欧州で5月から発売されている新型カタナ。日本での登場も間もなくと噂されるが、まずは欧州ジャーナリストたちがカタナをどう感じたのか、そのレポートをお届けしたい。記事を提供してくれたのは、イギリスのWEBメディア・MoreBikes、そしてドイツのモーターサイクル誌・PSだ。2日間にわたって京都で行われたワールドワイド試乗会の初日、京都府亀岡市の将大鍛刀場で日本刀がどのようにして作られるかを見学。その後、希望者は試し斬りを体験したという。
TEXT:MoreBikes(UK)/PS(DEU)
英国MoreBikes:ビッグキャットはまたうろつき始める
いにしえのカタナが日の目を見てから約40年、スズキは古典的なラインと現代的な技術を組み合わせた全く新しいカタナを発表した――。
日本で時間を過ごすうちに、この国では料理からガーデニング、そしてエンジニアリングに至るまで、全てに細心の注意が払われていることがわかった。中途半端は存在せず、価値あるものなら時間をかけてでもやり遂げるのだ。
そうした日本人であるスズキのエンジニアにとって、新型カタナのプロジェクトが持ち上がったときの衝撃は想像に難くない。通常なら新しいバイクの開発サイクルは3年が合理的と考えられる中、彼らはたった1年少々でデザインコンセプトから量産に移行することが期待されたのだ。
そのプロジェクトとは、スズキの象徴的なバイクのひとつである『カタナ』のリメイクだった。エンジニアの悲鳴は、1マイル離れても聞こえただろう。
さらに難しいのは、プロジェクト全体がイタリアのデザイナー、ロドルフォ、フラスコーニの手がけたコンセプトバイクに基づいており、生産工場との協議は一切行われていないということだった。ただし、希望の兆しはあった。スズキは、すでに存在するストリートバイクによるテスト済みのコンポーネント利用することができたのだ。ある意味でこのプロジェクトは、伝説のデザイナー、ハンス・ムートが’80年代にカタナの青写真を描いた時と同じように始まったと言える。
そんなデジャヴとともに、スズキのエンジニアは抵抗が無駄なものだと悟り、涙を拭いて自らの袖を巻き上げ、GSX-S1000を新しい形にしていくことを想像し始めたのだった。
14か月後、彼らが工場の奥から引っ張り出してきたのは、GSX-S1000を新しいカタナに変えて、量産の準備ができたという証拠だった。
オリジナルのカタナと現代的なタッチを持つ最終的な製品は、デザインコンセプトに非常に近いものだった。
意見の分かれるルックスが新型カタナを特徴づける
カタナはいつも、少しニッチなバイクだ。全てのユーザーの好みに合致することはない。だから、全く新しいバイクを開発して多大なコストをかけるよりも、スズキがGSX-S1000を利用し、それを新しいバイクに仕立てるのは理にかなっている。ただ、そのことで新型カタナは少しルックス先行のイメージを持たれてしまったことも事実だろう。
バイクのフロントまわりは、昔ながらのカタナに忠実だ。刀剣風のライン、ショートスクリーン、そして長方形のヘッドライトだ。目立つのはセパレートされていないハンドルバーで、これはオールドカタナのクリップオンよりも高い位置にある。このアプローチは、乗り手の快適さとより良いステアリング操作のために選ばれたものだ。
バイクの後半部分は、もっと現代的なルックスだ。シングルショック、4in1のエキゾースト、洗練されたダブル調のシート、そしてスイングアームに取り付けられたナンバープレートホルダーのおかげで、清潔で軽量、そしてモダンな外観となっている。
さあ、新型カタナとともに走り出そう!
