’20年型で排気量拡大を伴うモデルチェンジを果たした、英国のトライアンフ タイガー900RALLY PROと日本のホンダ CRF1100Lアフリカツイン。多彩なツーリング環境を走りつないで比較テストした。バージョンアップによって獲得した、それぞれの魅力とは? プロ目線で本誌テスターの丸山浩が、一般目線でフリーライターの田宮徹がレポートする。
フラットな特性を獲得したトラの新たな3気筒【丸山目線】
最新排ガス規制(ユーロ5)に適合化させながらも理想とする走行性能を獲得することなどを目的に、ボアまたはストローク増による排気量拡大が選択され、それと同時に車体や装備の大幅なアップデートも施されたのが、’20年型として新登場したトライアンフのタイガー900シリーズ(水冷並列3気筒)とホンダのCRF1100Lアフリカツインシリーズ(水冷並列2気筒)だ。
タイガー900は、’10年に誕生してから熟成が進められてきたタイガー800の後継で、エンジンおよび車体ともフルモデルチェンジ。最大の特徴は「Tプレーン」と呼ばれるクランク形式で、これまでは120度位相によりクランクが240度回転する毎に点火される等間隔爆発だったのに対し、新型エンジンは3つのクランクピンが90度ずつ位相され、180度→270度→270度というシークエンスを持つ不等間隔爆発を新採用している。
一方のアフリカツインは、’16年型として新登場したCRF1000L仕様からの正常進化版。車体は、タイガー900と同様にリヤフレームがアルミ製のボルトオン別体式となり、フレームボディ全体では約1.8kgの軽量化も達成。IMU(慣性計測装置)の新採用を軸に、電子制御システムの進化も施された。
どちらの機種にも多数のバージョンが用意され、この説明をするだけで紙幅が尽きるほどだが、今回はその中でタイガー900は「ラリープロ」、アフリカツインは「アドベンチャースポーツES」のDCT仕様をチョイスして、さまざまなツーリングシーンにおける試乗を実施した。ラリーは、シリーズのうちオフロード走行性能も重視した仕様で、前輪21インチのスポークホイールを採用。その電子制御と快適装備とプロテクション性能を強化したのがプロだ。一方、アドベンチャースポーツは専用外装や大型燃料タンクを装備したツアラー性能強化型。ESはショーワ製の電子制御サスを搭載し、さらに変速機はDCTと、今回セレクトした仕様はシリーズの中で最上級に相当する。
市街地と高速道路を走りつないでまず印象に残ったのは、マイルドな特性になったタイガー900の3気筒エンジン。低回転域でのドロロロ……というフィーリングが増し、排気量アップにより高回転域での出力も維持されているが、従来型のようなピーキーさは影を潜めた。私はこれまでの3気筒エンジンに対して、「2ストローク的」という表現をしてきたが、新型タイガー900のエンジンはフラットなパワーフィールで、長距離を快適に旅するとか、オフロードでの操縦性を高めるということに対してのマッチングには優れている印象がある。
対してアフリカツインに抱いたのは、ツアラーとしての完成度の高さ。特に高速巡航においては、抜群の防風性能も備えていて、「もはやアドベンチャーのカタチでなくても……」というくらいの快適性だ。
「日英アドベンチャーテスト」と銘打って、トライアンフ タイガー900ラリープロとホンダCRF1100LアフリカツインAS ES DCTを徹底比較。後編に続く。
●まとめ:田宮徹 ●写真:長谷川徹 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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