スズキがEICMA 2019で発表したのは、V-ストローム1000の後継機種となるV-ストローム1050だ。新型カタナが伝説のデザインを復刻、発展させたように、新型V-ストローム1050は往年のDR750Sのエッセンスを注ぎ込んだ。しかも、担当デザイナーは“本物”を作った本人だ。
最新の電子制御を搭載、デザインはオフテイストを強化
2013年に登場した現行V-ストローム1000は、新設計された1037ccのVツインエンジンを搭載し、スズキ初となるトラクションコントロールシステムを装備して話題に。スポークホイール仕様のXTとともにV-ストロームファミリーの頂点に立っていただが、手軽さとファニーフェイスで愛されるV-ストローム250や、名車と呼ばれる好バランスで人気のV-ストローム650に比べると、日本ではやや目立たない存在だったことも確かだ。
今回のEICMAで発表された新型V-ストローム1050/XTは、強化した電子制御と伝説のDRビッグ(1988年登場のDR750S)のDNAを注ぎ込んだデザインで新風を吹き込む。
何よりこだわったのは、スズキのビッグオフローダーらしいデザインだ。ファラオの怪鳥と呼ばれたDRビッグを彷彿とさせる“クチバシ”は、他社に先駆けて作り上げたスズキビッグオフの象徴ともいえるもの。何を隠そう、この新型V-ストロームをデザインしたのは、当時のDR-ZやDRビッグを手掛けたデザイナーである宮田一郎さんその人なのだ。
ユーロ5対応とパワーアップを両立、電子制御も進化した
エンジンの排気量は1037ccと変わらないものの、出力アップで一段上の車格になったことにより車名は1050へ。このパワーアップに貢献してるのが電子制御スロットルの採用だ。これにより、スロットルボディを大径化しながら低回転域の制御を安定させることができたのだという。また、電子制御スロットルと併せていわゆるパワーモード切替のS-DMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)も新採用。用意された3つのモードはそれぞれにトラクションコントロールシステムとも連動する。
従来はスポークホイール仕様という位置付けだったが、新型になりXTは明確に上級モデルの立ち位置に。XTは無印にはないボッシュ製6軸IMUを備え、より幅広いライダー支援システムを備えている。S-DMSとトラクションコントロールシステムはスタンダードモデルも装備するが、XTは専用装備として約50~160km/hに設定可能(欧州使用)なクルーズコントロール、坂道発進をアシストするヒルホールドコントロール、下り坂でのジャックナイフを未然に防ぐスロープディペンデントコントロール、負荷条件が変わっても最適なブレーキングをアシストするロードディペンデントコントロールを搭載しているのだ。
差別化を図ったXTには専用装備も多数
風洞実験によって決定されたスクリーン形状は同一ながら、スタンダードは工具を用いて3段階に、XTはさらにプラス50mm広い範囲かつ工具不要で11段階に高さを調整できる機能を付加。ハンドルバーにはナックルガードも装備している。また、エンジンアンダーガードやセンタースタンド、LEDウインカーといったものもXT専用装備となる。ただし、電子制御系を除く多くの部品はスタンダードモデルにも取り付けが可能なようだ。足まわりについてはキャストホイールのSTDとスポークホイールのXTという違いだけで、サスペンションやタイヤについては同一のものを装備している。カラーバリエーションはともに3色ずつ(欧州)だが、2020年春以降に登場が期待される国内仕様(11月10日に浜松のスズキ本社で行われたV-ストロームミーティングにて鈴木俊宏社長が発売を明言)に関しては、まだなんとも言えないのが正直なところだ。
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