のんびりクルージングだけではなく、ワインディングまでこなすスポーティさを重視したツアラー群が集合。このカテゴリーの顔役は長らくハヤブサとZX-14Rだったが、スーパーチャージャー搭載のH2SXや、フロント2輪のナイケンら新機軸が話題を呼んでいる。H2SXは、国産ツアラーでは珍しいセミアクティブサス搭載バージョンにも注目だ。
- 1 快適さだけじゃなく操る楽しさも濃厚
- 2 KAWASAKI Ninja H2 SX/SE/SE+[軽快×剛力=新感覚]スーチャーでSSとツアラーをイイトコドリ
- 3 電サスでより高みへ
- 4 KAWASAKI Ninja ZX-14R/High Grade[新幹線グリーン車感覚]伝説を継ぐ音速の貴公子
- 5 SUZUKI HAYABUSA[豪快マッスルカー]ドッシリとキレを兼備
- 6 KAWASAKI Ninja 1000[カットビランナー]実用性の高い移動ツール
- 7 YAMAHA NIKEN/GT[絶大なる安心感]フロント2輪が常にグリップ
- 8 SUZUKI GSX-S1000F[SSを喰うアスリート]運動性能はカテゴリー随一
- 9 HONDA VFR800F[老舗V4の魅惑]独自のパワー感とサウンド
- 10 YAMAHA FJR1300A/AS[マッタリなのに速い]大排気量直4らしさ濃厚
- 11 DUCATI Supesport/S[味わい深いスルメ系]ロングランでも飽きない
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快適さだけじゃなく操る楽しさも濃厚
余裕のある排気量と快適なエアロフォルムを持ち、ハイスピードなツーリングを最も得意とするクラス。リラックスした豪華クルーザー系と異なり、高いスポーツ性能を有するのがポイントだ。スーパースポーツより重量こそあるが、その気になればワインディングで高い運動性能を発揮できる。
国産勢で特に有名なのがハヤブサとZX-14Rの2車だが、近年、大きな変更はなく、ハヤブサには生産終了、ZX-14Rも今年の入荷分が最終モデルになると発表された。替わって注目を集めるのが、2018年にデビューしたH2SXとナイケンだ。前者は、スーパーチャージャーによってZX-14Rよりダウンサイジングを果たしながら、同じ200psを達成し、軽快感抜群。
ナイケンは、フロント2輪による異次元の安定感が魅力だ。2019年は、2車ともに一段とツーリング適性を高めた仕様が追加。特にH2SXに投入されセミアクティブサスの「+」は、減衰力を自動調整するため、極上の乗り心地を実現している。
KAWASAKI Ninja H2 SX/SE/SE+[軽快×剛力=新感覚]スーチャーでSSとツアラーをイイトコドリ
走り出してすぐに、H2やZX-14Rとは異質のマシンだと気付く。両者は前傾がハードなのに対し、H2SXはハンドルが高く近い位置にあり、ラクちん。バランス型スーパーチャジャー(SC)を搭載したSXの直4は、H2より一段とスムーズな特性で、実用域でも扱いやすい。パワーモードがフルだと、6000rpm以降でSCが本領を発揮。8000rpmからパワーが炸裂する。14Rようにトルクで押し出すのではなく、回転の伸び上がりでワープする感覚。H2ほど暴力性はないものの、この領域は十二分に刺激的だ。
重厚な14Rに比べ、常にハンドリングに軽快感を伴うのも特長。倒し込みが軽い上に、舵角主体で曲がるため、深く寝かさずともスッと向きが変わる。サスにはしっかりとストローク感があり、フロント荷重をかけて旋回力を引き出すスポーティな走りも可能だ。ブレーキも初期からタッチが柔らかく、安心して使える。エンジンのレスポンスやSCの効力が適切なため、H2が苦手とする低中速コーナーも得意だ。
高速巡航時の快適性も見事。乗り心地や安定感では14Rに軍配が上がるが、H2SXの滑らかなパワー感とギャップの穏やかな収束性は十分に上質。さらに、オートクルーズを標準で備えるほか、大型スクリーンを採用する上級のSE仕様は、100km/h巡航時の防風性が素晴らしい。H2SXは、過激なH2と快適な14Rの美点を集約した次世代のツアラーである。
電サスでより高みへ
減衰力を自動可変するセミアクティブサスを搭載する+。STDはサス設定が硬めだが、+は全般的にソフトで乗り心地が秀逸。一方、減速時など踏ん張りが欲しい場面では瞬時にダンパーを硬めてくれる。出力モード変更でサス設定が連動するのも便利。ツアラーとしての完成度は一つ上だ。
KAWASAKI Ninja ZX-14R/High Grade[新幹線グリーン車感覚]伝説を継ぐ音速の貴公子
自然吸気1441ccの心臓部は、極低速からトルク感に溢れ、マイルドかつジェントルなフィーリング。1万1000rpmまでキレイに伸び上がり、イージーで扱いやすい。だが、速さは途轍もなく、本誌実測で0→100km/hが3.61秒、0→400m加速は10.6秒とH2さえ上回る。それでいて重厚感を湛えた車体は、速度を出すほどにビタッと安定。段差の衝撃吸収性も優秀で、その上質さは「新幹線のグリーン車のよう」(丸山浩)と称賛されるほどだ。
SUZUKI HAYABUSA[豪快マッスルカー]ドッシリとキレを兼備
