみ出しがない。

リコイル先端の「の」の字を折るため、裏から見て飛び出してはいけない。

折取工具で「の」の字部分を叩き折れば完了。折れた破片は工具に付く。角度を変えて見てみると、合わせ面に対してリコイルが斜めに入ったことが分かる。

【正常なネジと角度を比較】補修部分(右)と正常部分(左の2カ所)の角度が合っていることが確認できれば修理完了。


●取材協力:リコイルジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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