スズキは日本の京都近郊で試乗会を開催した。我々のために曲がりくねった山岳路を借り切り、まさしくユーザーが使うであろう状況を用意したのだ。
カタナのような伝説のバイクを意識するのは特別だ。技術的には現代の製品だが、そのルーツを忘れてこのバイクを見るのは的外れと言うものだ。
最初に発見したのは、スロットルの感触が異なっていることだった。最初のGSX-S1000はアグレッシブなパワー特性だったが、カタナは唐突な感じもなくかといってスロットルを大きく開ければ急速に出力は高まっていく。
クラッチやリヤブレーキも扱いやすく、低速でのライディングは容易。メーターは読み取りやすい。
そして予想通り、K5エンジンは素晴らしい。スムーズで確実で、曖昧さもない。テスト車両のギヤボックスは多少固かったが、これは新車ということが理由だろう。クイックシフターはなくともギヤチェンジは正確に行えた。
道路がクローズドということもあり、少しプッシュした走りも試したが、カタナはスピードの要求に迅速に対応。自信を持ってコーナーを走ることができた。ただし、サスペンションは少しハードすぎるかもしれない。制動力は十分にあり、ABSもよくできている。
新しいカタナは優れたストリートファイターだ。ベースモデルの選定も間違いのないもので、全てのライダーにとってファンライドを楽しめるバイクに仕上がっている。
独PS:攻め込めば応えてくれる勇敢なスプリンター
他のメーカーは’60年代や’70年代のレトロスタイルが主流だが、スズキは’80年代を引用してきた。
かつてのカタナは1100cc版で、ミレニアムの終わりまでスズキの象徴的なバイクとして君臨した。これを引用することは自然といえるだろう。
我々はインターモト2018ですでにこのバイクを見ていたが、ついに新しいカタナをライディングする機会に恵まれた。日本の京都で、国立公園の中に設定された上り下りのコースに持ち込まれたのは、スズキの伝説的なスーパーバイク、GSX-R1000(K5)のエンジンを搭載したカタナである。
ライディングの喜びのために、エンジンはパワー、吸気/排気サウンドのハーモニーを提供する。150馬力クラスの4気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッドは、ほかにホンダのCB1000Rぐらいしかない。
フルアジャスタブルの調整機構を備えたフロントフォークと、プリロード&リバウンドが調整可能なリヤショックを備えたサスペンションは、かなり締め上げられたダンピング特性だが、一方で快適性もそれほど無視されてはいない。特に今回設定されたテストコースでは、十分に許容できるセッティングだった。
タイヤはロードスポーツ2で、これはスポーティなスポーツスマートと、ツーリング志向のロードスマートIIIの中間に位置付けられるもの。十分なスポーツ性能とロングライフ、そして快適さのバランスを考えれば、これは新型カタナにとって良い選択だと言える。
また、小雨が降ったあとにテストすることもできたが、3段階+オフに調整できるトラクションコントロールの素晴らしさを発見することもできた。
タイヤの温度が上がるにつれて、コーナーへの深いブレーキングを試すようになるが、ここでセットアップ変更の必要性は感じなかった。カタナは目標とするラインにスムーズに収まっていく。そして攻め込んでいけば、カタナは勇敢なスプリンターであることも見せつけてくれるのだ。
スポーツライディングのファンであれば、確かにもっと活発に動けるライディングポジションを求めるだろう。そう、比較的高い位置にマウントされたハンドルバーのことだ。しかし実際には、カタナはアグレッシブな操縦にも非常に適している。それでいて、散歩のような使い方であっても、GSX-S1000よりもさらにリラックスしたライポジのおかげで喜んで出かけていける。
確かに、カタナの特別な外観を引用するために燃料タンク容量は12Lになっている。この新しいカタナを所有したいのならば大きな問題にはならないとはいえ、もっと大きな容量が確保されていれば、このバイクは完璧と言ってよかっただろう。
私たちは、このテストでカタナがすっかり気に入ってしまった。多くのユーザーがこの外観を喜ぶかどうかは、すぐにセールスの数字で表れるだろう。ドイツでは1万3690ユーロ+税で5月から買うことができる。多くの用意されたアクセサリーとともに。
ヨシムラをはじめカスタムパーツも準備
ミラノショーのヨシムラブースで展示された、カスタムされた新型カタナ。機械曲チタンサイクロンR-11とステップキットX-TREADの、いずれもプロトタイプを装着。ほかにも、ラジエターコアプロテクターなども変更点だ。また、欧州ではスズキの純正アクセサリーもスタンバイしている。
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