14Rが新幹線ならば、ハヤブサはゴリゴリと剛胆な加速フィールを持つマッスルカー――超高速ツアラーとして長年ライバルだった2台の乗り味はかなり対照的だ。さらに軽快なハンドリングも持ち味。ワインディングでは巨体に似合わぬSS的なキレを示し、強力な効きとコントロール性を両立したブレンボ製モノブロックキャリパーも走りに貢献する。197psの大パワーながら、ライバルと異なりトラコンを非装備。このスパルタンさも今や魅力である。
KAWASAKI Ninja 1000[カットビランナー]実用性の高い移動ツール
SSの俊敏な走りと安楽なライポジを融合した元祖「ラクッ速」の本作。2017年登場の3代目で6軸センサーによる精緻な制御と新デザインの外装を獲得した。直4はスムーズに回転が上昇し、右手を大きく捻ると豪快な加速が持続。ややトルク感は薄く、回転馬力で走らせるフィーリングが特徴だ。高速クルーズはラクの一言。直進安定性に優れ、乗り心地も快適だ。大型カウルと3段階調整式のスクリーンを備え、上体はもちろん、下半身の防風性にも優れる。
峠道では、素直なパワーとよく動く前後サスのおかげで姿勢変化をつくりやすい。高速コーナーや切り返しなどで、235kgの車重が顔を出す場面もあるが、様々なステージで見た目より軽快に曲がれる。自然な効きのトラコンもいい。
YAMAHA NIKEN/GT[絶大なる安心感]フロント2輪が常にグリップ
前2輪+後1輪ながら違和感が全くない。しかもフロントの安心感と安定感は普通のバイク以上。圧倒的な接地感があり、旋回力も高いので、コーナー入口でシュッとインに付き、高い速度を維持したまま脱出できる。たとえリヤが流れても前輪がグリップしているのでリカバリーしやすい。70㎏も重いMT-09とサーキットタイムもほぼ互角で、自分の腕が上がったと思えるほどだ。
乗り心地も快適かつ上質。段差通過時の衝撃が少なく、峠道でギャップを発見してもラインを変える必要がない。ロングランが実にラクだ。STDのネックだった防風性能は、ハイスクリーンのGTで見事に解消。専用肉厚シートで乗り心地も一段と向上した。安全にバイクの魅力を味わいたい人に最適だ。
SUZUKI GSX-S1000F[SSを喰うアスリート]運動性能はカテゴリー随一
ロングストローク傾向の2005年型GSX-R1000をベースとするエンジンは、実用域である5000rpm以下のトルクが分厚い。以降の伸び感も強烈で、1万2000rpmまで爽快に回り切る。専用アルミフレームを用いた車体は、ライバルのニンジャより21kgも軽く、このカテゴリーとは思えないほどハンドリングがヒラヒラと軽快。サスの設定も余計な遊びがなく、トラクションをダイレクトに路面へ伝えてくれる。アップハンのため、突発的にラインを変えるのも自由自在で、峠ならSSを喰らうほどの実力だ。着座位置がやや後ろのため、上体はニンジャより前傾。また、防風性や安定感などロングランでの快適性はニンジャに軍配が上がるが、俊敏なツアラーを求める人に本作を推したい。
HONDA VFR800F[老舗V4の魅惑]独自のパワー感とサウンド
基本設計を’90年代後半にまで遡る伝統の90度V4は、幅広い領域で右手の動きに忠実かつ滑らかに加速する。特有の不等間隔爆発サウンドと脈動感が心地よく、他に代え難い本作の大きな魅力となっている。約6500rpmを境にハイパーVTECが作動し、バルブ数が2→4にチェンジ。最新モデルのモード変更ほど劇的な変化ではないものの、加速感が増し、レッドゾーン1万1750rpmまで吹け上がる。
243kgの車重は、近頃のマシンに比べればかなり重く、リッタークラスのように安定感たっぷり。それでも寝かせてしまえばオンザレール感覚で向きを変え、旋回中のギャップも穏やかに吸収する。懐かしさを感じる走りと、スポーツツアラーとしての高い実力を満喫できる1台だ。
YAMAHA FJR1300A/AS[マッタリなのに速い]大排気量直4らしさ濃厚
1297cc直4は、重厚なトルク感を持ちながら高性能。わずかなタメ感がありつつ素直なレスポンスを見せ、マッタリなのに速い。これは、空冷のFJ1200を思わせる由緒正しい大排気量直4らしい特性で、まさにツアラー向きだ。車体は軽快ツアラーより安定感に優れ、重厚長大系よりスポーティな万能型。幅広&肉厚のシートやオートクルーズも疲れにくさに貢献する。ASはクラッチ操作不要のため特にラクチンで、コーナリングライトの完成度も高い。
DUCATI Supesport/S[味わい深いスルメ系]ロングランでも飽きない
パニガーレと似た外観ながら、走りは全く異なる。ハイパーモタード系の水冷Lツインは、発進から力強いものの唐突感が少なく、最大トルクを発生する6500rpmまでフラットにパワーが立ち上がる。実に扱いやすく、適度な鼓動と歯切れのいいサウンドも心地いい。長旅でも飽きのこない特性だ。そして軽い車体とやや硬めのサス、限界の高いブレーキによってサーキットもこなすほど運動性能が抜群。旅に、快適さよりテイストを求める人に勧めたい。
【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。
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